生活習慣病や老化の原因とされるのが「活性酸素」です。 人間が生きる上で、酸素は必要不可欠な存在ですが、体内ではこの酸素を利用して無数と言っていいほど多彩な化学合成が行われ、人体に必要な物質が生み出されています。ところが、そうした化学反応の過程で、電子を1個(通常は2個)しかもたない活性酸素が生じてしまうのです。 電子を1個しかもたない活性酸素は化学的にきわめて不安定で、他の安定した物質から強引に電子を奪う性質があります。このように酸素が他の物質から電子を奪うことを「酸化」と言い、活性酸素が細胞の脂質から電子を奪うと、奪われた脂質は過酸化脂質となって細胞を老化させるばかりか、動脈硬化や心筋梗塞の引き金になるなど、体にさまざまな悪影響を及ぼします。また、活性酸素によって細胞内の遺伝子が気づ付けられることもあり、その結果、発がん遺伝子が活発化してがんを発症させる引き金にもなるのです。 細胞には核があり、その中に遺伝子情報があります。これを破壊するのが活性酸素です。がんは遺伝子の異常によって引き起こされる病気で、活性酸素は遺伝子を傷つけて発がんを促してしまうのです。 人間の1個の細胞の中には、およそ8万個の遺伝子が存在すると言われています。その中には、がんを発生を引き起こす遺伝子(がん遺伝子)がある一方で、がんの発生を抑制する遺伝子(がん抑制遺伝子)も存在しています。 ただし、がん遺伝子は最初からがんの発生を引き起こすようにプログラムされているわけではなく、正常な遺伝子に何らかの異常が生じて遺伝情報が書き換えられることにより、細胞をがん化させる働きをもつようになるのです。そして、活性酸素の遺伝子を切断したりして遺伝情報を書き換えてしまい、がんを引き起こすのです。 たとえば「髪を黒くする遺伝子」が壊されると白髪になるし、「細胞が隣にあるときには増えてはいけません」という遺伝子が壊されるとイボになります。こうした遺伝子が壊されないようにするためには、もともと人が持ち合わせている防御機能を高める必要があります。つまりビタミン・ミネラルを中心とした栄養素が私たちの細胞を守ってくれるのです。 白髪やイボは子供のころからあったわけではありません。長年の食生活のなかで、ビタミン・ミネラルが十分に摂取できなかったときに、白髪やイボができたのです。また遺伝子の中には、がん発生に関係がある遺伝子が200ほどあり、これらが壊されるとがんの卵になります。こうして芽生えたがん細胞を大きくするかしないかは食生活にかかっているのです。 がんの卵を起こしにやってくるのが塩や脂肪です。塩や脂肪はがん細胞に「起きろ、起きろ」と働きかけると急に目覚めて増殖を始めます。 私たちの遺伝子に異常が起きないようにするためには、一つは活性酸素を減らすことが重要になります。もう一つは活性酸素を防御するビタミン・ミネラル類をしっかり摂取することです。私たちの体が老化しない、つまり遺伝子の異常が起こさないためにもビタミン・ミネラルは必須の物質です。 脳卒中や心筋梗塞も活性酸素によって引き起こされます。活性酸素は、細胞の脂質と強引に結合して過酸化脂質をつくり出し、細胞の老化を引き起こし、過酸化脂質ができれば動脈が硬く肥厚する動脈硬化が起こり、心筋梗塞や脳卒中の原因となります。 現代社会には活性酸素の発生量が増える要因がたくさんあります。オゾン層破壊による紫外線の増大、水の汚染、大気汚染、農薬まみれの野菜、電磁波・・・。私たちの細胞を阻害する原因が身の回りにたくさん存在しています。すると否が応でも体の中の活性酸素の発生量が増えてきます。となれば、活性酸素を制御するだけのビタミン・ミネラル類を野菜、果物などの食品から摂取すればいいのですが、たとえばニンジンやトマトなど野菜類に含まれているビタミン・ミネラルの量は、この30〜40年の間に、ひどい場合は10分の1、良好な場合でも半分に減り、細胞を守ってくれるビタミン・ミネラルはもっと減っています。こうした栄養分の不足を補うために野菜、果物を多量に摂り、繊維を摂り、脂肪分を控える努力をしても、少々のことでは不足分を補うことはできません。 やはり、ビタミン・ミネラル、植物栄養素の足りない部分はサプリメントなどで補うことが、今後の私たちの健康を保持するためには大切なのです。 日本ニュートリション協会 ハーブ編より |
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