メタモルフォーゼ

(1)僕女の子になる

「最後にもう一度聞くけど、絶対に後悔しないわね」
 薄いローズピンクのスーツを着込んだ若い女性が僕にたずねた尋ねた。
「はい、絶対に大丈夫です。僕、もう決心したんです。お願い、絶対あきらめないから」
 カウンセラールームの様な場所で、さっきからずっと話し込んでいる僕とその女性。そして、その女性は長い間額にあてていた手を膝に置き、足を組み替えてため息を一つ。そしてゆっくり口を開いた。
「御両親に許可はとってあるとしてもね…」
「もう殆ど家出同然なんだけど、でも大丈夫、ここの場所は教えてないもん」
「あと、途中で挫折した子も何人かいるのよ。まだ女の子になった子はいないんだけど…・私自信の考えだと高校生じゃ遅すぎるって感じなのよね。中学生から始めるのがいいかと思ってるのよ。あなたは今十六歳だっけ、体も華奢なほうだけど、もうかなり男性の骨格が完成している様な気がするんだけど。今から女の子に慣れていくのはとても大変だと思うけど」
 その言葉を聞いた僕は、もうたまらなくなっていきなり椅子からおりて土下座する。
「お願いします!」
 僕の目には涙すら浮かんでいた。
「いいから、土下座なんてやめなさい」
 彼女の声に僕は顔をあげると、女性はうつむいて少し考え込んでいる。やがて長い髪をかきあげて顔を上げ、僕の顔をじっとみながらゆっくり答えた。
「わかったわ、あなた可愛いし、その決意もとっても固い様ね…・。あなたならやれるかもしれないわ。幸男クンか。じゃ今日から幸子ちゃんでいい?」
 僕の目が輝いた。
「ありがとうございます!僕絶対最後までやります!絶対女の子になります!」

 話せば長くなるけれど、僕は幼い頃からなぜ自分が男なのか、本当にわからなかった。女の子達と話したり、遊んでいる時の方が楽しかったし、自然に思えたし。でも中学一年生の時、自分はこれじゃいけないと思い、同級生の男の子達とスポーツとかやったりして男らしくなろうとはした。
自慢じゃないけど、なぜか僕は女の子の間で可愛いって人気になり、中学三年の時は仲の良かった前川雅代って女の子と、彼女の部屋でBまで体験したりした。その時僕は男らしくしようとして、雑誌なんかで覚えた事を必死でまねてみたけど、でも結局僕が彼女と一晩一緒に寝た時思った事は、この子は僕の物だっていう感覚じゃなかった。彼女の甘い香り、吸い付く様な柔らかくて白い肌、可愛く膨らんだ胸と、丸くて可愛いお尻。僕もこんな体になりたいっていう気持ちだった。
 僕に興味を持ったのは女の子だけじゃなく、男の子も何人かいたみたい。幸い彼らには何もされなかったけど、中学校卒業間近には二通のラブレターをもらったりもしたんだ。でも、僕は雅代ちゃんの様に、自分が男の子に抱かれるなんて事を想像するとぞっとして身震いした。

この施設の事はひょんな所から聞いた。真実を確かめようと噂の有ったその女性、早乙女ゆり先生をずっとマークして、いろいろアタックしてみたりした。最近になって彼女も僕の存在に気がつき、いろいろと内緒でお話してくれたりした後、やっと今日正式に先生にトレーニングの話を承諾してもらったんだ。
 ここがどんな所かわからないけど、どうやら国際的に有名な研究機関の特殊な施設みたい。簡単に言うと男女の性を手術と心理効果で完全に変えてしまう所みたいなんだ。ここは男性から女性への性転換の施設。逆はまだ研究中と聞いた。
 ここに入った僕達は四年間の長い年月をかけて少しずつ性別を変えられていくんだ。最初の一年は女性としての基本的な事、言葉使いとか仕草とかを学習。女性ホルモンとかも与えられるみたい。二年目からはそのまま女子高校生として普通の共学の高校に入学させられるんだ。次第に体も、そして心も女性化してきたとき、かなりショッキングなカリキュラムも有るみたい。 
これから紹介するのは、それ以後の僕の体験を綴った物なんだけど、もし興味が有ったら読んでね。 

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