動物には消化器系統のがんは非常に少なく、人間には消化器系統のがんが多いという事実があります。その理由を調べたところ、人間の腸には脂肪酸が非常に少なく、動物の腸には脂肪酸が非常に多いことがわかりました。 たとえば、ハトムギには抗がん作用があると言われていますが、ハトムギのどういう成分ががんを抑えるのか調べてみると、どうやら脂肪酸がその作用をもっているようです。実際にがん細胞を培養し、その周囲にハトムギの脂肪酸を注射してみたところ、がん細胞は抑えられていました。この結果からわかりますように、がんの発生は脂肪酸によって抑えられる可能性があることがおぼろげながらわかってきたのです。 実際にハトムギを調べてみると、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が含まれており、これらに抗がん作用があることが認められています。よくリノール酸油が体に良いと言われていますが、むしろシソ油に含まれるα-リノレン酸のほうが抗がん作用があると思われます。 また、チョウセンニンジンのエキスを使った実験では、メラノーマというがんをチョウセンニンジンエキスを使って抑えたという報告があります。この場合考えられるのは、がんが「脱がん化」したらしいということです。 がんというのは言わば悪性の細胞で、「脱がん化」というのは悪性の細胞を正常な細胞に戻すことです。つまり、チョウセンニンジンのエキスはがんを正常細胞に戻す効果があるのではないかと憶測することができます。 植物には植物多糖類、植物性配糖体が含まれています。一般に、植物性配糖体は同一分子内に阻水性といって水を嫌う成分と親水性という水を好む成分があり、細胞膜系に対する親和性が高く、容易に細胞膜に結合するものと考えられます。ちょうど中性洗剤みたいなものと考えればよいでしょう。それがどうも細胞の膜に影響してがんを正常に戻し、このことによってがん細胞の増殖を抑制し「脱がん化」を図るのではないかと推測されます。 脂肪酸には赤血球を溶かす性質があります。赤血球を溶かすということは、細胞膜の表面に作用することに他なりません。つまり細胞膜の表面に作用するような物質は、やはりがん細胞を抑える可能性があるのではないかと考えられます。 そこで改めて、さまざまな植物に含まれている脂肪酸を抽出し、その中に赤血球を入れて溶けるか溶けないかを調べてみると、血液を溶かすことのできる脂肪酸が含まれていることが判明しました。 日本ニュートリション協会 ハーブ編より |
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