宮之浦岳( みやのうらだけ) [九州] 1936m |
テレビの天気予報で台風3号が発生したと聞いたとき、目まいがした。「またか。」。16年前の悪夢が蘇る。
屋久島に渡るのは2回目。前に行ったのは1997年の9月で、淀川登山口から宮之浦岳に登り、縄文杉を見て荒川登山口に縦走する計画だった。しかし、屋久島空港に降り立った時には台風が沖縄まで来ていた。進路もこちらに向かっている。しかたなく、台風が通り過ぎてから山に登ることにし、ヤクスギランドだけ見て、急遽予約した安房の民宿に泊まった。
また、同じパターンかと気が滅入ったが、鹿児島までの飛行機をLCCで予約しているので変更はきかない。「まあ、
登れなかったらもう一度行けばいいか。」と考え、出発する。
翌日はレンタカーを借り、白谷雲水峡で足慣らし。川が増水して苔の森までは行けなかったが、しぶきを上げて流れる谷川沿いを歩き、天然のサツキを見て満足する。その後、車で島を一周し、大川の滝を見、平内海中温泉に浸かって明日の登山の英気を養う。
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さて、やっと登山日。宿近くの弁当屋で昨日注文しておいた朝昼二食分の弁当を受け取り、4時半に車で出発。屋久島観光のメインである縄文杉
の見物にも早朝出発
が必要なので、島には弁当屋が多い。素泊まり民宿が多いのも、宿で朝食を取らずに出かけるハイカーが多いためだろう。 |
今日の日の出は5時12分。まだ夜の闇が濃いが、空はどんより曇っているようだ。 だんだん明るくなってくるはずだが、山に入るにつれてガスが出てくる。天候が思いやられるが、雨は覚悟の上だ。 ところがヤクスギランドを過ぎたあたりからガスが晴れてきた。荒川登山口に着くころには、朝日も射し始めた。「あれ、意外にいけるかもしれない。」 |
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荒川登山口 |
登山口から淀川小屋まではアップダウンの道で、あまり高度は稼げない。しかし、階段や木道がよく整備されている。 基本的に花崗岩の島なので水はけはよく、ぬかるみは少ないはずだ。 見上げれば梢の間から青空も覗き、気分も明るい。まさか、雨具なしで歩けるとは思わなかった。これだけでも儲けものだ。早くも背の高いヤクシマシャクナゲが現れ、期待が膨らむ。 |
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尾根の上をガスが流れる |
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淀川小屋 |
淀川に架かる鉄橋から流れの上流を見る |
コースタイムより少々余分にかかって淀川小屋に到着。付近を手ぶらで歩いている若者が一人いるが、ここに泊まったのだろうか。小屋の中はきれいで居心地は良さそう。小屋の寒暖計は14℃を指している。 |
荒川小屋からは傾斜がきつくなり、高度があがっていく。登山道のそばに杉やツガ、モミなどの大木が立っている。さすが屋久島。照葉樹の大木もあるが、高すぎて枝葉がよく見えず、種類が分からない。 途中の傾斜の緩んだところで、朝食の弁当を取る。おにぎり2個と玉子焼きや焼き魚などのおかずがパックに入っている。ついでに昼食の弁当も見ると、こちらはおにぎりにはなっておらず、おかずの内容も違うようだ。 |
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朝日が射す登山道 |
再び歩き出してふと樹冠のすきまを見ると、隣の山の上に巨大な岩が見える。「おお、これはすごい。」高盤岳のトーフ岩らしい。固い岩に「ちょっと箸で切ってみました」、と言わんばかりの切れ目が入っているのが不思議だ。 |
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高盤岳山頂のトーフ岩 |
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小花之江河 |
花之江河から黒味岳を望む |
なだらかなピークを越えて、少し下ると小花之江河。巨木の森にぽっかり空いた別天地。ここからもトーフ岩が見える。 |
花之江河から黒味岳分れへの道は、岩の上を水が流れ、まるで沢の中を行くよう。浅いので靴に水が浸みることはないが、濡れすぎないように気を付けて進む。 黒味岳分れから投石平へはなかなか厳しい。木の根道を越え、ロープを伝って岩を登る。 |
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黒味岳分れから投石平へ |
投石平に登ると、そこは主稜線の一角。その名のとおり、投げ捨てられたように巨石が点在する。先行する夫婦連れに追いつき、僕らもここで一休み。ぼちぼち新高塚小屋に泊まり、こちらに縦走してくる人にすれ違う。 投石平は気持ちのいいところ。巨石の上で昼寝がしたくなるが、まだ先が長いので、そうもしていられない。ガスも掛かりはじめて、奇跡の天候もそろそろ限界か。 |
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投石平、背後は黒味岳 |
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ヤクシマシャクナゲ |
投石岳方面を振り返る |
投石平からはまず、投石岳の山腹に取り付く。宮之浦岳まで安房岳、翁岳などのピークが続くが、どれも巻き道になっている。このあたりから、ヤクシマシャクナゲが増えてくる。 |
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巨石の間にシャクナゲが咲く |
満開のシャクナゲ |
だんだんガスが濃くなって、雨も混じり始めた。雨具が必要な程ではないので傘をさすが、ヤクザサが深いところでは邪魔になる。少しづつ Tu さんが遅れ始めたが、マイペースでいかせてもらう。 ヤクザサと岩とシャクナゲだけになった道を黙々と登る。栗生岳には巨石の間に御嶽と呼ばれる遥拝所があるが、随分岩の割れ目が深いので、少し覗いただけで先に進む。 ガスのベールが降りてきて、周りが何も見えなくなったころ、宮之浦岳の山頂に着いた。 |
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安房岳北側の木道 |
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宮之浦岳山頂 |
山頂から北側の斜面 |
とうとう、念願の宮之浦岳に到着。16年越しの念願がかなった。登っている途中ではもう少し展望がきくかと期待していたが、あまり欲をかいてはいけない。雨具なしで登れただけでもラッキーだし、なんとかシャクナゲの時期に間にあって
、これだけ見られたのだから大満足だ。
再び同じ道をたどって下山。途中から雨がやみ、また陽も射してきたので、疲れはしたものの、明るい気分で登山口に帰り着いた。
ヤクスギランドを過ぎ、左側が開けたところで、愛子岳が見えた。雲海の上に頭を出し、わずかに夕日に染まっている。明日もいい天気だといいんだけど。 |
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紀元杉 |
帰りの林道からの愛子岳 |
アイコンをクリックするとマップがでます。 <1/50000>
[山行日] | 2013/6/12(水) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[天気] | 晴れのちガス、時々小雨 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[アプローチ] | 6/10 自宅 7:30 →(自家用車)→
9:00 空港ジャンボ駐車場 →(送迎バス)→ 中部国際空港 10:25 →(ジェットスター)→ 11:50 鹿児島空港 13:30
→(空港リムジンバス)→ 14:25 種子・屋久高速船ターミナル 16:00 →(高速船)→ 18:45 安房港
6/12 安房 4:30 →(県道)→
ヤクスギランド
→(林道)→ 5:30 淀川登山口 [約24km] |
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[コースタイム] |
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[ガイドブック] | 山と高原地図59「屋久島・宮之浦岳」 昭文社 |
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[宿] |
素泊まり民宿「やしま」 ・近くの居酒屋「やしま」の経営。 <TEL 0997-46-4790> ・1泊2,500円(一人だと3,000円) ・安房の市街地にあり、近くに居酒屋、弁当屋、定食屋、モスバーガーなどがあり、非常に便利。 ・客にあまり構わないので、気楽でいい。 |