皇海山(すかいさん)                             [関東] 2144m 

                     武尊山から

 深田百名山の中で皇海山は地味な存在だと思う。愛知県では多少山に関心がある人でも、この山の名前はほとんど知らない。なにせ、読み方が難しい。山ヤでなければまず読めない。(昨日の武尊山もそうだが)
  と、言う自分もこの山自体を見たことがなく、いずれ百名山完登を、とは思っていても、一向に食指が動かなかった。以前は庚申山からはるばる縦走してこなければならなかったのもネックの一つだったが、不動沢沿いに道が開かれて、格段に簡単に登れるようになったので、機会さえあればとは思っていた。

 昨年、男体山から初めてその山容を確認した。像の背のようでボリュームがあり、なかなかカッコいい。ちょっとその気になってきた。 ということで、今回は武尊山とセットで登ることにした。
 昨日は前武尊からその姿を眺めたが、スカイラインから突き出て周りの山よりもひときわ高い。男体山から見た時よりも、鋭くりりしい。北関東まで来れば目立つ山のようだ。

前武尊からの皇海山(2016.5.18)

 

 しかしながら、登山口までの林道はひどかった。
 始めは吹割の滝あたりの駐車場で車中泊をし、翌朝登山口まで移動する予定だった。だが、追貝に着いたのがまだ午後6時前で、日没まで1時間近くあったため、日の入には間に合わないが薄明かりの内に登山口に着けるだろう 、と走り始めた。
 栗原川林道に入っても最初は舗装されていて順調だったが、すぐにダートに変わり、それが想像以上に悪い。凹凸はさほどでもないが、路面の石がどれも角張っていて、パンクが怖い。
 4月にスタッドレスからノーマルに履き替えた時、タイヤ屋が「溝が浅くなっているから、そろそろ替えた方がいいよ。」と言われた言葉が思い出され、慎重の上にも慎重になる。砂利が厚く、傾斜もきつ いところでは時速10q以下で走らざるを得ず、登山口の駐車場に着いたのは7時半過ぎ。19qの林道を走るのに1時間半かかってしまった。
 山中にしては開けた駐車場で、他に車はなし。武尊登山の疲れもあって、即、眠りにつく。

栗原川林道の素掘りのトンネル
  (帰路に撮影)

皇海橋を渡った左が登山口

 

登山口

 翌朝は5時10分出発。午後からは雲が多くなってくるとの予報だが、まだ天気はいい。
 駐車場を出てすぐ不動沢を皇海橋で渡り、左手の砂防の作業道に入る。入口には登山口の標柱が立っている。S字を描いて少し高度を上げ、道標に導かれて山道に入る。少し行くとすぐに不動沢を石飛で渡り、右岸の樹林地を登っていく。
 谷は広く開けているうえに周りはカラマツの植林地。芽吹いたばかりのカラマツ林は明るく爽やかだ。同じ植林地でも杉、檜林より格段に気持ちがいい。小沢を何度か渡りながら進む。

カラマツ林

 

 谷川が二俣に分かれ、右側の流れに沿って登るようになる。谷の対岸にはシャクナゲの花が咲いている。
 一か所岩が流れに迫り出しているところがあるが、増水さえしてなければ通過は難しくない。
 ミソサザイの賑やかなさえずりが、狭くなった谷に響き渡る。

不動沢の流れ

 

 だんだん目の前に稜線が迫ってきて、傾斜が急になってくる。谷は西向きなので、まだ朝陽は射してこない。
 再びの二俣でまた右手の沢に入る。流れがなくなり、ごろごろの狭い沢を歩くことになる。登山道はまるっきり沢の中なのだが、雨の時はどうなるのだろう。
 次の二俣では赤テープに導かれて左手の沢に入る。一段と沢が狭くなる。

 少し登ったところに道標があり、やっと沢を外れて山道になる。しかし、この道は急斜面に直線的につけられていて、雨に浸食され歩きにくい。根っこやロープにつかまり、えぐれた段差をよじ登る。
 登山口からしばらくは武尊山よりもよく整備された登山道だと思っていたが、沢道以降は歩きにくい道が続いた。

枯れ沢の道を登る

 

 登り切った稜線が不動沢のコル。やっと朝陽を浴びることができる。北側の皇海山の山頂は見えないが、南側の鋸岳が名前どおりの姿を見せている。
 ここからは稜線上の道で、庚申山からのかつての信仰のメインルートを辿ることになる。

不動沢のコルからの鋸岳

 

 道の周りの雰囲気はこれまでの谷の道から様変わりし、コメツガやシラビソの針葉樹林になる。陽は射しているものの、森の雰囲気はずっと暗くなり、林床には苔も目立つようになる。
 森が少し切れたところからわずかに眺望が開けるが、昨日のような遠望は利かず、沼田の街すらモヤにかすんでしまっている。モヤの上に赤城山が浮かんで見えるだけだ。

 登るにつれて道は険しくなり、ロープにつかまり、大岩の間をよじ登るようなところもある。

 傾斜が緩くなると山頂が近くなり、山頂手前に2mほどの高さの青銅製の鉾が立っている。これも信仰者の奉納のようだ。

コメツガの稜線

 

赤城山

 

山頂近くの青銅の鉾

 

 山頂は樹木に囲まれて眺望は望めなかった。わずかに木立の間から日光白根や燧ヶ岳が見える程度だ。昨年、男体山から皇海山が見えたので、逆に男体山が見えるはずなのだが、樹の陰にわずかに「あれかなあ。」と思えるシルエットが見えるだけだ。
 さすがに奥深い山なので、ときどきヒガラやメボソムシクイが鳴き交わしながら過ぎていくだけで、下界の音はなにも聞こえない。

 見上げると梢に囲まれて、ただただ青い空。皇海山の上空はブルースカイである。

皇海山山頂

 

山頂の上は青い空

 

日光白根山

 

 登る前は、不動沢のコルから鋸岳をピストンしようと考えていたが、モヤってしまってあまり遠くは見えそうにないので、鋸岳はパスしてのんびり下ることにした。
 今日は登山者がいないかと思っていたが、下山途中で7〜8組の登山者に出会った。やはり百名山である。朝 、宿や自宅を出発するとこのくらいの時間になるのだろう。ほとんどは単独の男性であったが、高齢の女性を案内するガイドさんのパーティーともすれ違った。
 
 登りは日陰であったが、下る頃には陽が十分高くなり、光を浴びて新緑が眩しい。カエデ、サワグルミ、ツツジ、カラマツ、様々な緑が溢れる。紅葉の頃もさぞかし華やかだろう。久々にすがすがしい森歩きができた。

 

新緑の谷

 

サワグルミ

 

 山頂よりも途中の谷の美しさが印象に残る山であり、それよりもなお、行き帰りの林道のしんどさが印象に残る山だった。

 

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[山行日] 2016/5/19(金)
[天気] 晴れ     2016年5月の天気図(気象庁)
[アプローチ] 18日 武尊山川場谷野営場駐車場 (県道64号、R120号 )→ 沼田市利根町追貝 →(栗原川林道 )→ 皇海橋駐車場     [約37km]
      
・栗原川林道は入口から皇海橋まで約19km、最初の2kmは舗装、次の6kmは半分舗装、最後の11kmは完全ダート。

・20台ほど駐車可能。
・トイレ有り。水場なし。
皇海橋駐車場
[帰り道] 19 皇海橋駐車場 (栗原川林道)→ 沼田市利根町追貝 (R120号 )→ 沼田 (関越道、圏央道、東名、新東名)→ 岡崎東IC [約442km]
[コースタイム]
        4:10起床
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
0:55 5:10 皇海橋P発(1350m)   8℃
5:40 二俣    
6:05 中間点(1600m) 0:05  
0:40 6:10  
6:40 沢から離れる    
6:50 不動沢のコル(1860m) 0:10  
0:55 7:00  
7:55 皇海山山頂(2144m) 0:40  
0:35 8:35  
9:10 不動沢のコル 0:10  
0:50 9:20  
9:50 中間点    
10:10 二俣    
0:20 10:30  
10:50 皇海橋P着   全行動時間
4:15     1:05 5:20
登り 2:30        
下り 1:45        
 

 

[温泉] 道の駅・白沢 「望郷の湯」

・群馬県沼田市白沢町平出1297番地 
・日帰り温泉施設。
・入浴料 2時間まで560円。 第二火曜日定休。8月無休。
・コインロッカー有料。100円/1回。
・露天風呂から赤城山が見える。露天にも洗い場あり。
・石鹸、シャンプー、ドライヤーあり。