西吾妻山( にしあづまさん)              [東北] 2035

 

安達太良山から

 吾妻連峰は大学に入ったばかりの1975年、ワンゲルの6月山行で縦走した。上野を夜行で立ち福島からバスで浄土平に上がって、吾妻小富士から一切経山を経て明月湖のテン場泊。翌日 、人形石、西大巓と稜線を歩いて裏磐梯の五色沼に下った1泊2日の山行だった。初めて森と湿原の東北の山を歩けて、満足感でいっぱいだった覚えがある。
 ただ、その時は連峰最高峰の西吾妻山には登っていない。吾妻山は山頂が広大な高原状で目立ったピークがないため、特に最高点を踏もうという気持ちがリーダーに無かったのだろうと、ずっと思っていた。
 ところが今回、改めて昔の山行記録を引っ張り出して見てみたら、西吾妻小屋の着発時間の箇所に小さな字で「西吾妻ピストン失敗」と書いてあった。想像するに、恐らく残雪に難渋して断念したのだろう。昔の地形図を見ると小屋と西吾妻山の間には登山道の記載がなく、踏み跡程度だったのかもしれない。そういうことなら、今回、安達太良山に行ったついでに西吾妻山の山頂を踏んで来よう、と思ったのだ。

グランデコスノーリゾート(右:西吾妻山、左:西大巓)

 

ゴンドラ山頂駅の背後に西大巓

 

 天気予報では午後から曇りということだが、今のところは快晴。昨日より天気がいいくらい。こちらのゴンドラは昨日の安達太良山と比べて、ぐっと空いている。ゴンドラ駅の駐車場から西吾妻山、西大巓(にしだいてん)が良く見える。

 ゴンドラ山頂駅から標識に導かれて右へ。しばらくはスキー場のゲレンデをつづら折りに登っていく。ゲレンデは草地だが、登山ルートは石が多く歩きにくい。
 振り返ると磐梯山が近いが、昨日と同様、雲に隠れている。

山頂駅から登山開始

 

 ゲレンデを登りきると再び標識に導かれて樹林帯に突入。ここからはコメツガやシラビソの針葉樹林の中をひたすら登る。展望は利かず、足元は悪い。昨日の安達太良山ほどではないがぬかるんでいて、しかも岩と木の根がよく滑る。
 我慢の登りが続く中、後ろから近付いてきた人に道を譲ったら若い女性の単独行者だった。明るく挨拶してあっという間に追い抜いて行った。ありゃー、若いけれど凄い人がいるもんだ。この人は自分が西吾妻小屋に着いた時、既に西吾妻山から降りてきてそのまま下山していった。

樹林の登り

 

西大巓の前山

 

中吾妻山方面

 

 1800m付近まで登ってくると、少し傾斜が緩くなり前方に西大巓のピークが見えた。振り返ると西吾妻山の右裾に中吾妻山方面の山々が見える。もうひと頑張り、と思って登ったら、西大巓に見えたのはその前山だった。
 しかし、展望は一気に開け、西吾妻山への稜線が目の前に広がった。やはり吾妻山は大きいなあ。なだらかで伸びやかな稜線はいかにも東北の山らしい。背後には安達太良山も見える。昨日は安達太良から西大巓の山頂は雲に隠れて見えなかったが、今日はこちらから安達太良の山頂を望むことができる。

 

西吾妻山へ続く稜線 安達太良山

 

 西大巓の山頂は広く展望が利く。今日の登山で42年前の山行の事はほとんど思い出せないが、ここの山頂だけはかすかにこんな感じだった気がする。
 眼下に裏磐梯の湖沼群を見下ろすことができるが、磐梯山は相変わらず雲の中だ。ふと気が付くと、周りの木に氷が付いている。霧氷だ。よく見ると西吾妻山の山頂付近はもっと白くなっている。昨夜は寒かったからなあ。秋を飛び越し、一気に冬の装いになってしまった。

 

西大巓山頂から桧原湖を見下ろす 西大巓山頂から西吾妻小屋遠望

 

 西大巓から登山道は稜線から外れて、南側の斜面をトラバースしている。一旦標高を下げて登り返すことになるので少々辛い。しかも道は石だらけで歩きにくい。
 最低鞍部から少し登ると湿原が現れ、木道がその中を通っている。いよいよ吾妻山らしくなってきた。振り返ると西大巓がいい感じに見える。

 

西吾妻への登山道

池塘と西大巓

 

 登り着いたところも湿原だった。枯れ葉色の湿原を隔てて目の前には西吾妻山。あれ、小屋は?と思ったら、後ろの森の中に三角屋根の小屋が見えた。
 木道を踏んで山頂を目指す。昔は踏み跡だったかもしれないが、今は木道の先のシラビソの森の中にも、しっかり道が付いている。
 周りでは樹氷が溶けてバラバラと氷が落ちてくる。

山頂間近

 

霧氷の付いたオオシラビソ

 

西吾妻山山頂

 

 15分程で西吾妻山の山頂だが、樹林の中に山名の標柱が立っているだけ。展望もなければ座れる広場もない。最高地点に来てみただけ、という感じ。

 山頂から北に向かい、天狗岩を経て西吾妻小屋に戻るつもりだ。下り始めたら、高齢者の団体さんとすれ違う。おそらく山形県側の天元台のロープウエイを利用して登って来たのだろう。高度差からみてもそちら側からの方がはるかに楽に登れそうだ。

 

山頂先から天狗岩方面

 

西吾妻山を振り返る

 

 天狗岩は岩がゴロゴロした台地のようなところで、北東の方角は吾妻連峰の広い主稜線が見渡せ、一切経山を中心とした東吾妻の山々も見える。北側は思いのほか近い距離に米沢の盆地が見下ろせる。

 

天狗岩から家形山、一切経山方面

 

吾妻神社から樹氷の西吾妻山

 

 天狗岩の西端には吾妻神社が建っている。お参りしようと近づいたら、賽銭箱の上の表示板を直している人がいた。
 その人が名刺のようなものをくれるので、よく見たら吾妻神社の参拝登山証だった。聞くとこの神社は麓の神社の奥宮という訳ではなく、ここが本社で毎年7月に例祭があるそうだ。いくらロープウェイがあるとはいえ、神主さんが登ってくるのは大変だろうと思う。参拝証には神社の奉賛会のほか白布温泉観光協会や(株)天元台などの文字も併記されていて、皆で神社を維持しているのが分かる。

吾妻神社

 

 天狗岩から小屋に戻る道はダブルの木道で高速道路並みに歩きやすい。10分で着いてしまった。小屋には先ほどの団体さんがいたので、外の木道でカップヌードル食べる。気が付くと頭上はすっかり雲に覆われてしまっていた。雨にはなりそうもないが、予報通り天気は下り坂のようだ。シラビソの森 やその中にぽっかり開けた湿原など十分東北の山らしさを満喫したので下山にかかる。

 

 岩だらけのうえにぬかるんだ道は相変わらずで、滑らないように気を付けて下る。スキー場まで降りてきたらやっと磐梯山が見えてきた。シルエットではあるが、昨日から初めて雲のかかっていない全貌を見ることができた。
 雨の中を夜行バスに乗った時はどうなることかと思ったが、天候に恵まれて気持ちのいい2日間の山歩きだった。

グランデコのスキー場から磐梯山

 

西吾妻山ルートマップ


[山行日] 2017/10/18(水)
[天気] 晴れのち曇り       2017年10月の天気図(気象庁)
[アプローチ] 18日 裏磐梯五色沼の民宿 7:50 (レンタカー)→ 8:10 グランデコスノーリゾートP
     [約7.5km]

      山麓駅 →(グランデコ、パノラマゴンドラ)→ 山頂駅

[コースタイム]
         
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
1:50 8:55 山頂駅(1390m)発    
10:45 西大巓山頂(1982m) 0:05  
0:40 10:50  
11:30 西吾妻小屋 0:05  
0:45 11:35  
11:50 西吾妻山山頂(2035m)    
12:10 吾妻神社(天狗岩)    
12:20 西吾妻小屋 0:25  
0:40 12:45  
13:25 西大巓山頂 0:05  
1:20 13:30  
14:50 山頂駅 着   全行動時間
5:15     0:40 5:55
[帰り道]

グランデコスノーリゾートP (レンタカー/R459、R115、磐越道)→ 郡山駅18:30  (やまびこ154号)→ 東京 →(ひかり533号)→ 浜松 →(こだま685号) 22:16 豊橋 22:23(名鉄急行)22:39 本宿

[地図] 桧原湖 (1/25000地形図)

 

[宿]

民宿リゾートインみちのく
・耶麻郡北塩原村裏磐梯五色沼入口1074-511
・1泊2食、7,900円
・スキー民宿のような感じ。施設は古そうだが、清潔。食事も美味しい。

[風景印] 吾妻(あづま)局
 (二本松市岳温泉1-223-3)

・図案
 吾妻山、八重シャクナゲ