両神山( りょうかみやま)                              [関東・秩父] 1723m


西沢渓谷から続く

 
車をフリードスパイクに買い換えてから初めての車中泊。以前のCR-Vより車内高が高く、 車長は短いが180pのエアマットも敷けて、居住性が高い。しかしながら、今日は今年の秋一番の寒波襲来で、めちゃくちゃ寒い。持ってきた衣類をありったけ着て、マットの上にシュラフを二重にして何とか就寝。それでも夜中に寒さで目が覚めた。
 ついでにトイレのために車外にでてみると満点の星空。空にはこんなに星があったのだ、と感心するくらいにたくさんの星。近眼でも降るような星空だ。正面にオリオン座が見えるのだが、オリオン大星雲もよくわかる。その右手には宝石箱のスバル。ちょっと感激した一夜。

 東の空に赤みが射し始めた5時起床。気温は0℃。車の中で湯を沸かし、カップヌードルを食べて出発。昨夜は一旦第一駐車場に車を止めたのだが、地面が傾いていて寝にくいので、平坦な第二駐車場で一夜を明かした。なので、第一駐車場まで車で戻ろうと思ったのだが、フロントガラスに霜がついてしまい、前が見えず移動を断念。まあ、少しくらいは余分に歩 こう。
 

 日向大谷(ひなたおおや)の民宿両神山荘の前を通り、登山道に入る。入口には石の鳥居。
 両神山は修験道の山で、山中には石仏や三十六童子の名前を刻んだ丁目石など、信仰の山が感じられるものがたくさん遺っている。

登山口の鳥居
 

 登山道は上り下りがあるもののあまり標高を上げることなく山腹を巻いていく。会所と名付けられたところで七滝沢を小橋で渡り、薄川に入る。渓谷は思った以上に深く、高度の低い秋の陽射しは全く届かず、まだ薄暗い。

 僕が歩き始めたころに車で到着した登山者に5、6組追い抜かれる。百名山なので平日でもそこそこ登山者は多い。

七滝沢にかかる木橋
 

 見上げるミズナラなどはもう葉を落としているのに、流れに近いサワグルミはまだ緑の葉を付けている。昨日の木枯らしでかなり落葉してしまったのだろうか。落葉と青葉の間の紅葉が見られない。

 登山道は何度か沢を渡り返した後、右手の斜面を登っていく。落ち葉を踏みしめながら行く道は、ジグザグに高度をあげる少々きつい道だ。

薄川
 

 八海山の大頭羅(おおづら)神王像を過ぎ、なおも落葉した樹林帯を登る。やっと朝日が射し込んできて、森が一気に明るくなる。単調な道のアクセントのようにマムシ草の真っ赤な実が足元を照らすように登山道の脇を飾っている。 そこだけに色彩がある。

 弘法清水の水場を過ぎても、まだまだ急傾斜の道が続く。だんだん変わらぬ景色に飽きてきた頃、清滝小屋に到着。

八海山の大頭羅神王像
 

 清滝小屋はかつては管理人がいたらしいが、今は無人の避難小屋になっている。ただ、有人小屋だっただけに、中はかなり広くて収容力は大きい。季節のいい頃ならシュラフを持ってここまで上がって一夜を過ごすのも良さそうだが、さすがに今の季節ではつらい。昨夜も 登山口の車中泊は僕一人だった。

 屋外トイレやベンチもあり先行者が休んでいる。

清滝小屋
 


 小屋の間を通り、なおも落葉樹の斜面を登る。小屋のすぐ裏手にオーバーハングの岩壁があり、水は落ちていないが、これが清滝なんだろう。
 右手に七滝谷の道を分け、少し登ると尾根の上に出た。木の枝の間からやっと山頂と思われる高みが見える。尾根道は産泰尾根と名付けられているが、意味は分からない。何か所か鎖場があるが、鎖に頼らなくても登れる程度だ。季節の良い 頃には登山口の駐車場が溢れるそうだから、きっとこの鎖場も混雑するのだろう。 
 

産泰尾根から望む両神山山頂 鎖のある岩場
 


   登りついたところが両神神社の奥宮。鳥居の前に狛犬ならぬ、こまおおかみが控えている。両神神社の眷属(従者)は狼(山犬?)なので、狛犬代わりの狼なのだが、この狼は少々デフォルメされて可愛げがある。鳥居をくぐり、社殿で御賽銭をあげ、登山の安全を祈る。
 山頂に進むため神社の左手に回るとなんともう一つ神社があった。えっ、これが奥宮なのだろうか。なんで二つも神社があるのだろう。
 

両神神社 両神御嶽神社本社
 


   家に帰ってからネットで調べてみたら、最初の神社が両神神社の奥宮で、後の神社は御嶽神社というらしい。秩父御岳神社ではなく、両神山麓の浦島地区にある両神御嶽神社の本社ということだった。
 どちらも山岳信仰の拠点であった神社で、明治以前の神仏混淆の時代には日向大谷の両神神社は当山派修験の観蔵院、両神御嶽神社は本山派修験の金剛院として覇を競っていたらしい。こちらの両神御嶽神社の前にもおおかみが鎮座している。こちらの方が少し強面である。

 一旦少し下って、ブナの尾根を登る。だんだん岩場が多くなってきて、道が険しくなる。 葉が落ちているので分かりにくいが、周りの灌木は有名なアカヤシオなのだろう。大きな岩の根元を桟道で左に回り込むと、そこが頂上だった。

 岩だらけの狭い山頂で、ちょうど下山しようとする登山者と入れ替わりに、三角点の横の最高地点の岩の上に上がる。東側は木立でやや遮られるが、西側は山並みが幾重にも重なり、その向こうに山頂に雪を頂いた八ヶ岳の赤岳、横岳が見える。二か月前にはあの山頂に立っていたのだ。
 

山並みの向うに八ヶ岳
 

御座山 赤岩尾根
 


 
山頂の北側はアップダウンの激しい稜線が続き、八丁峠の先の赤岩尾根に続いている。赤岩尾根の向うには浅間山が霞んでいる。主稜線の右側には西御荷鉾山、東御荷鉾山、武甲山などの上州、秩父の山が連なっている。武甲山のやや左手には関東平野を隔てて霞の上に筑波山が浮かんでいる。
 北八ツと南八ツの間の手前にコウモリが腕を広げたような、整った形の山がそびえている。どこの山だか分からなかったが、しばらく考えて御座山(おぐらやま)だと気が付いた。この山にも4年前に登っているのだけれど、曇りがちで展望が利かず、あまり印象に残っていない。でもこちらから見るとかっこ良くて見直してしまう。
 

 八ヶ岳の左手に伸びているのは奥秩父の主稜線。甲武信ヶ岳、木賊山、破風山などが逆光で黒い板の切り抜きのような感じで連なっている。その黒板塀の向うに富士山が覗いているはずなのだが、雲に隠れて見えない。

 展望を楽しみながらパンを食べていたら、次々に登山者がやってくる。あまり広い山頂ではないので、僕も場所を譲って下山することにする。

左から破風山、木賊山、甲武信ヶ岳、小川山
 

 下山も同じ道を戻る。七滝谷を下ろうとも思ったのだが、薄川コースよりも時間がかかるので、帰りの時間のことを考えて同じ道を戻ることにする。

 薄川の谷は落ち葉だらけだが、見上げるとわずかながら紅葉、黄葉が見られる。朝と比べて陽が射していて鮮やかだ。

一面の落ち葉の道
 
シデ類の黄葉
 
見上げる山腹の方がきれい
 

 日向大谷に戻り、帰る前に両神神社の里宮をお参りしたいと思ったのだが、場所がよくわからない。民宿両神山荘の奥にあるのだろうと思ったのだが、飼い犬二匹が庭にいて、少々入りずらい。
 あきらめて駐車場への近道を下りはじめたら、建物の看板に社務所の文字が見えた。建物の裏に廻ってみると二階建ての建物があり、その上が里宮だった。二階に拝殿があるとは珍しい。
 

日向大谷
 
両神神社里宮
 
狼が描かれた両神神社の護符
 

 拝殿は閉まっていたが、無事の下山を感謝してお参りした。拝殿の横のガラスケースに護符が並んでいるのが目に入った。狼が摺られた四足除けの護符なんてものもあり一枚欲しかったのだが、社務所に誰もいなくて買えず、残念だった。

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[山行日] 2013/11/12(火)
[天気] 晴れのち曇り    2013年11月の天気図(気象庁)
[アプローチ] 甲府昭和IC (R20、 R140号)→ 西沢渓谷→(R140号、雁坂トンネル)→ 三峰口 →(県道37号)→ 小鹿野町・両神薄 →(県道279号)→ 日向大谷     [約94km]
      
・駐車場3箇所。第一10台程度、第二10台程度。民宿両神山荘の前に公衆トイレあり。
[コースタイム]
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
1:15 6:10 日向大谷第二駐車場 出発    
6:45 会所    
7:25 最後の渡渉地点 0:05  
0:50 7:30  
8:20 清滝小屋 0:10  
0:40 8:30  
9:10 両神神社奥社 0:05  
0:25 9:15  
9:40 両神山山頂 (1723m) 0:40  
0:20 10:20  
10:40 両神神社奥社 0:05  
1:10 10:45  
11:20 清滝小屋    
11:45 八海山    
11:55 最後の渡渉地点 0:10  
1:05 12:05  
12:30 会所    
13:10 日向大谷第二駐車場 着   全行動時間
5:45     1:15 7:00
登り 3:10        
下り 2:35        
[地図] 両神山 (1/25000)

 

[温泉] 大滝温泉 遊湯館
・R140号、秩父市大滝 「道の駅 大滝温泉」内
・入浴600円。(JAF会員証提示で50円引き。)
・石鹸、シャンプー、リンス、ドライヤーあり。
・地階に露天風呂があり、そちらにも脱衣所、洗い場がある。浴室の窓がないだけの構造で解放感はない。
・温泉隣の食事処「帰路館」では手打ちそばが食べられる。