武尊山( ほたかやま) [関東] 2158m |
学生時代に奥会津の窓明山から会津駒、尾瀬を抜けて、日光白根まで縦走したことがある。最後に登った日光白根から眺めた武尊山は標高が低く、見下ろす感じで、登高意欲をそそられなかった。
だが、昨年、男体山を登った後、沼田付近から北方に、残雪をまとった風格のある山容の山を見つけた。しばらく考え、武尊であることに気が付いた。 |
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道の駅「白沢」付近から見上げた武尊山 (2015.5.21撮影) |
ところが今年は、どこの山も雪が少なく、関越道の赤城高原SAから眺めた武尊山も、「これが同じ山か?」と疑われるほど残雪がない。ほとんど夏山の雰囲気である。 |
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川場谷野営場駐車場(下山後に撮影)
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翌朝目覚めたら、いつの間にか近くに車が止まっていた。カップ麺で朝食を済ましていたら、もう一台車が駐車場に入ってきて、乗ってきた人はすぐに登山道を 入っていった。どうやらこちらの方は山菜取りらしい。隣の人は登山者らしいが、それよりも先に出発する。
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登山口から作業道のような広い道を進んでいくと、前方で爆竹の破裂音がした。山菜採りの人が「驚かせて済みません。熊が出るんでるよ。」と笑って答える。熊が出そうな雰囲気は充分ある。山菜採りの人は不動岳分岐の手前で、右手の斜面に取り付き、ものすごい速さで登っていった。 さすが地元の人はすごい。 分岐から尾根までは一部ロープも懸っているような急登の山道が続く。がさがさと笹原が動くのでびくっとしたが、猿の群れが食事をしているようだ。子猿も混じっていて、枝から枝へ軽やかに跳び移っていく。道の石の上には鮮やかな緑色の糞が付いているので、木の新芽を食べているらしい。 |
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この猿は見張り役のようだった
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尾根に上がるとコメツガやシラビソの緩やかな道になり、シャクナゲもぽつぽつと現れる。ダケカンバの明るい林に変わると、右からOGNAほたかスキー場からの道が合流する。尾根のすぐ下までゲレンデが迫っていて、振り返ると遠く日光白根が稜線から抜き出て見える。
前武尊に近づき、急になった登山道を喘ぎながら登る。再び振り返ると赤城山の右手の空中に富士山が浮かんでいた。霞んでいるだけにその遠さが際立つ。反対の北東側には燧ヶ岳もふたつのピークを鋏のように持ち上げている。 |
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スキー場上から日光白根山を眺める |
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燧ヶ岳
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富士山 |
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前武尊山頂から皇海山(左)と赤城山(右)
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タカネザクラ (ミネザクラ) |
登り着いた前武尊山頂には日本武尊の像が立っている。武尊山の名はこの地を訪れたという、日本武尊の字が充てられたものだが、
普通は武尊をホタカとは読めない。そして、なぜホタカ
ヤマと呼ばれるのかは深田久弥も言及していない。もともと火山であったので火高(ほたか)あるいは火岳(ほたけ)であったのかもしれない。 前武尊の標高は2040m。最高峰の沖武尊(武尊山)の標高が2158mなので、標高差は100mちょっとしかない。ほとんど登ってしまったようなものだが、実はここからの稜線歩きが長い。アップダウンもあるので、コースタイム的にはまだ半分近く残っている。 |
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日本武尊の像
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眼前のノミの刃先のような剣ヶ峰は右側(東側)を巻く。巻き道は刈り残ったネマガリダケが滑りやすくて歩きにくい。本来なら今頃は残雪があって滑落に気を付けながら通るところのようなので、それよりはましかと思う。 剣ヶ峰を巻くと今度は巻き道が西側に変わる。ここには岩峰を乗り越える道もあるのだが、安全第一、素直に巻く。 |
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剣ヶ峰
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左から沖武尊、中ノ岳、家ノ串
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家ノ串から中ノ岳へは岩稜が続く
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家ノ串から中ノ岳に続く岩稜は危険はないがかなり狭い。特に左手(西側)が切れ落ちている。風が強いとちょっと嫌な感じだ。 家ノ串からまた下って中ノ岳を登り返すのだが、登山道は山頂まで行かず、中ノ岳の南をトラバースしていくのでありがたい。トラバース地点で右手に武尊牧場への道を分ける。 山頂への途中で唯一、残雪が道を覆っているところがあった。三ツ池という標識が立っているので、雪が溶けると池塘が現れるのかもしれない。雪渓の終わりは少々急で、ステップを蹴り込みながら登る。 |
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山道をふさぐ残雪
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武尊山(沖武尊)の山頂は予想外に賑わっていた。途中で単独行の若い女性に追い抜かれただけなので、せいぜい数人だろうと思っていたが、北側の武尊神社の方から登った人が多いのか、10数人もいる。武尊山の登山口は5〜6ヶ所あって、最近は川場谷から登るのがメインだと言われていたが、そうでもなさそうだ。 さて、展望はものすごい。昨年の赤城山からの展望も良かったが、こちらのほうが上越国境に近いだけあって、迫力が2ランクぐらいアップする。 |
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武尊山山頂
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谷川連峰(中央やや右が谷川岳)、背後に苗場山
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大きく朝日岳、右に大烏帽子山
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巻機山 |
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左から八海山、中ノ岳(重なって右背後に越後駒)、兎岳
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平ヶ岳、手前に笠ヶ岳、至仏山 |
山頂からは360度の展望で、まず目を引くのは北側に連なる上越国境の山々。さすがに残雪が多く、山体と雪とのコントラストが美しい。
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白馬三山
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景鶴山のかなたに飯豊連峰の白い峰
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山頂の南側はカールのようにえぐれて笹原が広がっているが、これは火口の跡らしい。登ってきた前武尊から続く稜線は火口の縁にあたる。山頂から西にも同様に険しい稜線が伸びていて、その先に剣ヶ峰山が鋭鋒を持ち上げている。
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中ノ岳、家ノ串、剣ヶ峰を振り返る
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剣ヶ峰山
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下山も同じ道を帰る。前武尊まではアップダウンでやはり時間がかかる。明日も登らなければならないので、余計な疲労はためないように、ムシカリやイワナシなどの花を見ながらゆっくり下る。今年は季節の進みが早く、もうアズマシャクナゲが咲いている。 さて、明日は皇海山だ。 |
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ムシカリ
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アズマシャクナゲ
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[山行日] | 2016/5/18(木) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[天気] | 快晴 2016年5月の天気図(気象庁) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[アプローチ] | 17日 沼田IC
→(R120、県道64号)→ 川場谷野営場駐車場 [約21km] ・30台くらいは駐車可。小屋があり、小屋の中にトイレがあるが、汲み取り式のものが1穴しかない。 水場なし。 |
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[コースタイム] |
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[ガイドブック] | 「日本百名山登山ガイド(上)」 山と渓谷社 |
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[温泉] |
花の駅・片品 「花咲(はなさく)の湯」 ・群馬県利根郡片品村花咲1113 ・日帰り温泉施設。 ・入浴料 5時間まで650円。 ・コインロッカー有料。100円/1回。 ・露天風呂が2槽ある。花咲の湯というだけあって、露天風呂の周りに花が植えられている。 ・石鹸、シャンプー、ドライヤー、化粧水あり。 |
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[風景印] | 川場温泉局 (群馬県利根郡川場村谷地2057-3) ・図案
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