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プラ帆船キットの履歴書【超暫定版】

はじめに

 帆船はプラの組立模型の黎明期の頃からキット化され、主に1960〜80年代に掛けて国内外のメーカーから発売されました。しかしながら部品点数が他の分野に比べて著しく多く、また近現代の艦艇のように同型艦によるバリエーション展開もできないことなどから、21世紀の現在、新製品を積極的に開発しているメーカーはありません。市場に流通しているキットの大半は過去の再版か他社の国内販売、または消滅したメーカーの金型による製品です。

 一般的な特徴を挙げると、総じて発売年代が古いことから、モールドや部品の合いといった面では最新の軍艦キットと比べると見劣りする面が否めず、またエッチングなどの補助パーツも発売されていません。木製帆船と比べてリギング(ロープの展開)が省略されているキットが多く、帆がバキュームフォームで部品化されていたり、エレール以外のキットではマストのシュラウドがプラパーツとして供給されているため、実感を著しく損ねる一因になっています。またスケールが小さいキット(1/150以下)ではリギングを全て行うことは物理的に不可能であるため、滑車も含めて大幅に省略されています。またスケールもレベルの1/96と今井科学の1/350を除けばバラバラで、統一スケールによるシリーズ展開はほとんど行われませんでした。それと、輸入はもちろん国産のキットもディスプレイモデルが大半で、動力キットがほとんど存在しないのもこの分野の大きな特徴の一つです。

 モールドが良く組みやすいことは全てのプラキットに共通する選択基準ですが、それに加えて帆船はリギングがどの程度再現できるかという点もポイントとして挙げられると考えます。また実感を損ねるプラの帆は付けない(スケールによっては布で自作する)こと、プラパーツのシュラウドも使わないで実船同様に静索でマストを固定してラットラインを貼ることなどで、見栄えはかなり変わってきます。

 比較的多数のキットを発売し、また現在市場やオークション等で出回っているキットが多いメーカーとして、レベル(レベルモノグラム・ドイツレベル)、エレール、今井科学(イマイ)、エアフィックス、ブルマァクが挙げられます。本ページでは主にこの5メーカーの製品に関して知っていることを書くことにします。

 ただし、このリストは知っている範囲のもので、今井以外は全てのキットを網羅している訳ではありません。また、キットの評価はあくまでも組立模型としてのもので、キットそのもののコレクション的な価値とは異なるものです。リストの個々の名称は便宜上、国内販売された時のキット名や販促資料の日本語記述を優先しています。発売時期はそれぞれのメーカー本国で発売された年を判る範囲で記述しています(ブルマァクに関しては元のパイロの発売年が判れば記述します)。また発売年の?はラインナップ的にこの時期に発売されたと考えられるが確認が取れないものです。

 なおブルマァクの項目に関しては、ぽぽん太氏の協力を頂きました。この場を借りて深く感謝します。

目次


  1. レベル(レベルモノグラム、ドイツレベル)
  2. エレール
  3. 今井科学(イマイ)
  4. エアフィックス
  5. ブルマァク
  6. その他のメーカー



レベル(レベルモノグラム、ドイツレベル)
[大型、中型、小型帆船、額入り帆船シリーズ]

 模型メーカーのレベルにはアメリカレベルとドイツレベル(かつてはブラジルレベルも存在した)の2社があり、前者は90年代に同じくアメリカの有力な模型メーカーだったモノグラム社と合併してレベルモノグラム社となり現在に至っています。本項では1960〜80年代にレベルブランドで発売された帆船キットに関して知っていることを書くことにします。なお、モノグラムもかつては数種類の帆船キットを発売していましたが、現在の扱いはよくわかりません。

 レベルの帆船は種類が豊富で、また日本で国内販売されていた時期も長く、かつては相当数が市場に流通していました。盛んに企画開発されていたのは1960〜70年代で、米英の船を中心に1/96(全長70cm〜1m前後)、全長50〜60cm前後、全長30〜40cm前後の3つに大別でき、日本ではそれぞれ大型・中型・小型帆船シリーズと銘打って発売されました。またこの他に船の左半分を古地図の額に埋め込んだ鑑賞モデルも数種類発売されていました。キットは総じて開発時期が古く、モールドや細部のパーツも現在の目では辛いものがあり、組みにくいものも少なくありません。帆はプラ板の成形で、またシュラウドは一体整形のプラパーツか、または細い合成樹脂の糸を接着した中から切り取る形式になっていました(額入りシリーズはインテリア的な要素が強いもので、リギングはありません)。

 大型帆船は基本設計がしっかりしていて、リギングの省略も比較的少ないため、資料を基に丹念に細部やモールドに手を入れてゆけば木製帆船並みの仕上がりになる可能性はあります(大型帆船のコンスティチューションを完璧に組み上げられたら技量一流の証明と言われた時代もありました)。また、大型帆船のうち、少なくともコンスティチューションとカティ・サークに関しては、布製の帆や真鍮製の飾り支柱、木製の飾り台などを加えたデラックスバージョンも存在しました(ただしそれら追加パーツの出来は今一つだった記憶があります)。これに対して中型帆船には滑車のパーツがなく、リギングも大幅に省略されている上に大きさ的にも中途半端で、他にキットがないヨットアメリカやプロッケーダー、グレート・イースタンを除けば無理してまで求める事はないと考えます。

 小型帆船は玉石混淆で、内容もリギングの省略具合もまちまちです。ただし、私が知る限りではガレオン船(ゴールデンハインド、メイフラワーetc)はモールドが比較的良好で、またリギングの省略も少なく、大きさも30cm前後と手頃で、初心者が帆船を理解する上で最適の入門キットの一つではないかと考えます。ビクトリーは部品に1959の刻印がある全長が40cmほどのキットですが、組みにくいことやスケール的にリギングを省略せざるを得ない事を差し引いても良くできたキットで、モールドは同時代の日本の艦船キットとは比較になりません。またロバート・E・リーは19世紀の米国社会を象徴する河川航行の外輪蒸気船で、厳密に言えば帆船ではないのですが、日本では小型帆船シリーズの一環として販売されていました。

 国内販売は1960年代前半はマルサン(マルザン)、60年代後半〜1977年頃まではグンゼ産業(現GSIクレオス)、77年〜80年代初期にはタカラがそれぞれ行っていました。マルサン時代は記憶も資料もキットもなく、詳しいことは全くわかりません。グンゼ産業とタカラは中型・小型帆船について日本でパッケージと説明書を製作して発売しました。しかしながら大型帆船に関しては日本版の独自パッケージを見たことがなく、直輸入と同様の内容で発売していたのではないかと思います。なお、グンゼ産業時代のラインナップも断片的にしかわからないため、混乱を避けるために現時点では額入りを除いて記述していません。

大型帆船シリーズ(縮尺1/96)

名称 概要 発売時期 国内販売 内容 備考
マルサン グンゼ タカラ
コンスティチューション 19世紀の米フリゲート艦       ○   デラックスバージョン有
カティサーク 19世紀英ティークリッパーの象徴       ○   デラックスバージョン有
サーモピレー カティサークのライバル         船体共通?  
ペトロ・ド・ヌインズ 元サーモピレー、ポルトガル海軍練習船          
アラバマ 南北戦争当時の南軍軍艦            
キアサージ 南北戦争当時の北軍軍艦            
イングリッシュガリアン 16世紀の英ガレオン船       ○    
スパニッシュガリアン 16世紀のスペインガレオン船       ○    

中型帆船シリーズ

名称 概要 発売時期 縮尺 国内販売 内容 備考
マルサン グンゼ タカラ
コンスティチューション           ○    
カティサーク           ○    
サーモピレー           ○    
メイフラワー 17世紀の米移民船         ○    
ヨットアメリカ 1851年にアメリカズカップを獲得した快速スクーナー           船体共通?  
ブロッケーダー 元ヨットアメリカ、南北戦争当時の封鎖船            
グレート・イースタン 3種類の推進装置を装備した19世紀の大型商船   1/388          

小型帆船シリーズ

名称 概要 発売時期 国内販売 内容 備考
マルサン グンゼ タカラ
カティサーク         ○   ノーマルとゴールドの
2種類あり
ビーグル 19世紀ダーウインの探検船       ○    
スパニッシュガレアン         ○    
イングリッシュガレアン         ○    
チャールズ・W・モーガン 19世紀の米捕鯨船       ○    
ゴールデンハインド 16世紀ドレイクの探検船        ○    
サンタマリア コロンブスの米新大陸発見の船       ○    
バウンティ 乗員の反乱で有名な18世紀の武装商船       ○    
ビクトリー ネルソン提督の三層甲板戦列艦       ○    
コンスティチューション         ○    
メイフラワー         ○    
バイキングシップ         ○    
ゆうれい船 (イメージモデル)       ○   蛍光塗料付
ロバート・E・リー 19世紀の米外輪蒸気船(河蒸気)       ○    
ゴルヒフォック 独(旧西独)海軍練習船       ○ 船体共通?  
イーグル 米練習船       ○  
ゼーアドラー 第一次大戦の独通商破壊艦(武装帆船)       ○  
ヤンキークリッパー (詳細不明)       ○    
スタッグハウンド 19世紀の米ヤンキークリッパー       ○    
フライングクラウド 19世紀の米ヤンキークリッパーの象徴       ○    

額入り帆船シリーズ

名称 概要 発売時期 国内販売 内容 備考
マルサン グンゼ タカラ
コンスティテューション       ○      
カティサーク       ○      
スパニッシュ・ガリアン       ○      


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エレール(通常、カデットシリーズ)

 エレールの帆船も種類が多く、またキットのラインナップもヨーロッパ諸国を中心に紀元前〜現代までの艦船史に於ける、各時代を象徴する船を網羅していました。ただし、他のメーカーが競って発売した19世紀のクリッパーにはあまり目を向けず、木製でもほとんどキットがない20世紀の鋼鉄製船体の貨物船をキット化するなど、ラインナップにはかなりの個性が感じられます。盛んに企画発売されていたのは1970〜80年代初期で、総部品数2,000個を越えるソレイユ・ロワイヤルやビクトリーといった超大作もこの頃に世に出ました。また通常の帆船キットの他に、カデット(Cadet)シリーズと名付けられた手の平サイズのミニキットも発売しました。

 キットはレベルやエアフィックスと比較して総じて個々のパーツが繊細でモールドも細かい点に特徴があり、箱を開けた時の印象は非常に良く見えます。カデット以外の通常のキットは帆のパーツが極薄のプラペーパーをバキュームフォーム成形したものになっていて、質感はプラ板よりは良く見えますが、変形に非常に弱く、箱の中でパーツに押し潰されている場合もあります。シュラウドはキットに付属している治具を使って個別に編み上げるエレール独自の形式を取っています。またマストの部品割も実船の構造に準じたもので、リギングは実船(=木製帆船)と同様に展開することが可能です。

 その反面、考証には重大な問題を抱えたものが少なくなく、これは同社の軍艦キットにも言えることですが、水線下の形状や表現に疑問があるものが少なくありません。船底部の木目モールドや銅板被覆・外板表現がカットされているキットも多く、また無理な船体の共通化による架空船(パッケージには架空とは明記されていない)もあります。下表のソレイユ・ロワイヤルの評価が△である事に疑問を持たれる方もあるかも知れませんが、このキットは船の大きさや幅の割に喫水が浅く、また水線下の船体形状にも疑問があり、艦底にバラストを満載したとしてもこのままの形で海上を航行できたとは考えにくいという理由に依るものです。ただし、考証面を切り離して考えた場合は文句無く◎が付けられます。他にもオクシドンは数少ない外輪蒸気船の本格キットですが、プルクワ・パの船体を使い回した架空船なので考証面での評価は全くできません。しかしながら、19世紀当時の一般的なイメージモデルと割り切れば◎が付けられます。

 このようにエレールの帆船は、考証にこだわる場合は、このような船が実在したのか否か、複数のキットで船体が共通化されている場合はベースキットとなっているのは何かという点から、綿密な検討が必要です(昔の船だからといって資料が全く無い訳ではなく、当時一般的に考えられていた船体の構造やリギングの特徴といった点で各時代毎に解説している資料は存在します)。そこまで徹底できないというのであれば、時代的な特徴やリギングに注意を払いつつイメージと割り切るのがエレールの帆船キットとの良好なつきあい方ではないかと、個人的には考えています。

 国内販売は1973年〜78年頃にトミーが、また1983年〜85年頃には今井科学が行っていました。トミー版はパーツをフランスから輸入し、パッケージと説明書を日本で製作して発売していました(74年以降に新発売されたものは説明書のみ製作)。また今井版はパッケージや説明書に加えて帆を独自にプラ板成形したものと差し替えたほか、ロープも自社生産品のものと替えていました。この他に2000年代に入ってグンゼ産業が輸入代理店となって幾つかのキットを国内販売しましたが、これは独自に手を加えた部分はなく、直輸入と同様の内容です。

 トミー版は世界の帆船シリーズと銘打って発売されましたが、この中に唯一帆船ではないキットとして1/400仏海軍艦隊給油艦「ラ・セーヌ」が入っていました。当時日本語解説書を担当された井出隆弥氏からかつて伺った話では、同社の艦艇キットを国内販売させる布石としてシリーズに組み入れたもので、他にも幾つか予定があったものの実現しなかったということです。これに関してはリストから除外しています。

 ちなみに、エレールの大半の帆船キットの整形色は黒で、白やタン系の塗装が多い帆船にとって軽視できない問題の一つです。白色のサフェーサーを吹いてから塗装することになるため、組立工程には充分な注意が必要です。

名称 概要 縮尺 発売時期 国内販売 内容 評価 備考
トミー 今井科学
オゼベルグ・ドラッカー 9世紀頃のバイキング船 1/60   ○   船体共通 ◎  
レーヌ・マチルド 11世紀頃のバイキング船 1/60   ○   ◎  
マタ−ロの船 15世紀半ばの商船 1/60           今井のカタロニア
船と同じ船
サンタ・マリア コロンブスの米新大陸発見の船 1/75   ○ ○ 船体共通?    
コンキスタトーレス 15世紀の侵略船(架空船)            
ニーニャ コロンブスの米新大陸発見の船 1/75     ○      
ビンタ 〃 1/75     ○      
ル・ガリオン 16世紀末頃のスペイン3檣ガレオン船     ○   船体共通?    
コロナ 〃 1/200          
ステラ 16世紀末頃のスペイン4檣ガレオン船 1/200          
ラ・クローン
(ラ・クローネ)
17世紀中頃の仏戦列艦 1/200     ○     木製とは外観が
著しく異なる
メイフラワー 17世紀の米移民船 1/150            
ラ・シレーヌ 17世紀中頃の仏三層甲板戦列艦     ○   船体共通?    
フェニックス 〃     ○      
ランドンターブル 〃            
ロワイヤル・ルイ 18世紀後半の仏三層甲板戦列艦 1/200   ○ ○      
アルシオン 19世紀初期のトップスルスクーナー              
ブリコンテーヌ 19〜20世紀のブリカンチン型貨客船
(架空船)
1/100   ○   船体共通   滑車パーツなし
オクシドン 19世紀の外輪船(架空船) 1/100   ○   △ 滑車パーツなし
プルクワ・パ? 20世紀の仏3檣バーク型海洋調査船 1/100   ○   ◎ 滑車パーツなし
エベルヴィエ 19世紀の3檣クリッパー(架空船?)         船体共通?   ミニスケール、
滑車パーツなし
アンフィトリット 1887年建造の現役最古の木造練習船 1/150       ○ 滑車パーツなし
フォーベット 19〜20世紀のスチーム・ヨット            
ベルエトワール 20世紀の4檣バーク型貨物船 1/250          
パミール 20世紀の4檣バーク型貨物船・練習船 1/150   ○ ○ 船体共通? ◎  
パサート 20世紀の4檣バーク型貨物船・練習船 1/150          
バイリーム・インペレーター 紀元前ローマ帝国の二段オール軍船 1/75 1974 ○     ◎ 船体後部の
やぐら無し
ソレイユ・ロワイヤル 17世紀の仏三層甲板戦列艦 1/100 1975 ○ ○   △  
ラ・レアル 17世紀中頃の仏地中海ガレー艦隊旗艦 1/75 1976 ○     ◎  
ル・ケベック 17世紀のケベック船 1/75 1976 ○ ○   ◎  
ゴルヒ・フォック(II) 独(旧西独)海軍練習船 1/150 1978 ○ ○   ◎  
アメリゴ・ヴェスピッチ 伊海軍練習船 1/150 1978 ○ ○   △ 滑車パーツなし
ビクトリー ネルソン提督の三層甲板戦列艦 1/100 1979   ○   ◎  
プロイセン 20世紀の5檣シップ型貨物船 1/150 1981   ○ 船体共通? △ 滑車パーツなし
ケープ・ホーン 20世紀の5檣バーク型貨物船(架空船) 1/150 1989     ×  
※注:名称のプルクワ・パ?は、?マークも含めたものが実際の船名です(Pourquoi Pas?)。

カデットシリーズ(国内販売なし)

名称 概要 縮尺 発売時期 評価 内容 備考
サンタ・マリア   1/350        
フェニックス            
ロワイヤル・ルイ            
オクシドン            
プルクワ・パ?   1/400        
マリー・ガランテ 16世紀のスペインガレオン船          
ラ・プロビデンス 17世紀の仏ガレオン船          
ロルギューズ 米独立戦争当時の私掠ブリッグ船          
ポノム・リシャール 米独立戦争時代のフリゲート艦          
パミール   1/750        
イーグル 米練習船 1/600        
カティ・サーク 19世紀英ティークリッパーの象徴 1/500        
オゼベルグ・ドラッカー   1/180        


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今井科学(イマイ)(通常、1/350(洋上)模型シリーズ、ミニ帆船シリーズ)

 今井科学は一度目の経営危機を乗り切った70年代前半から帆船模型に進出し、プラと木製で多くのキットを発売しました。1973〜74年に発売された、ローマの軍船からガレアス船までの初期のキットは「歴史軍船シリーズ」と名付けられ、当初はNo.1から5までのナンバーが表記されていました。1970年代後半は1/100日本丸を初めとする大型・小型キットを次々と開発してゆきます。特に画期的だったのは当時現役で活動していた世界の練習帆船を1/350統一スケールで発売したことで、帆船模型としては他に類を見ないシリーズでした。これは当初洋上模型として発売されましたが、後に船底や飾り台のパーツを追加したフルハルバージョンも追加しました(末期は洋上模型の販売は停止していたようです)。

 個々のキットは外国製品と比べてモールドが綺麗で、部品の合いも良く比較的組み立てが容易だった点が最大の特色です。その反面リギングには省略が目立ち、マストもトップまで1体成形となっているキットが多く、実船に準じた形式に張り直そうとするとかなりの手間がかかります。帆はプラ板の成形、またシュラウドも1/350を除いてプラパーツとなっていました。

 キットのラインナップは日本で知名度の高い船が多かった反面、優等生的で面白みに欠ける印象がありました。ただ、今井科学が帆船キットを開発していた当時はレベルやエレールのキットが相当数市場に出回っていたこともあり、それらと対抗するためには仕方のない選択だったのかもしれません。リギングを省略して難易度を下げているのも、それらのキットと比べて作り易さをアピールしようとした可能性は考えられます。もっとも、80年代前半の一時期、エレールの一部のキットを国内販売という形でラインナップに組み入れたことはありました。

 今井科学は2002年2月に営業を停止し解散しました。帆船キットの一部は青島文化教材社が生産と販売を引き継ぎましたが、同社が全ての金型を所有しているのかどうかはわかりません(生産流通も不定期です)。最近1/350の帆船キットが複数の海外メーカーから発売されていますが、これらが元今井の製品なのかどうかも不明です。
名称 概要 縮尺 発売時期 内容 移籍先 備考
ローマの軍船 紀元前ローマ帝国の一段オール軍船   1973   青島文化教材社 ノーマルとゴールドの
2種類あり
(青島版はノーマルのみ)
ギリシャの軍船 紀元前ギリシャの一段オール軍船   1973   青島文化教材社  
カタロニア船 15世紀半ばの商船   1974     ノーマルとゴールドの
2種類あり
ケベック船 17世紀のケベック船 1/80 1974      
ガレアス船 16世紀レパント海戦当時のガレー船 1/160 1974      
バイキング船 9世紀頃のバイキング船   1974?   青島文化教材社  
サンタマリア コロンブスの米新大陸発見の船 1/60 1975   青島文化教材社  
ジャンク 中国の武装外洋ジャンク 1/60 1975     ノーマルとゴールドの
2種類あり
黒船(サスケハナ) ペリー艦隊の旗艦 1/150 1976   青島文化教材社 帆の有無で2種類あり
(青島は帆有のみ)
日本丸(初代) 日本練習船 1/100 1976 船体共通 〃 〃※
海王丸(初代) 日本練習船 1/100 1977 〃 帆無しのみ※
ナポレオン 19世紀の仏三層甲板戦列艦 1/150 1977 〃 帆の有無で2種類あり
(青島は帆有のみ)
カティ・サーク 19世紀英ティークリッパーの象徴 1/120 1977   〃 帆無しのみ
コンステチューション 19世紀の米フリゲート艦 1/120 1978      
スパニッシュ・ガレオン 16世紀のスペインガレオン船 1/100 1979 船体共通? 青島文化教材社  
海賊船 (イメージモデル) 1/100 1979    
メイフラワー 17世紀の米移民船 1/70 1978?   青島文化教材社  
ゴールデン・ハインド 16世紀ドレイクの探検船 1/70 1980   〃  
日本丸(初代)   1/150 1980 船体共通 〃 ※
海王丸(初代)   1/150 1991 〃 日本丸+ダイキャスト製
差替パーツ※
サグレス(II) ポルトガル海軍練習船 1/200 1984 船体共通?     
イーグル 米練習船 1/200 1984    
ゴルヒ・フォック(II) 独(旧西独)海軍練習船 1/200      
ミルチャー ルーマニア練習船 1/200      
※注:イマイの日本丸・海王丸のうち、1/100・1/350は海王丸ベース、1/150は日本丸ベースです。
(厳密を期する場合、1/100・1/350日本丸・1/150海王丸は共に前部船橋と2番倉口の形状を修正する必要があります)

1/350(洋上)模型シリーズ

No. 名称 概要 発売時期 内容 移籍先 備考
洋上模型 フルハル 洋上模型 フルハル
4 1 日本丸(初代)   1977 1978? 船体
共通
青島文化教材社  
8 2 海王丸(初代)   1977? 1986? 青島文化教材社  
1 3 イーグル   1977 1980 船体
共通
青島文化教材社 帆装に一部誤り有
3 6 ゴルヒフォック   1977 1980    
5 8 サグレスII ポルトガル海軍練習船 1977 1980 青島文化教材社
6 9 ミルチャー   1977 1980 青島文化教材社
11 12 タバリシチ ウクライナ(旧ソ連)
海軍練習船
1977 1980    
7 11 ダンマルク デンマーク練習船 1977? 1986?   青島文化教材社  
10 4 アメリゴ・ヴェスピッチ 伊海軍練習船 1977 1979      
− 5 カティ・サーク   (発売無) 1980   青島文化教材社  
9 7 エスメラルダ チリ海軍練習船 1977 1979   青島文化教材社 青島版は内容注意※
2 10 ファン・セバスチャン・ド・エルカノ スペイン海軍練習船 1977? 1980      
13 13 クリスチャン・ラディック ノルウェー練習船 1977? 1981      
12 14 サー・ウインストン・チャーチル 英練習船 1978 1981      
14 − ダル・ポマルザ ポーランド海軍練習船 1979 1979?      
15 − ボート・ヨット・モータークルーザー (情景用アクセサリー) 1979 (発売無)      
※青島文化教材社が発売しているのはフルハルバージョンのみ(洋上模型への改造は容易にできます)。
※2008年4月に発売した青島版のエスメラルダの初期生産分の中にはファン・セバスチャン・ド・エルカノの船体が誤って入っているものがあります。(詳細はこちら)

ミニ帆船シリーズ

名称 概要 発売時期 全長 内容 移籍先 備考
サンタ・マリア   1973or74 14.3cm      ノーマルとゴールドの2種類あり
ローマの軍船   1973? 17.0cm     〃
ギリシャの軍船   1974 〃     〃
バイキング船   1974 〃     〃
中国のジャンク   1974 12.0cm     〃

その他

名称 縮尺 発売時期 内容 移籍先 備考
帆船用パーツ − 1978   ウッディジョー(一部) 木製用、一部プラキットにロープのみ同梱
カティサーク乗組員セット 1/80 1979?     1/80木製キット用
日本丸乗組員セット 1/100 〃    青島文化教材社 青島版は1/100日本丸・海王丸のキットに同梱
日本丸登檣礼セット 1/100 〃   〃  〃



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エアフィックス(Series1,8,9)

 エアフィックスの帆船キットは全長が50cm前後(Series8,9)と12cm前後(Series1)の2種類に分かれたボックススケールで、1950〜70年代に掛けて発売されたものと思われます。キットは総じて発売時期が古く、モールドは現在の目では辛いものがあり、またプラの材質もエアフィックス特有の比較的軟質なもので、部品の変形や補強という点にも注意が必要です。

 キットは部品の見た目もあまり良くなく、リギングも省略されていますが、基本設計はしっかりしたもので、細部に手を加えた上でリギングを実船に準じた形で張り直せば良くなる可能性はあります。ラインナップの中でSeries8,9のビクトリー、メイフラワー、カティ・サークに関してはかつてこのコンセプトに従った製作解説書「CLASSIC SHIPS Their history and how to model them」がPSL出版(Patrick Stephens Ltd)から発売されていました。現在は入手が非常に困難な本ですが、実船の構造に加えて帆船キットを組み立てる上で多くの情報や製作ヒントを与えてくれるものでした。

 国内販売は1980年代の前半にグンゼ産業が極く一部の製品を扱いました。エアフィックス自体はトミーと提携していた時期もありましたが、帆船キットがどの程度発売されていたかは不明です。

(Series 8,9)

名称 概要 縮尺 発売時期 国内販売
(グンゼ)
内容 備考
ビクトリー ネルソン提督の三層甲板戦列艦 1/180         
メイフラワー 17世紀の米移民船     ○    
カティ・サーク 19世紀英ティークリッパーの象徴 1/130        
ディスカバリー 20世紀英スコット隊の南極探検船 1/144        探検隊員、ソリ、犬付属
ロイヤル・サブリン 17世紀の英三層甲板戦列艦            
リベンジ 16世紀の英ガレオン船          
セントルイス 17世紀の仏ガレオン船     ○    
ワサ 処女航海で沈没した17世紀のスエーデンガレオン船 1/144        
グレート・ウエスタン 19世紀大西洋定期航路に就いた最初の蒸気船     ○    
ゴールデン・ハインド 16世紀ドレイクの探検船 1/72        
バウンティ 乗員の反乱で有名な18世紀の武装商船 1/87        

ミニスケール(Series1)

名称 概要 発売時期 内容 備考
ゴールデン・ハインド         
サンタ・マリア コロンブスの米新大陸発見の船      
カティ・サーク        
メイフラワー        
リベンジ        
シャノン        
グレート・ウエスタン        
ビクトリー        


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ブルマァク(大航海史シリーズ)

 ブルマァクは前年に倒産したマルサン(マルザン)の元社員が1969年に設立した模型メーカーで、70年代に大航海史シリーズと銘打って発売された一連の帆船キットは、米国ライフライクの製品の国内販売で、元はパイロのキットでした。これらのキットは現在でも時折オークションなどで見掛けることがありますが、ボックススケールである事に加え、帆がヤードと一体整形されている点など、現在の目では内容的にかなり厳しいものがあり、組立模型として見た場合、個人的にはお金を払ってまで買い求めるほどの価値はないと考えます。

 なお、当時のブルマァクの販促チラシなどを見る限り、ライフライク(パイロ)の全ての帆船キットを国内販売した訳ではないようですが、詳細は不明です。

名称 概要 発売時期 全長 内容 備考
サン・ルイ 17世紀の仏ガレオン船   38.0cm    
ゴーダ 17世紀のオランダフリゲート艦   〃    
ソブリン・オヴ・ザ・スイー 17世紀の英三層甲板戦列艦   〃    
サンタ・カタリーナ 16世紀のポルトガル大型キャラック船   36.0cm    
ヘンリィーグレース 17世紀の英ガレオン船   25.0cm    
ゴッタ・レ・ジョン 米独立戦争当時のフリゲート艦   〃    
カティサーク 19世紀英ティークリッパーの象徴   〃    
バウンティ 乗員の反乱で有名な18世紀の武装商船   〃    
コンステレーション 19世紀の米フリゲート艦   〃    
アークロイヤル 16世紀の英ガレオン船   〃    
リベンジ 16世紀の英ガレオン船   〃    
チャールスW・モーガン 19世紀の米捕鯨船   〃    
フライング・クラウド 19世紀の米ヤンキークリッパーの象徴   17.8cm    
ビクトリー ネルソン提督の三層甲板戦列艦   〃    
バーバリーパイレーツ 地中海で活動した海賊船   〃    
メイフラワー 17世紀の米移民船   16.5cm    
コンスティテューション 19世紀の米フリゲート艦   〃    
ゴールデン・ハインド 16世紀ドレイクの探検船   15.3cm    
サンタマリア コロンブスの米新大陸発見の船   〃    
ビンタ 〃   〃    


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その他のメーカー

 マルサン(マルザン)はプラの組立模型の黎明期を象徴する模型メーカーで、1960年代にはレベルの国内販売の他に初代日本丸・海王丸のキットも発売していました。しかしながら、船体の基本形は実船とは大きく異なるものです(ただし両船の建造時の船体線図は戦後所在不明になり、1970年代に実船の実測によって線図が再作成されるまで正確な船体形状が把握できなかったという事情はあります)。また米国パイロ社と提携して国内販売したキットもありました。1968年の倒産後、いくつかのキットは富士模型に生産が引き継がれたようですが、その後の行方は不明です。

 バンダイが1970年代前半に発売していた帆船シリーズは、元コグレ(小暮模型製作所)の製品という話を聞いたことがありますが、詳しいことはわかりません。コグレは1960年代に活動した模型メーカーで、当時としては高品質なキットを発売していたと聞きます。バンダイのキットは60年代の製品と見るならばモールドが綺麗で全体型も良く捉えていますが、これも21世紀の現在となってはコレクション・アイテム以外の価値はないと思います。

 日東科学の咸臨丸はリギングに省略がありましたが、モールドはレベル並みで、全体的な印象はそれほど悪いものではありませんでした。1980年代の後半に会社が倒産した後の金型の行方は判らず、また1998年に創業当時の日東科学教材の名称で再建したあともラインナップの中には含まれていません。また有井製作所が2001年に発売したカティサークは既に発売されてきたキットの再版ではないようですが、詳細はわかりません。

 青島模型文化教材社が現在発売している帆船キットは全て元今井科学(イマイ)の製品です。

メーカー 名称 概要 縮尺 発売時期 内容 移籍先 備考
マルサン 日本丸(初代) 日本練習船 1/200     富士模型
(フジ)
富士倒産後の行方は不明
日本丸(初代)   1/400     〃 〃
日本丸(初代)   1/1000       マルサン倒産後は不明
海王丸(初代) 日本練習船 1/200       〃
海王丸(初代)   1/400       〃
海王丸(初代)   1/1000       〃
コンスティチューション 19世紀の米フリゲート艦 1/1000       〃
ジャンク 中国の商船 1/1000       〃
ジョリー・ロジャー           〃
ビクトリー ネルソン提督の三層甲板戦列艦         〃
ザンジバルのダウ号 アラビア海の外洋木造船         パイロ社の国内販売
腕木付丸木船
(アウトリガー)
ポリネシアの小舟         〃
米つみ船(パディボート) ビルマの河川航行船         〃
バンダイ ビクトリー ネルソン提督の三層甲板戦列艦         旧コグレ製?
現在生産中止
プリンス 17世紀の英三層甲板戦列艦         〃
カティサーク 19世紀英ティークリッパーの象徴         〃
サーモピレー カティ・サークのライバル         〃
日東科学 咸臨丸 幕末に太平洋横断に
成功した機帆船
1/100 1974     日東倒産後は不明
有井製作所 カティサーク   1/160 2001      


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2005/12/24 超暫定版公開
2006/02/17, 2014/09/27 一部訂正