『トロフィー』['26]
監督・脚本 孫明雅

 中学女子にありがちな父親への反発を見せながらも、根は素直で家族思いのソヒ(恒那)なれば、父親が大事にしている勲章をあのような形で売り飛ばしてしまうだろうかと思ったり、あれほど北朝鮮をウリナラ【祖国】として執心しながら、韓国籍の妻と結婚したりするのだろうかと思ったりしたが、二世からなお下って四世における国籍アイデンティティについて瑞々しく描き出した秀作だとは思った。

 アッパ(井浦新)と弟が北朝鮮系で、オンマ(市川実和子)とソヒが韓国系という設えだったように思うが、韓国系で朝鮮学校の伝統舞踊部に所属というのも変な気がするので、弟のほうが韓国籍だったのかもしれない。劇中にここに38度線があるとの冗句が出てきたことに対して、四半世紀前に観たGO』['01]の日誌に記してある中学まで朝鮮民族学校に通い、高校から国籍を韓国に変えて在日韓国人として日本人の普通高校に通っている設えに驚いたことを思い出した。ソヒの弟の学校の話は出てこなかったように思うが、どの学校に通っていたのだろう。

 アッパが【祖国】に執着する理由が、最も苦しいときに物資・金銭両面で国からの支援を得たことを挙げていたが、彼が三世なら戦後復興期のことを指すのではなさそうだし、建築の道を断念せざるを得なかったときのことを指すなら、'70年代に中高生だった僕よりも遥かに若そうな彼の時代になお、そのようなことがあったのかと怪訝に思ったりした。

 それにしても、ソヒと仲良くなった日本人中学生の遠山未来(梨里花)は実にいい子だった。そして、彼女の祖父たる誇り高き町工場職人(きたろう)がまた格好良かった。

 すると、近年韓国籍から帰化した二世の映友からソヒの弟は、当然朝鮮学校の初級科だと思います。物資、金銭面は、朝鮮学校は北朝鮮から受けていたみたいですよ。『ウリハッキョ』という映画で明言していました。とのコメントを寄せてもらった。また韓国籍で朝鮮学校に通学する人は意外と多いです。とのことでもあった。ドキュメンタリー映画『ウリハッキョ』['06]は当地では未上映の作品ではないかと思われるが、朝鮮学校について取材した映画らしい。

 されば、朝鮮学校の校長を務めるソヒのアッパが苦しいときと言っていたのは、彼の個人的な苦境ではなくて朝鮮学校の経営事情のほうだったのかと驚いた。最も苦しいときに物資・金銭両面で国からの支援を得たことを理由にしていたのは、娘に応える方便であって、本音というか真情ではなかったようだ。ウリナラに執心する彼の本音の部分がもう少し踏み込んだ形で描かれていればいいのにと思ったりした。もっとも作り手が描きたかったのはそこのところではなさそうなことが明白な作品だったので、詮無いことではある。
by ヤマ

'26. 7.29. キネマM



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