『ブゴニア』(Bugonia)['25]
監督 ヨルゴス・ランティモス


ヤマのmixi日記 2026年04月05日18:54

 さすが女王陛下のお気に入り['18]、哀れなるものたち['23]のランティモス。実に毒々しい映画だった。もはや怪演女優の名を恣にするかのようなエマ・ストーンだが、ラ・ラ・ランド['16]、バトル・オブ・ザ・セクシーズ['17]の頃には、想像もつかなかった。

 小うるさい羽音から花を求める蜜蜂の姿で始まり、反戦歌として名高い花はどこへ行ったの後、鳥の囀りから雷鳴雨音で終える造りの凝った画面に感心したが、お話はさほど響いては来なかった。

 それにしても、人間離れしたミシェル・フラー(エマ・ストーン)のタフさに呆れていたら、ほんとに人間離れしていて笑ってしまった。しかし、これを観ていると、トランプやイーロン・マスクというのは、実はアンドロメダ星人なのではないかという気がしてこなくもない。そして、どう見ても狂っているとしか思えないテディ・ガッツ(ジェシー・プレモンス)のような人々が、今のアメリカには、うじゃうじゃいそうな気がして空恐ろしく思えた。

 ほんとにヘンな国になったものだ。さらにまた、それを“普通の国”として倣おうとする人々が我が国に少なからずいそうに感じられるところが、本作以上に妙に気持ちの悪い昨今だと改めて思った。



*【コメント談義】2026年4月6日 02:12~ 4月9日 22:24
ヤマ(管理人)
 ケイケイさん、こんにちは。

 >秘密の扉の中にあった「モノ」
 映画日記に書いてあったあれこそが、仰るところのほとんど語られない父ですが、この作品を紐解く最重要人物だと受け取ってたよ。テディのマザコンをも通り越した過剰さがもたらした父殺しの証だと。

 元作『地球を守れ!』の結末、気になるよね〜。本作とは違っているような気がするものの、どんな結末にしてたか想像もつかないけど。

 それにしても、花は本当にどこに行ってしまったんでしょうかね。養蜂家は狂うしかないような世の中になっている気がするなぁ、確かに。


(ケイケイさん)
 >テディのマザコンをも通り越した過剰さがもたらした父殺しの証だと。
 いや、衝撃です。ヤマさんはテディの父親は出奔したんじゃなくて、テディに殺されたと思われたんですね。それ当たってますよ。そう思うと、テディの静かな狂気も紐解けますよ。ヤマさん説を踏まえると、自説の宇宙人探しにやっきになって、手当たり次第に人殺しをする父親(←これも狂っている)を観て、テディの神経も蝕まれて行った、で良いですかね?

 『地球を守れ!』は、結構忠実にリメイクしているとの話ですから、やっぱ宇宙人かな? このお作品は、嘘から出た真的なお話しで、テディ親子の説を肯定しているわけじゃないと、私は思っています。

 >それにしても、花は本当にどこに行ってしまったんでしょうかね。
 目には見えなくても、心の中では決して枯れさせてはいけないんだと思います。


ヤマ(管理人)
 テディの母親の息子溺愛こそが、夫たるテディの父親も、テディをも狂わせたように思ったんよね。
 おそらくはテディの父親も養蜂家で、(母子相姦を含め)花【妻】はどこへ行った?と妻を失った彼が、おかしくなったとしか思えない妻に与えた、いかがわしい薬の副作用によって植物化したんじゃないかな。でもって、心身ともに深く愛する母親が植物化したことに逆上したテディが父親を殺害したんじゃないかねぇ。
 んで、この狂った状況を作り出したのは、本当は自分の両親ではなく、宇宙人なんだと転嫁することで辛うじて自身を保つと共に、独りでいることの耐え難さに従順なる従弟のドンを必要としてた気がするなぁ。

 本作で、いちばんシンボリックというか、意味深長なのは、エンディングに流れた歌の「flower」だと思ってる。すなわち愛であり、平和だよね。勘違いの愛、力による平和、といった誤りによって、本来の花を見失うことの哀しさと取り返しのつかなさを底に秘めて訴えていた本作の余りの真っ当さに、やや拍子抜けした感じ(たは)。視覚的インパクトは御見事だったけれども。 役者は皆、大奮闘だったよね〜。


(ケイケイさん)
 >テディの母親の息子溺愛こそが、夫たるテディの父親も、テディをも狂わせたように思ったんよね。
 あー、そういう風に見えたのね、ヤマさんには。 私は真逆ですよ。夫・父の抑圧と狂気に耐える妻子が、結束を強めて行ったと思いました。

 >花(妻)はどこへ行った?と(母子相姦を含め)妻を失った彼が、おかしくなったとしか思えない妻に与えたいかがわしい薬の副作用によって、植物化したんじゃないかな。
 えぇぇぇぇ!(笑)。おかしくなったとは、近親相姦の事ですね? どの辺の描写に、上記を感じられました? 私は描かれたように、テディの母の状態は、ミシェルの会社の薬を服用したからかも?と思いました。

 >この狂った状況を作り出したのは、本当は自分の両親ではなく、宇宙人なんだと転嫁することで辛うじて自身を保つと共に、独りでいることの耐え難さに従順なる従弟のドンを必要としてた気がするなぁ。
 ここも違う(笑)。 宇宙人説は、父の隠し部屋を丹念に見渡すと、やっぱりそう、となったと思いました。私は宇宙人探しの過程で、父は人殺しや標本のように、人体を解体していたんじゃないかと思っています。ミシェルが監禁されていた部屋でね。
 一人でいることに耐えられない説は賛成です。でもドンのことは、明確に見下していたし、従順というより、忠実な犬的に思っていたんじゃないかと。テディは一見賢そうな振る舞いをしているけど、何か根拠があってではないでしょう? それでドンを手元に置くことによって、自分は優秀なんだと思い込みたかったのかと感じました。

 >本作で、いちばんシンボリックというか、意味深長なのは「flower」だと思ってる。 すなわち愛であり、平和だよね。
 うんうん、同感です。

 >余りの真っ当さにやや拍子抜けした感じ(たは)。視覚的インパクトは御見事だったけれども。役者は皆、大奮闘だったよね〜。
 ランディモスなのにね(笑)。 役者陣の奮戦も同感です。
 外連味はたっぷりだけど、段々真っ当になってきていますよ。ハリウッドで好き勝手作れるには、この作家性なら未だ数年かかりますね。一度ギリシャで撮ってみても良いかもですね。


ヤマ(管理人)
 >おかしくなったとは、近親相姦の事ですね?
 はいな。

 >どの辺の描写に、上記を感じられました?
 植物化した母親に寄り添うテディの尋常ならざる風情に、こりゃマザコンを通り越しているという気がした。

 >テディの母の状態は、ミシェルの会社の薬を服用したから
 これは僕もそう思っているけど、彼女に薬を飲ませたのは、夫だったんじゃないかと思ってる。

 >ドンを手元に置く事によって、自分は優秀なんだと思い込みたかった
 そんな感じやったね。

 >外連味はたっぷりだけど、段々真っ当になってきています
 そやねー(笑)。そこがちょっと物足りんというか、役者の怪演に見合ってないというか(笑)。ギリシャで撮ると良いというのは僕も思うけど、プロデューサーがいるかなぁ。


(ケイケイさん)
 >植物化した母親に寄り添うテディの尋常ならざる風情に、こりゃマザコンを通り越しているという気がした。
 また、えぇぇぇぇぇ!(笑)。 フツーですよ、フツー! 片寄せ合って生きて来た母一人子一人なら、あんなもんじゃないですかね? 家族は母一人だけだし、恋人もいないじゃないですか。
 『母と暮せば』でね、ラスト、ニノが天国に召された母の吉永小百合の肩を抱いて歩いて行くシーンがあったでしょう?私はそこだけ咽び泣く思いで観たわけですよ。そしたら、亡くなったるき乃。さんが、マザコンで気持ち悪いと仰る。うちの息子三人とも、きっとあれはやるな(笑)。だって母親思いの息子なら、老いた母の肩くらい抱きますよ。その時も衝撃の感想でしたが、それと同等の衝撃ですよ。

 >これは僕もそう思っているけど、彼女に薬を飲ませたのは、夫だったんじゃないかと
 ヤマさん説から鑑みると、ありですね。でも父親・夫として、そんな事して、情けないったらありゃしない、とは思いますね。 ヤマさんの感想の源はよく解りましたが、母と息子が禁断の間柄になったのは、何が原因だと思われます?

 >そこがちょっと物足りんというか、役者の怪演に見合ってないというか(笑)。 ギリシャで撮ると良いというのは僕も思うけど、プロデューサーがいるかなぁ。
 モノ足らぬ世界観を、エマが補正してくれたわけですね(笑)。 最近のランティモスはお金がかかっているから、確かに潤沢に出せる人が、ギリシャにはいないかもですね。 だったら、自分でプロデュースすればいいのよね。


ヤマ(管理人)
 あらま、るき乃さん、お亡くなりになったのですか。 いま覗いてみたら、「前田有楽劇場閉館イベントについて」(2019年05月25日)が最後の日記になってた。

 >でも父親・夫として、そんな事して、情けないったらありゃしない
 はいな。ドンを手元に置いていたテディ同様に情けないですな。

 >母と息子が禁断の間柄になったのは、何が原因
 それはもう、夫への失望と憤りなんじゃないかな、普通に。
息子に逃げたというか。

 >自分でプロデュースすればいい
 製作もやりたがる監督や俳優はたくさんいるけど、数で言えば、やりたがらない人のほうが多そうな気がするなぁ。


(ケイケイさん)
 もうお亡くなりになってから、5年くらいですかね? 最後に映画のことでお話ししたのが、確か『ドント・ウォーリー』でした。ジョナ・ヒルがあんなに痩せて男前だったなんて!的なお話を、ワーワーキャーキャー楽しくてね。後から考えたら、その時はだいぶお悪かったと思います。今更BLコミックに足を踏み入れた、と書いておられたんですが、その頃は、DVDでも二時間映画を観るのが、もうお辛かったんだと思います。それでコミック。いやもう、サブカル女性の鑑ですよ。私も見習いたいと思いました。

 >はいな。ドンを手元に置いていたテディ同様に情けないですな。
 ねー。父ちゃん嫌いなのに、似てくるんですね。

 >それはもう、夫への失望と憤りなんじゃないかな、普通に。
 息子に逃げたというか。 逃げられない恐怖が、息子への歪んだ愛情になったというわけですね。 モラハラや洗脳されると、とんでもない思考になるんでしょうね。

 今回の往復は、全然想起しなかったことばかりで、新鮮でとても面白かったです。 またよろしくお願いしまーす。
編集採録 by ヤマ

'26. 4. 5. キネマM



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