『ドラマなふたり』(The Drama)['26]
監督・脚本 クリストファー・ボルグリ

 窮鼠猫を噛む、の本来の意味とは異なるが、追い込まれたり思いも掛けない状況に見舞われると鼠以上に人間は、とんでもない行動に出たり、言い出したりすることを戯画的に且つシリアスに描き出して、なかなかのものだったように思う。ここまで破滅的な状況に到らせておいて話にどう始末をつけるのか、興味津々だったのだが、御見事!には至らずとも、まずまずの及第点だった。後味の悪くない面白さに好感を抱いた。

 美術館主任学芸員のチャーリー(ロバート・パティンソン)と彼が見初めたエマ(ゼンデイヤ)だけではなく、チャーリーの部下である学芸員ミーシャ(ヘイリー・ベントン・ゲイツ)も、エマからメイド・オブ・オナーを頼まれたレイチェル(アラナ・ハイム)も、みな吃驚するような言動をとっていたように思う。つまりは誰だってということなのだろう。

 チャーリーからのトンデモ話に乗って過去の浮気ネタを告げたミーシャには、自覚の有無によらずチャーリーへの欲求が秘められていたような気がした。浮気話は無自覚なる誘いとも映らなくはない。だからこそのその後の対応なのだろうが、錯乱したチャーリーから迫られて自ら下着をおろし尻を突き出しながら中断されても、チャーリーとは違って矢庭に冷静さを取り戻すあたりがけっこうな手練れで、オタク的幼稚さの窺えるチャーリーとは役者が違うわけだが、すんでのところで思い止まったチャーリーと十五歳のときのエマ(ジョーディン・キュレット)とに如何ほどの違いがあるかということに、きちんと二人が気づいたように思われるところがミソだった気がする。

 僕が生きてきた七十年近い時間のなかで、なにかにつけて今ほど容赦のない時代はなかったように感じているからか、“やり直し”がきちんとできる関係というか、人の心の根底部分に“ある種の大らかさのあることの大切さ”を思わせてくれるところがあって、後味が悪くなかったのだろう。少々苦し紛れを感じなくもなかったけれど、及第点とした所以だ。
by ヤマ

'26. 9.26. キネマM



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