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| 『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』['25] | |||||
| 監督 吉原達矢
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| 幾人かの映友から薦められながらも食指が動かず、見送っていたが、ひょんなことから観る機会が得られたものの、作品的にはまるで響いてこなかった。実写映画でもそうなのだが、今や戦闘・破壊・殺戮アクションものの過剰刺激というか、インフレ画面に全く魅力を感じなくなっている。かつて成人映画が退潮し、ライブ感に優るAVが人気を博して裏ビデオなどが流通し始めた時分に、物珍しさも手伝って幾つか観たりはしたものの、早々に飽き足りなくなったことに通じるようなところがあると感じている。 だから、デンジ(声:戸谷菊之介)とマキマ(声:楠木ともり)の映画デートや、レゼ(声:上田麗奈)との夜のプールデートなどの前半部は、失笑しつつも愉快に観たが、レゼが怒りに囚われ、変身し始めた後半からは、さっぱりだった。 すると、「ファンタジー部分抜きで観るとキャラから今の時代感がかなり巧みに伝えている作品の様に私は感じられました。そういう意味では、私がダメだった最近見た大島渚の『青春残酷物語』よりも(今の)時代性を感じられる作品でした。なので、本作の全世界的なヒットは単にアニメという事ではなく、世代的な若者の時代感に対する共感の様な気がしました。」とのコメントが寄せられた。 今の時代感、と言われれば、確かにそうかもしれない。時代に後れを取る世代として、今の時代に違和感しきりの僕だから、本作に感じる違和感こそは今の時代感を映し出しているからなのだろう。それにしても、いまどき「公安」とか「ソ連」を持ち出されると、なんだ?こりゃと思わずにいられなかった。また、かつてのクールやニヒルとは明らかに異なるものを志向しているからこその前半部のデンジのキャラクター造形にある恋心の純朴さと、いわゆる冷笑系の自己防衛バリアとのギャップに魅力を誘おうとしている人物造形の幼稚さに脱力した。 本作が世界的なヒットを得ているというのは、まさしく当今の世界の在り様が、かような幼稚さに向って行っているからなのだろう。即応的というか反射的な反応に任せるばかりの思慮の無さというか、兵士の如く課せられた役割を全うすることのみに没入して、その意味を問うことのない姿とか、今の時代感を巧みに伝えているのだろうが、それに対する違和感がある種、不快感として湧いてきたような気がする。未見のままだが、評判の高い『進撃の巨人』などを観ても、おそらく同種のものを感じるのではないだろうか。 賦与された枠組みとどう闘うかという「反体制物語」ではなく、賦与された枠組みのなかでどう闘うかという「体制内物語」に闘争譚・戦闘譚がすっかり懐柔され、矮小化されている気がしている。現実的諦念というものが作用しているような気がして仕方がない。'60年代初頭の『青春残酷物語』との差異の一番大きな点は、そこにあるのではなかろうか。言うなれば、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』と『エヴァンゲリオン』を混ぜ合わせてオカルティックに劣化させたような作品だと感じた。確かに時代を映し出してはいるようだ。 すると、高校の二年後輩が「米津の曲がいいのと十代向けの内容で世界中の若者受けしてるかなと。深く考えずに観れば映像綺麗だし満足しましたよ。総集編観た後ならもう少し評価上がるかな。深さじゃ攻殻機動隊に敵わないし哲学さじゃエヴァに敵わないです。自分は3回観ました。」と寄せてくれた。だが、僕に勧めてくれたのは皆オーバー還暦だったことだし、若者だけではない現在の傾向なのではないだろうかという気がしている。 | |||||
| by ヤマ '26. 1. 3. 配信動画 | |||||
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