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『愛を耕すひと』(Bastarden)['23] | |||||
監督 ニコライ・アーセル | |||||
ヤマのmixi日記 2025年09月15日16:48 なかなか風格のある画面だったが、最後に1763年とクレジットされて、 1755年コペンハーゲンから始まった8年の物語だったのかと、 その大河的ドラマ構成とのギャップに驚いた。 司法権すら有する地元の有力大地主の二代目若造シンケル(シモン・ベンネビヤーグ)と 25年も掛けてようやく尉官になって軍人年金も得られることになったらしい ルドヴィ・ケーレン大尉(マッツ・ミケルセン)の土地争いの確執は、 北米での西部開拓物語さながらながら、欧州だけあって貴族と王という要素が加わる点が 大きく異なっていて興味深かったものの、しまいには従妹で婚約者でもある ノルウェー貴族の娘エレル(クリスティン・クヤトゥ・ソープ)から「狂ってる」 と突き放されるシンケルによるあまりの理不尽の連打に少々辟易とするとともに、 不屈というよりも偏執的にも感じられる点ではシンケルに通じるところも窺える 二人の私闘の犠牲になったようにも見える少なからぬ人の死が虚しく映って来た。 シンケルの毒牙に掛かりながらも出会えた愛する夫を殺され、 ケーレンの寝所を訊ねて互いに別人を想いながらだと零しつつ求め合っていた アン・バーバラ(アマンダ・コリン)の造形がなかなか好く、被差別民たる タタール人の少女アンマイ・ムス(メリーナ・ハーグベリ)への向かい方ほか、 ケーレンが自分と同じ出自であることを知った彼女からの薫陶を得て 不屈の偏屈者ケーレンが人間性を得て行き、 独りでは生きていけなくなっている姿が心に残った。 盟友とも言うべき牧師のアントン(グスタフ・リン)が殺され、 アン・バーバラが投獄されると、心ならずも修道院に追いやったアンマイ・ムスを 引き取りに赴き、彼女が長じて恋した男の元へ家を出ると、 苦労して得た爵位と報奨を投げ捨てアン・バーバラの奪還に向っていた。 *【コメント談義】2025年09月15日 21:42~ 09月16日 13:50 (ケイケイさん) 勿論、観てますよー。 荒涼たる土地と同じような自分の心を、血みどろになりながら耕した男のお話しですよ、うんうん。 http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=10442&pg=20250221 ヤマ(管理人) ◎ようこそ、ケイケイさん 邦題は嘘八百って?(笑) 僕も思った。どこが愛を耕したよって(はは)。 “長い長い開拓の道程”っていう印象、僕もあったから「大河ドラマ的構成」と書いたけど、余人が五十年掛かっても果たせなかった偉業をわずか一年で、八袋のジャガイモの収穫という形で果たしたんよね。 それで得た入植者の送り込みにシンケルが邪魔立てを重ねながらも、遂にはエレルと結託したアン・バーバラによる処刑にあうわけで、その後、ケーレンの功績を財務省に証言した痔持ち役人のおかげで男爵の称号と報奨金及び二十年間の課税免除を得るのだけど、それらを放り出したのが開拓に着手した八年後というクレジットに驚いた。 でも、十歳くらいだったアンマイ・ムスが十八歳になっている感じではあったから、1755年から1763年の物語で間違いないってことなんやろね。1755年に二十五年間の軍歴を数えていたケーレンの歳が五十歳だったとすれば、八年後のケーレンは少々老け過ぎてる気もしたけど。 ケイケイさんの日記の「ケーレンは不屈なだけではなく、超が付くほど頑固で、嫌味な孤高の人…頑なで人を寄せ付けない。それが変化していった…アンマイ・ムスや…アン・バーバラの存在は、彼に人間らしい、血の通った心を呼び覚まします。」に同感。 「どこかでデ・シンケルと和解という方法があったのではないか?」は、かなり難しいと思うけど、大金を得る代わりに遠い地に去って開拓を始めることを求めたシンケルの提案に対しては、王にこの地はシンケルの領地であるとの証言を添えるという条件さえ付かねば、ケーレンも吞んだのではないかと思わせるところがあったね。 シンケルについての人物評についても同感だった。彼は、あの家に生まれ、「何を得て何を失ったのか?」。ある意味、最も哀れな人物だったのかもしれないな。 (ケイケイさん) >ヤマさん、 そうそう、時の流れは案外短いのよね。マッツ老けすぎ説は、元々なので許して下さい(笑)。壮大に時は流れて風な印象は、私にもありました。 「同感」のところ、ありがとうございます。嫌な野郎だなと、中盤まで思いましたもん(笑)。でもそれも、彼が愛人との子供であることに起因しているので、同情は出来ました。日本では身分の高い男性のとの子供は、例え妾腹であろうと、それなりの暮らし向きはさせて貰えていますが、欧米では違うんだなと思いました。アメリカでも、お手付きの黒人奴隷との子供は、良くはして貰ってもやっぱり奴隷だと、『ルーツ』で描かれていた時、すごく憤りを感じたのを覚えています。 >かなり難しいと思いますが、 シンケルもあんな男ですから(笑)。この二人、近親憎悪みたいな気がしました。ヤマさん説はいいなぁ。当時の王は、アル中でボンクラだったそうですが。 >シンケルについての人物評についても同感でした。彼は、あの家に生まれ、「何を得て何を失ったのか?」。ある意味、最も哀れな人物だったのかもしれません。 本当に憎々しいサディストなのに、哀れを感じさせたましたよね。悪役が暗く輝く作品は、確実に一段格が上がりますよ。あの無様な死に方も似つかわしいし、脚本の意図を、それ以上に俳優が演じたんだと思いました。 | |||||
編集採録 by ヤマ '25. 9.15. 喫茶メフィストフェレス2Fシアター | |||||
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