HIROSHI MURAYAMA
酒のつまみにするも良し、しらふで聴くのも良し
"BALLAD OF LYRICS"
村山 浩(p), 安ヵ川 大樹(b), PHILIPPE SOIRAT(ds)
2008年7月 スタジオ録音 (D-MUSICA : DNCD 02)

村山浩というピアニストは1970年生まれで、2005年からはパリに移住し欧州各地で演奏活動を行っているそうだ。このアルバムもベースの安ヵ川をフランスに招いてパリで録音されている。ドラムスのSOIRATはフランス人。
@、C、D、Hの4曲が村山のオリジナルで、Gが安ヵ川の書いた曲。

@"BALLAD OF LYRICS 《FOR LILIKA》" 
A"BEBOP" 
痛快!痛快!!また痛快!!!高速4ビートに乗ってズンズン突き進む。村山の運指に乱れはない。さらに続く、安ヵ川のウォーキングがいいね。何しろ、音が良い。強靭な指が容赦なく弦を弾いている音色だ。
B"COME RAIN OR COME SHINE" 
テーマの後に入る安ヵ川のベース・ソロが歌っている。このベーシストは良いね。昔、といっても2003年録音の松永貴志の"TAKASHI"(JAZZ批評 136.)でも聴いているのだけど、それほどの強い印象は残らなかった。ピチカートのアタックの強さが印象的で、こういうベースの音色が僕は好きだ。併せて、3者のアンサンブルの良さで、聞き古されたスタンダードが生き生きとしている。
C"COMING FROM THE SEINE" 村山のオリジナル。安ヵ川のベースに痺れる。
D"FREEMASON" 
何か懐かしいようなメロディ・ラインの村山のオリジナル。小気味が良くてどこかグルーヴィな匂いをさせる村山のピアノに乗って3者が躍動している。
E"THE LOOK OF LOVE" 
BURT BACHARACHのヒット曲を7/4という変拍子で演奏していると、ALAIN JEAN-MARIEがライナー・ノーツに書いている。素人の耳には何となく収まりが悪いなというくらいにしか分からない滑らかな演奏だ。
F"MY FUNNY VALENTINE" 
美しいピアノのイントロから一転、リズミカルなテーマ演奏にシフト。アドリブでは気持ちの良いミディアム・テンポの4ビートを刻んでいく。これこれ!この心地よさったらないね。安ヵ川の良く歌うベース・ソロもグッドだ。そういえば、NEW YORK TRIO "BLUES IN THE NIGHT"(JAZZ批評 30.)の中にある同名曲のミディアム・テンポの演奏も素晴らしいので併せて紹介しておきたい。
G"THE DEEP VALLEY" 安ヵ川のアルコで始まる安ヵ川のオリジナル。まさに深みのある演奏だ。
H"NEW CHANGE UP"
 村山の書いたモーダルな1曲。

総じて言えば、僕はA、B、Fのスタンダード・ナンバーと言われるトラックとDの演奏が好きだ。この4曲があれば、このアルバムの価値は十分。村山の小気味の良いピアノのタッチとこれぞアコースティック・ベースと言いたくなる安ヵ川のピチカート、堅実で配慮の利いたSOIRATのドラミング。どれをとっても素晴らしい。聴けば聴くほど味がある。

四国のジャズ友が大好きな日本酒を送ってくれた。土佐の米、水、酵母で作ったという「吟麓」という名前の地酒だけど、この酒がこのアルバムにぴったりと嵌っているのだ。芳醇だけど爽やかな口当たりで、純米吟醸の旨みがある。つまみはこのジャズだけで十分でほかには何もいらない。
酒のつまみにするも良し、しらふで聴くのも良しということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2010.04.21)

試聴サイト : http://www.myspace.com/hiroshimurayama



独断的JAZZ批評 622.