『我々は宇宙人』(We Are Aliens)['26]
監督・脚本 門脇康平

 人の生の危うさと残酷を容赦なく描いていればこそ、僅かに宿るノスタルジーの煌めきが喩えようもなく沁みてくる只ならぬ作品だと恐れ入った。「じゃぁね~」を互いに何度も繰り返す離れ難い想いの募る交わし合いのリフレインがこういう形で繰り返されるとは思いがけず、何とも堪らない気持ちになった。

 後藤翼(声:坂東龍汰)が、ベッド脇に落ちていたシールと古いランドセルの奥底に見つけた手裏剣をほぐして刺さった悔恨にしても、星暁太郎(声:岡山天音)からぶつけられた積年の恨みと怒りに対して行った抗弁にしても、暁太郎がぶちまける術を持たずに鬱積させていたものが「そんなことあったっけ」に緒が切れるようにして噴出してしまった怒りにしても、ビニール袋に入れて大事にしていた手紙の顛末を知った脱力から湧いた悔恨にしても、どれもがみな至極もっともなことで是非もない事であるのがよく判るだけに堪らない。

 危うさにおいては警察沙汰になりかねない非行に踏み入れていた翼のほうが暁太郎よりも遥かに上回っていたのに、不遇な目に遭ったのは目黒小夏(声:山﨑天)の事件以来、それまでの天衣無縫さから囚われ型の内向に転じざるを得なかった暁太郎の人生だったことが、何とも哀れだった。だが、観ていてより迫って来るのも彼の歩んだ人生のほうだ。僕自身がまさに翼のような幸運のもとに七十年近くを過ごしてきているからだろう。返す返すも強風に壊れた傘の件と暁太郎が欲しがったシールの件の取り違えが残酷だった。二人が接近する契機となった折り紙の手裏剣を暁太郎が今度はランドセルに忍ばせたりしなければ、小夏が怪我をすることもなかったのだろうから。

 幼い時分の二人の声を担っていた槙木悠人【翼】と中込佑玖【暁太郎】の語り口に実に味わいがあって驚いた。本当に細部の素晴らしい作品だと思った。帰宅後、思わず♪トロイメライ♪の意味を調べてみた。ドイツ語で「夢想」「夢」「夢見心地」という意味だそうだ。成程と思った。同窓会で級友から「ニコイチ」だったと言われていた二人の蜜月時代は確かにトロイメライの味わいだったように思う。だからこそ、最後の場面が成立するのだと思う。翼の目に映っていた世界と暁太郎に見えていた世界のズレと一致を映し出した構成の精緻でデリカシーに富んだ現出にほとほと感心させられた。
by ヤマ

'26.10. 6. TOHOシネマズ5



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