青笹山( あおざさやま)                              [富士山周辺] 1550

 

 昨年、竜爪山に登った時、富士山は何とか望むことができたが、南アルプスは ほとんど見えなかった。そこで今年はもう少し北にある青笹山に登ってみることにした。

 天気予報をにらみながら山行日を決断した甲斐があって、冬晴れの良い天気。新東名から富士山も眺められて、眺望に期待が持てる。

 ウィークデイに登る人はいないだろうと思っていたが、登山口の駐車場には既に1台止まっていた。そして身支度を整えている間に2台やってきた。意外に人気があるのだ。

葵高原の登山口

 

 駐車場の横にはルート案内板が立っているが、標識はない。「まあ、こっちだろう。」と山に向かう舗装道路をたどる。道路わきには幾つもわさび田が拓かれていて、その横を抜けて 登って行く。
 小さな標識に導かれ、荷物運搬のモノレールを跨いで山道に入る。まだわさび田が続き、わさび田の一番まで登ると再び小さな標識があって、鹿除けと思われるネットをくぐって本格的な山道に入る。山腹を真っ直ぐ登 っていく道もあり、こちらは細島峠へ続いているようだ。

登山道横のわさび田

 

 舗装道路あたりにも所々雪が残っていたが、樹林の下の山道はしっかり雪に覆われていた。雪は踏み固められていて、雪に靴が埋まるようなことはない。あまり傾斜がないので、ストックを頼りにアイゼンなしで登る。

 風穴と書かれた看板のところで小休止。ここから支尾根に取り付き、道が急になりそうなのでチェーンスパイクを履く。滑り止めと付けるとさすがに歩きやすくなり、一気に支尾根を登り詰める。久しぶりの山歩きであるが快調だ。
 昨年の三峰山ではチェーンスパイクに雪がくっ付いて何度も叩き落とさなければならなかったが、今日は気温が低く雪が締まっているせいかそんなことはない。

ミズナラの斜面を登る

 

 支尾根は岩がちで、ヒノキの植林地からリョウブ、アセビの多い落葉樹林に変わって、陽が当たるところでは全く雪がないところもある。アイゼンで木の根を踏まないように気を付けながら登る。 高度が上がるとミズナラに混じってブナも現れる。

 支尾根を登り詰めると主稜線に合流。東側の展望が一気に開け、目の前に大きな富士山があった。天子山塊に遮られることもなく、山裾までしっかり見える。最近の寒さ続きの割には富士山の雪は少ない。眼下には富士川の流れも見える。

主稜線からの富士

 

 ここからは南へ穏やかな稜線歩き。灌木の混じる笹原の中の道を行く。かなり雪は溶けている。
 山稜はなだらかだが右手は安部川の谷で左手は富士川の谷。どちらも深い。

 下山してくる二組、計3人の先行者とすれ違う。先ほど分岐で追い越された一人と合わせ、計4人。下山するまで会った今日の登山者はこれで全てだった。

 笹原のうつろぎ山を越え、一旦下がって登り返したところが青笹山の山頂だった。

青笹山への稜線

 

南アルプス南部の山々。左から上河内岳、聖岳、赤石岳、荒川前岳、悪沢岳。

 

 山頂からは、まずは振り返って南アルプス。十枚山に遮られて北岳方面が見えないのが残念だが、悪沢岳から南の主稜線の山々は全て見渡せる。そして悪沢から上河内岳までは真っ白に輝いている。
 いいな〜。これを見たくて登ってきたのだ。
 上河内岳の左手は半分白い光岳。さらに稜線を辿れば黒々と大きく大無間山。その左にも南ア最南部の峰々が続いているが、山座同定はできない。

 たった一年だけ在籍した学生時代のワンゲルの夏合宿は南アルプスだった。幾つかのパーティーに分かれ、南ア全域に入山するのだが、新入生の僕の入れられたパーティーは最南の大無間山を起点とする最もきついコースだった。
 大井川鉄道のおもり駅から急斜面を薮漕ぎして大無間に登り、そこから道なき尾根を光岳までたどり、その後、聖岳、赤石岳の3000m峰を越えて、南ア主稜線を悪沢岳まで縦走した。光岳まで来て薮漕ぎから解放され、登山道の有難さが身に染みたしんどい山行だった。
 今、その時登った山々が全て目の前に広がっている。

青笹山山頂

 

大無間山(左)と小無間山(右)
 
光岳

 

布引山(左)と双耳峰の笊ヶ岳(右)

 

十枚山の陰にちらりと北岳 (うつろぎ山から)

 

 悪沢岳から北に続く南ア北部の山々は、前衛の布引山と笊ヶ岳に阻まれて見えない。笊ヶ岳に登ればもっと近くに南アルプスの展望を堪能できるのだろうが、この山は簡単には登れない。大井川上流の椹島からピストンで10時間以上かかる。はてさて、今後登る機会が訪れるだろうか?
 青笹山から北に延びる稜線上には十枚山が腰を据えていて視界を遮っているが、その肩にわずかに北岳の鋭い山頂が覗いている。十枚山の方が北方の展望が良いはずだが、以前登った時には眺めを楽しんだ記憶がない。天気が悪かったのか、樹が茂っていたのか、はたまた富士山に気を取られていたのか、思い出せない。
 

 山頂に着いたときにいた先行者はすぐに下山していったので、広い山頂を独占。標識の脇に腰を下ろし、富士を正面に眺めながらのんびりとカップヌードルをすする。胸ほどの高さのある周りの笹原が風除けになってくれているので、陽射しもあって暖かい。久しぶりに山頂でゆっくりするような気がする。

 富士の右手には駿河湾が広がり、その先には伊豆の山々がやや霞んで横たわっている。こんなにはっきり駿河の海が眺められるのは珍しい。青笹山から南に続く真富士山の先には三保の半島も見えている。

青笹山山頂からの富士

 

  さて、下山である。当初の予定は登山口から北の地蔵峠に登り、稜線を南下して最後に青笹山に至る予定だったが、展望が利かなくなるといけないので、逆コースで先に青笹山に登ってしまった。充分展望は楽しめたのでこのまま同じコースを下ってもいいのだが、まだ時間があるので取りあえず稜線を北に細島峠に向かう。

 

 稜線上は小さなアップダウンがあり、日陰の北斜面にはたっぷり積雪があるが、南向きのところはほとんど溶けている。
 こちらのコースには標識が整備されていて、標識に番号が振ってある。登山口が起点で青笹山山頂が
S、地蔵峠がI。ただ、標識の間隔はまちまちで、あまりあてにしてはいけない。

 登ってくる時に確認したとおりMの細島峠から真っ直ぐ葵高原に下る道もあって、少し迷ったが、やはり地蔵峠まで行くことにしてさらに北に向かう。

稜線上のミズナラ

 

 細島峠からひと登りした仏谷山は山頂部が広く、高原のような趣がある。三角点付近から南アが眺められるが、青笹山のような開けた眺望はない。
 眼前の十枚山を眺めながら雪道を下ると、開けた地蔵峠に降り立ち、ここから支尾根の北側を巻きながら正木峠に向かう。下るにつれて、ヒノキの植林地が目立つようになってくる。
 登山道は正木峠まで行かず、直前で右手の林道に下りてしまう。林道を少し進むと正木峠に着くが、右手に下る登山道はロープで閉鎖されていた。林道から林間を覗くと
Nの標識が見える。下で治山工事がされているために通行止めになっているようだ。歩く距離が長くなるが、仕方なく舗装された林道を下る。

仏谷山山頂付近

 

 林道は雪が溶けているところが多いので、チェーンスパイクを脱ぐ。今日歩いた青笹山から仏谷山の稜線を見上げながら、駐車場まで戻った。

 青笹山ルートマップ


[山行日] 2017/1/25( 水)
[天気] 快晴       2017年1月の天気図(気象庁)
[アプローチ] 新東名・新静岡IC ( 県道25号、29号) → 有東木入口 葵高原(青笹山登山口駐車場)         [約45km]  
      
・道路わきに7〜8台程止められるスペースあり。
[コースタイム]  
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
1:00 9:30 葵高原(登山口駐車場)   -3℃
10:30 風穴 0:10  
0:35 10:40  
10:50 支尾根上    
11:15 稜線分岐 0:05  
0:30 11:20  
11:50 青笹山山頂(1550m) 0:45 6℃
1:10 12:35
12:55 稜線分岐    
13:20 細島峠    
13:45 仏谷山(1503.5m) 0:05  
1:10 13:50  
14:00 地蔵峠    
14:25 林道    
14:30 正木峠    
15:00 旧道登山口駐車場    
4:25     1:05 5:30
登り 2:05        
下り 2:20        
 
[地図] 湯の森、篠井山 (1/25000)
[ガイドブック] 新・分県登山ガイド21「静岡県の山」 (山と渓谷社)

 

[風景印] 賎機局
 (静岡県静岡市葵区牛妻7011

・図案
  富士山、賎機山、鯨ヶ池、特産・ミカン、
  元駿河国門屋駅郵便取扱所