二、禁術

 闇召喚に取り込まれた双聖は全身の霊氣を臍の上に集中させることによって爆発的な霊氣が生まれ、近づく妖魔たちを次々に消し去っていく。それでも徐々に霊氣が弱まり、全身に物凄い量の汗が流れている。双聖は覚悟を決めた。防御に徹していた霊氣を一気に静め、逆に攻撃に転じた。
「牙流衝!」
疾風の如く流れる鋭い牙が妖魔を切り刻む。続いて、
「五指霊弾!」
両指に霊氣を分散して一気に放つ。餓鬼などの妖魔が消し飛ぶが鬼の類には通用しない。双聖は鬼に近づいて「霊風波動」をもろに食らわせた。鬼の体に焦げたような跡が残り、消し去る瞬間、鬼の真後ろにいた別の鬼が双聖に攻撃を加えた。頬をかすめる。
「くっ…」
流れる血の臭いに吸い寄せられるように妖魔たちがわらわらと双聖に寄って来る。喰う、それが彼らの本能だ。双聖の脳裏に「死ぬ」という文字が浮かんだとき理性は消え去った。「怖い」という本能が生まれ出る瞬間でもある。
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!!!!!」
突如の絶叫は妖魔たちを歓喜にさせた。
「く、来るなああああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!!!!!」
獲物が恐怖に怯えているのだ。多少の攻撃をされようとも深手を負うことはない。そう確信した妖魔たちが双聖の周囲に集まり始める。妖人も鬼も関係ない、何の区別も無く獲物に目掛けてやって来る。そんな状態であるにも関わらず、双聖は怯えるばかりで何の動きも示さない。
(怖い…、怖いよぉ…、誰か…助けて…)
(どうして…誰もやって来ないの…)
(どうして…)
(親父…、沙耶さん…、紺、菊、誰か…)
(ここから出してよぉ…、お願いだから…)
(えぐ、えぐ、えぐ…)
双聖の心は恐怖から混乱と陥り、悲哀が入り混じった複雑な状態となっていた。双聖の記憶に父の姿が浮かぶ。
 そこは父に初めて連れて行かれた海が目の前に広がっていた。
「綺麗だろう、山の中にいればこんなものは滅多に拝めない」
夕焼けに照らされた父の顔が浮かぶ。
「双聖よ、己に課せられた運命は決して軽くはない。なれどそれに気づくまで誰かがきっかけを与えてくれるわけではなく、双聖、お前自身がそれを見つけなければならない。運命とはそういうものだ」
父の言葉が響く。双聖は海に魅入られていた。
「これから成長していけば自ずとしてお前の手に導かれてやって来るだろう。そのときこそ、本来の双魔王としての風格が身に付くときでもある。我をそうだった、幼き頃に双魔という存在をどれほど憎んだことか…」
父は双魔最強と詠われていた。しかし、祖父がその力を恐れていたのを双聖は知っていた。
「もし、運命という言葉が受け入れられないのならば自由に生きてみよ。そして、己が何をすべきで何を守るべきなのか考えてみるのも良いかもしれん」
そうしみじみと語った。双聖はわずかに頷くことだけしかできなかった…。
 次に沙耶が現れる。母が死に沙耶が来たときだった。
「今日からお前の守役をしてくれる沙耶だ。仲良くしてくれ」
父はそう言った…と思う。最初はなじむどころかそんな気配すらになかった。
「守役なんていらない」
そう言って立ち去ろうとする双聖に沙耶はしつこくついてきた。どこに行くのにも決して離れることはなかった。何度無視しても沙耶は一向に気にすることなく接してきた。そんな沙耶に母親の存在を知らない双聖は徐々に心を許すようになっていった。その一因が廃嫡問題である。弟を後継者にしようとする動きが活発化し出した頃、食事に毒を盛られることが少なくなかった。人間不信に陥った双聖は引きこもりの状態になった。
「来るな…」
殺気に満ちた僕に沙耶は懸命にその命を守ろうと尽くした。まるで母親のように。次々に起こる問題に奔走し、とうとう過労になってしまった。それを聞いた双聖は密かに沙耶の部屋を訪れた。
「そ、双聖様!?」
沙耶は驚きの表情をした。
「こ、このような夜更けに如何なされたのですか?」
「眠れなくて…」
「そうですか…、私もです」
月の光に照らされた沙耶の姿が双聖の目に焼きついた。少しやつれている。
「しかし、ここは女人禁制の場。誰かに見つかればどんなお仕置きを受けるか…」
「大丈夫です。その心配はありません」
「えっ?」
沙耶はゆっくりと起きあがる。
「そんなはずは…」
沙耶の周辺は護人衆で守られているため、滅多なことでは近づけないのだが…、沙耶は障子を開いたとき呆然とした。
「幻影術」
全員が見事に眠らされていたのである。
「さすが…」
沙耶は絶句した。
「しばらくは誰も来ませんよ」
「やはり、双聖様は双魔の申し子…」
「申し子なんかじゃないですよ」
双聖は苦笑した。
「それよりも体の具合は大丈夫?」
「ええ、大丈夫ですよ。霊力が疲れを癒してくれてますから」
沙耶を包み込む霊力は霊陣守と互角の力を秘めている。
「それにここには双聖様がおられますからね」
そう言いながら後ろを振り向くと今までそこにいたはずの双聖の姿はどこにもなかった。
「双聖様?、双聖様!?」
まるで狸に化かされた気がしたが沙耶は双聖の心の全てを汲んでいた。
「まったくもう…」
少しいらつきを見せながら、沙耶は眠らされている護人衆を見つめた。
「護人衆は手練中の手練…、それをここまで…」
そして、改めて双聖の能力を認めたのである。その姿を双聖は気配を消して屋根の上から見つめていた。そして、沙耶は続ける。
「双聖様も自信をお持ちになって下さればよろしいのに…」
(自信…)
「あの御方は双玄様にない能力を秘められています」
(父にない能力…)
「それがご自分で分かればどれだけの人が救われることでしょう…」
(人を救う…)
「双魔のためではなく、自分のために生きるために」
(自分のために生きる…ため………!)
そのとき双聖の中で何かがパァ〜ンと弾けた。まるで光の玉が地面に叩きつけられたかのように…。

 木曾神社では暗雲を極めていた。周辺で戦いが繰り広げられ、霊力を持たない護番衆たちがあちこちで右往左往している。
「沙耶様、お早くお逃げください!」
若い術師が駆け寄る。
「皆が戦っているのに逃げるなどと…」
「しかし!?」
術師は焦っているが沙耶は冷静に落ちついてるように見える。いや、内心は落ちついてはいないかもしれない。それでも、双魔のために動こうとする者たちを見捨てて逃げるような真似はしない。
「待ちましょう。きっと双聖様がお戻りになられるはずです」
「………」
この言葉には術師も反論できなかった。しかし、形勢はかなり劣勢である。大半が護番衆であり、戦いのいろはも知らぬ者たちばかり。唯一の救いは四天王と呼ばれる手練の存在があった。さすがに四天王と呼ばれるだけあって押し寄せて来る敵を一瞬にして退けていく。霊陣守に続く入り口を死守している忠徳は子の忠範ら双魔氣鋭衆の結束を元に霊力を放出していく。
「霊風波動!」
霊氣の塊が敵の体に当たり、吹き飛ばされていく。
「良いか!、霊陣守は双魔の要!。破られてはならぬぞ」
「おう!」
士気は高い。
 一方の義範は沙耶を護衛しつつ、護番衆を避難させ、さらに敵を撃退していく。彼の率いる双魔武衛衆は双魔の豪を示している。
「護番衆は?」
「すでに本山のほうへ」
配下が平伏しながら答える。
「よし!、何としてもここを死守するぞ!」
こちらも士気は高かったが相手が悪かった。突如、味方の一角が崩された。
「何者!?」
「何者とはひどいことを言う」
現れたのは双聖の弟・双翼だった。
「双翼殿、何故、このような真似を…」
「無論、双魔を我の手中にするため」
「愚かなことを!」
「愚かなのは愚君に仕えるお前たちのほうだ」
愚君とは双聖を指している。
「あのような無能な双魔王など生きている価値すらないもの」
「何と申されるか!?」
義範が怒鳴る。
「例え、どのような主だったとしてもそれに忠誠を誓うのが我ら双魔衆の役目。それを曲げることは許されぬ」
「ふん、本当にお前は頑固な男だな」
手を翳すと霊氣を持った風が双翼の後方から巻き起こる。
「真に愚かなことよ。牙流衝」
牙のように鋭く、凄まじい風の刃が義範を襲うがこれを軽く風で弾く。しかし、その影響で神殿の一部が崩れる。それを見た双翼は、
「丁度いい、全て無に帰るのもいいだろう。氣霊砲!」
「な!?、術式が早い!」
義範が驚くのも無理がない。氣霊砲は一度、霊氣を溜めてから放つ奥の手みたいなもので主に遠距離の敵に対して使う術だ。戦略がめちゃくちゃなのだが双翼の術の仕掛けが早い。一瞬で霊氣を溜めて一瞬で放つ。これほど恐ろしい敵は存在しない。凄まじく凝縮された霊氣は義範にかわされるが本山の一角に激突した瞬間、大爆発を起こした。爆風がまた神殿の一角を崩して土煙が巻き起こす。
「くっ…、何と言うことか!?」
双翼とて双魔一族の者、それを平気でここまでする道理があるのか、義範の心は大いに揺れた。そして、身構える。
(何としても、こやつをここから離れさせないと………!)
義範が動いた。
「霊衝激流陣!」
風の流れが急激に速くなり、竜巻と気流が混在した不思議な空間を作りだし、その中に導かれた双翼に風の刃が襲いかかる。避けても避けても襲う刃に双翼の未成熟な心はいらつきを見せ始め、たまらず後ろに後退する。それを見て取った義範、そして駆けつけた四天王の一人、仁芭(じんば)の2人が追い討ちする。双翼は集落の周辺を取り囲む森に逃げ込む。そして、霧を張った。霧隠術である。霊氣と冷気が混合し合い濃霧を発生させたのだ。義範は霧の存在を知るとやみ雲に追わず、自らの周辺に絶対防御の霊氣を固め、奥に進んでいく。仁芭は森の外で援護のため、待機していたが双魔の窮地にも関わらず、まだ現れない王斎の存在を気にしていた。
「一体、どこに行ったのか…」
仁芭が四天王になったのは双玄が病床にあった時だった。能力は双魔衆以上四天王未満という中途半端な状態だが人望は厚く、護番衆からも慕われる存在だった。双玄はそれを見込んで四天王にしたのだが他の四天王からして見れば未熟者には変わりなく、筆頭を務める王斎とは雲泥の差があった。そのため、主に奥木曾から外に出ることが少なく、本山を守っていた。それでも、四天王としての自覚は誰よりも強く、双魔霊風術の修行は人一番励んでいたのである。そのことを知っているのはただ一人だけだった…。
「どこにいる…」
義範はあまりにも濃い霧の中で焦りを見せた。そこで霊氣を身に包む。
「浄巻陣!」
空中から巻き起こる竜巻が霊氣と混同して全てのものを浄化していく。霧が風によってなぎ払われる。そのときだった。双翼の気配が強く感じた。真後ろから…、後ろからもろに攻撃を受けた義範は木に打ち付けられる。
「がはっ!」
意識が飛ぶことはなかったが視線が定まらない。双翼は義範が動くのを待っていたのだ。能力では上でも戦略では劣ることを理解していた双翼の作戦勝ちだった。戦い全体の情勢は優勢だが双翼は1人で敵の首を捕りたいという欲にかられていた。足腰がしっかりしない義範にとどめを刺すべく拳に霊氣を溜める。
「死ねぇぇぇ!!!」
一気に振り下ろしたとき、義範の腰がすとんと落ちた。霊氣がこもった拳が木の幹をえぐる。
「外した…」
この瞬間、義範は霊風波動を放ち、難を逃れたのである。
「くっ…」
肋骨を折れていることを認識した義範は不安ながらも仁芭に託した。
「くそっ……たれぇっ!」
義範に飛ばされた双翼は地面に打ちつけることなく、運良く木の枝に引っ掛かっていた。運も強いようである。
「義範め…」
双翼は憎悪の塊となった。憎悪は邪気と混同して妖魔になる前兆でもあった。退魔師の家から妖魔を誕生させた例はいくらでもある。その例に沿って双翼も妖魔化する一歩手前まで来ていた。起きあがると義範めかげて疾走するが無空術で待機していた仁芭が立ちふさがる。
「我が相手致そう」
「何者だ!?」
双翼は仁芭の存在を知らなかった。滅多に表に出てこない仁芭を知らなくて当然でもあるが。
「双魔四天王が一人、仁芭」
「四天王…だとぉ!?」
「来るがいい」
仁芭は双翼と出会った瞬間から勝てないと見込んでいたが今はそんなことを言っている場合ではなかった。攻撃対象が自分となった以上、逃げることは許されない。
「どけぇぇぇぇぇ―――!!!、五指霊弾!」
五本の指にそれぞれ霊氣を溜めて放つ術である。5つの霊弾が仁芭に襲いかかるがこれを拳に溜めた霊氣で難なく弾く。四方でドンッという音が鳴り響いた。霊弾が着地したらしい。それを見届けることなく、仁芭は接近戦を挑む。接近戦であれば強力な術は施せない。接近戦に弱いことを理解しながらも突っ込む双翼は仁芭の挑発に乗る。ただし、ある隠し玉を持っていた。体術のいろはを統べている仁芭は次第に双翼を追い詰めていく。森から集落が見える場所まで移ってきたとき、義範の気配は遠くに感じるだけとなっていた。どうやら安全な場所に避難することができたらしい。ほっと一瞬気を緩めた瞬間、双翼の隠し玉が炸裂した。双翼の掌が仁芭の腹に近づいた瞬間、ドンッという音と共に血が飛び散り、仁芭の体にぽっかりと穴が開いた。
「なっ………」
「ククク…、わはははははは…」
唖然とする仁芭に双翼は笑い声を響かせる。ガクッと仁芭の膝が落ちる。
「それ見たことか!、我をなめるな!」
今までの劣勢が嘘のような姿を見せた。
「ば、馬鹿………な……」
言葉の続きはなかった。絶命したのである。
「さすがは禁術よ、一撃必殺の術よな!」
そう言い捨てると再び木曾神社を目指して疾走していく。残された仁芭の魂は昇天されることなく森をさまよい続ける亡者と化したのである…。

 仁芭の気配が消えたことを悟った沙耶は絶句した。双魔の中枢を担う四天王が敗れたのである。忠徳は霊陣守を守るべくこの場にはおらず、義範が傷つき、仁芭は死に…、挙句に王斎は行方不明…。
「双翼殿は一体何をお考えか!?」
この言葉に誰も返事できる者はいなかった。
「双魔転覆など決して起こしてはならぬ所業」
沙耶の霊氣が怒りにかわった。護人衆を務める師走菊の表情に焦りが見えた。そして、止める。
「沙耶様、気をお鎮め下さいまし!。姉者が戻られるまでは!」
姉とは紺のことである。双聖を探索しに行ったまま戻ってこない。
「……そうでしたね。我らにはまだ望みがある」
双聖の存在を思い出した沙耶は怒りを鎮めた。それを悟ったかのように双翼が姿を現した。
「待ちましたか、沙耶殿」
「双翼殿、あなたは一体何をするつもりなのですか?」
「無論、双魔を滅ぼし、憎き兄者を葬る。ただ、その目的だけのため」
「憎い?、何故、憎いのです?。あの御方はあなたに何を致しました?」
「ふん、父は兄者だけしか見えておられなかった。兄者を愛し、兄者に全てのものを与えた。そして、能力が私より弱いのに双魔王位を譲り、私を殺そうとした!。それで恨むなと言われれば憎くもなろう!」
「それは違います!」
「何が違う?、全て真実ではないか!?」
「あなたは間違っておられます。双玄様は決して双翼様を殺そうとなさっておられません。ましてや、兄である双聖様を憎むとは言語道断です」
「何だと!?」
「双玄様は一度はあなた様に王位を譲ろうとなされた」
「私に王位を譲ろうとしただとぉ!?、ふざけるな!」
双翼の顔が赤く染まる。
「ふざけてなどおりませぬ。王位を継承するには『双魔珠』という秘宝が必要なのです。双魔珠は秘宝としてその存在がありますが見た目は強大な霊氣の塊、当代を務める者は代々それを受け入れることにより王位を継承してきたのです。そして、双玄様もまた双聖様だけでなく双翼様、あなた様にも試された。しかし、双翼様の体はそれを受け入れることができなかった。七難八苦の行に耐えることができなかったのです」
凛とした声質で言い放つ。
「逆に双聖様は三日三晩苦しまれましたがそれに耐えられ、双魔王としての素質を得ることができたのです。それ故、双聖様は真の後継者に選ばれたのでございます」
「それがどうしたというのだ!。たかが秘宝の一つや二つ、過去に手に入らなくても今、ここで兄者を倒せば同じことであろうが!?」
「愚かにも程がありますぞ!」
「愚かかどうかはこれを見れば解ること」
双翼は指を噛み血を一筋流した。そして、地面に落ちた血が霊氣と混同したとき大いなる龍が召喚されたのである。
 グオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ―――――――――!!!!!!
地響きのような雄叫びが龍の喉から漏れた。
「こ、これは…禁術…!!!」
沙耶は驚きを隠せずにはいられなかった。
「ククク…、どうだ!?、我が禁術を見た感想は?」
これで双翼の心の中には勝ちが見えた。しかし、逆に双魔衆の心を逆撫でする結果を生んだ。双魔衆の士気は一段と高くなる。
「真にあなた様は愚か者です!!!」
沙耶が叫ぶと双魔武衛衆が血龍に攻撃を加える。血龍は低い雄叫びをあげながらこれを軽くいなして吐く血を辺り一面に撒き散らす。しかも、撒き散らすだけでなくかつて双魔によって倒された妖魔まで召喚させるという表裏の姿を見せた。武衛衆はこれを止める術を知らないが沙耶は長老から聞いた言葉を思い出した。
「烈衝破!」
凄まじい風の刃が双翼を襲う。血龍を収めるには本体である術者を倒す他に方法はないのである。不意を突かれた双翼だがこれを軽くいなす。
「ほう、沙耶殿が攻撃の術を心得ておられるとは恐れ入る。だが、その程度の術では私は倒せぬ」
余裕の表情の双翼は血龍を沙耶に向けた。
「覚悟めされい、あなたの運命もこれまで」
血龍の睨みは沙耶の心を射ようとする。沙耶は睨みにも動じない。
「双魔のために死するのであれば本望!」
透き通る声が神殿全体に響き渡る。そんな姿を見た双翼は沙耶をも嫉妬し憎んだ。
「ならば死ぬがいい!」
血龍の吐息が双翼の言葉に応じたそのときである。
「風槍塵!」
霊氣の槍が天空より双翼に舞い降りたのである。
「なっ……!?」
双翼は初めてダメージらしい痛手を受けた。そして、後ろを振り向いた。そこには憎き男の姿があったのである…。

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