特許を取得するための手続き
ご依頼をいただいてから特許を取得するまでの典型的な流れを説明させていただきます。
なお、以下の説明は、初心者の方に概要をつかんでいただくことを旨としておりますので、法律的な厳密さは若干欠いていることをあらかじめご了承下さい。
- ご依頼
お客様のご依頼(委任)によりスタートします。
ご依頼内容をお知らせください。初回の打ち合わせにお伺いいたします。 - 書類作成
初回の打ち合わせ内容、ご呈示いただきました資料に基づいて出願書類を作成します。
出願書類は、通常次の基本セット(正式な用語ではありません、私の造語です)を作成します。作成に当たり、問い合わせや再度の打ち合わせをお願いする場合もありますので、その際はご協力をお願いいたします。
(基本セット)
- 願書:
出願人、発明者の氏名等を記載した書類です。
- 特許請求の範囲:
特許を受けたい発明の(技術的な)範囲を明示するための書類です。
審査の対象を特定するとともに、特許後は権利範囲を確定する役割を持つきわめて重要な書類です。 - 明細書:
特許請求の範囲に記載した発明の課題、詳細な説明等を記載した書類です。
法律が要求する要件を満たすものとする必要があります。 - 図面:
明細書で参照する図面です。法律上は必須ではありませんが、ほとんどの場合作成します。
- 要約書:
発明の名称、課題等を簡潔にまとめた書類です。
- 願書:
- 書類作成
基本セットのほかに、たとえば次のような書面が必要になる場合があります。必要に応じてご案内いたします。
委任状(弊所に初めてご依頼いただく場合)
新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための書面
(学会で発明を発表済みの場合など) - 出願します
書類の作成が完了し、お客様の確認をいただいた後、特許庁に書類を提出します。
もっとも、ほとんどの手続きは、紙ではなく電子データをオンラインで特許庁に送信することにより行います。 - 出願審査の請求をします。
誤解の生じないように、まず、お客様には出願審査の請求をしないという選択肢もあることを最初に申し上げます。出願の日から3年以内に出願審査の請求をしなければ、その出願は取り下げたものとみなされ、審査は行われません(特許権は取得できません)。
したがって、「出願審査請求をするかしないか」「する場合はその時期」をお客様に指示していただく必要があります。
さて、出願審査の請求を行うことになった場合は「出願審査請求書」を特許庁に提出するとともに、料金を納付します。 - 特許庁の審査官が審査をします。
出願審査の請求があると、特許庁の審査官が審査をします。
ただ、請求があってから実際に審査が行われるまでは、かなりの待ち時間があることをあらかじめご承知おきください。
現状では、出願審査の請求から「ファーストアクション」(拒絶理由通知または特許査定)があるまでの待ち時間は26箇月(特許庁「特許行政年次報告書2007年版」による2006年の実績)です。事情によっては、「早期審査制度」を利用することができますので、ご相談ください。 - 多くの場合、拒絶理由通知が来ます。
審査の結果、特許することができない理由(拒絶理由)を審査官が発見すると、弊所宛に拒絶理由通知がきます。弊所では、この通知をお客様に転送します。
審査の結果、拒絶理由がない場合は、Step10に飛びます。 - 拒絶理由通知に対する対応を検討します。
拒絶理由通知に対するお客様の選択肢は大まかには、次のようになります。
対応方針は、基本的にはお客様の意向次第ですが、ご希望の場合には弊所の案を提示いたします。- (1)意見書を提出する
意見書で、審査官の示した拒絶理由に対して反論します。
- (2)手続補正と意見書を提出する
この場合の「手続補正書」は、Step3で提出した明細書、図面を修正するための書類です。特許請求の範囲を減縮することにより拒絶理由を解消できることも多くあります。意見書では、補正の結果拒絶理由が解消したことを審査官に説明します。
- (3)放置する(この時点で権利化をあきらめる)
「(1)では、見込みがない。(2)では、権利範囲が狭くなってしまって意味がない。」「審査請求をした時点から事情が変化し、権利化する必要がなくなった。」といった場合に選択します。
- (1)意見書を提出する
- 意見書、手続補正書を提出します。
Step7で決定した方針に従って意見書と手続き補正書を弊所で作成し、特許庁に提出します。
- 特許庁の審査官が再度審査します。
特許庁の審査官は、意見書と手続補正書を参照して再度審査します。
審査の結果により次の3パターンがあります。- (1)特許査定
審査官が、当方の主張に納得してくれた場合は、特許査定をします。
- (2)拒絶査定
Step6で通知した拒絶理由が解消していないと審査官が判断した場合は、拒絶査定をします。
- (3)拒絶理由通知
Step6で通知した拒絶理由は解消したが、別の拒絶理由が生じた場合、審査官は、再度拒絶理由通知をします。
つまり、Step6からStep9が繰り返されます。
- (1)特許査定
- 特許査定がされます。
Step6で拒絶理由がない場合、または、Step9で拒絶理由が解消した場合審査官は特許査定をします。特許査定がされると弊所宛に「査定謄本」の送達があります。弊所では、これをお客様に転送します。
- 特許料を納付します。
査定謄本の送達があってから30日以内に、特許料(通称「年金」)を納付します。
なお、ここでも「納付しない」という選択肢がありますので謄本の転送の際に「納付するかしないか」のご返答をお早めにお願いいたします。
納付しない場合は、出願が取り下げられたとみなされ、特許権は発生しません。 - 特許権の設定の登録がされます。
特許料を期限内に納付しますと、特許庁の特許原簿に設定の登録がされます。これにより、特許権が発生します。
補足
「拒絶査定」に対する対応
拒絶査定がきても、まだ権利取得のチャンスはあります。
「拒絶査定不服審判」を請求することができます。「審判請求書」を特許庁に提出して審査に違法(誤り)があることを主張します。このとき、拒絶理由通知の際と同様に手続補正書を提出することもできます。
審判を請求すれば、査定をした審査官とは別の審判官が審理をし、当方の主張が認められれば特許査定を受けることができます。
さらに、審判の結果(審決)に不服がある場合には、知財高裁に訴えを提起することもできます。
また、2007年4月1日以後の出願に関しては、「出願の分割」という選択肢もあります。
「出願公開」について
特許出願をしますと通常、出願日から1年6月後に、出願書類の内容が「特許公報」に掲載されて公開されます。公開特許公報は、DVD-ROMで市販されるほか、「特許電子図書館」で誰でも参照することができます。
登録後の手続き
特許料の納付
登録から4年目以降は、登録日を基準として毎年「特許料」を納付する必要があります。
名義変更等の手続き
社名の変更、特許権の譲渡等があった場合には、所定の手続きが必要になります。
放棄の手続き
何らかの事情で特許が不要になった場合には、上記の「特許料」を納付しないことにより権利を消滅させることができます。また、積極的に「放棄」の手続きをすることもできます。
商標登録を受けるための手続き
- ご依頼
お客様のご依頼(委任)によりスタートします。 ご依頼内容をお知らせください。
- 簡易調査
特許電子図書館(IPDL)を利用した簡易調査を弊所にて行います。
これは、今回出願しようとする商標と類似のものがすでに登録されていないかを調べるものです。この調査により、「登録を保証」することまではできませんが、無駄な(はじめから拒絶査定となることがわかる)出願をかなりの割合で防ぐことができます。
弊所では、調査の結果をお客様に連絡し、登録の妨げとなる先登録の商標がある場合には、お客様の判断を仰ぎます。 - 書類作成
簡易調査の結果、出願することになった場合に出願書類を作成します。通常は願書のみです。
願書には、出願人の氏名・住所等の書誌的事項のほか、登録を受けようとする商標と、この商標を使用する商品・役務(サービス)を記載します。 - 出願します
書類の作成が完了し、お客様の確認をいただいた後、特許庁に書類を提出します。
もっとも、ほとんどの手続きは、紙ではなく電子データをオンラインで特許庁に送信することにより行います。 - 特許庁の審査官が審査をします。
特許のように「審査請求」をする必要はありません。出願からファーストアクション(拒絶理由通知又は登録査定)があるまでの期間は、半年から1年程度です。
- 拒絶理由通知が来ます。
審査の結果、登録することができない理由(拒絶理由)を審査官が発見すると、弊所宛に拒絶理由通知がきます。弊所では、この通知をお客様に転送します。
審査の結果、拒絶理由がない場合は、Step10に飛びます。 - 拒絶理由通知に対する対応を検討します。
拒絶理由通知に対するお客様の選択肢は大まかには、次のようになります。 対応方針は、基本的にはお客様の意向次第ですが、ご希望の場合には弊所の案を提示いたします。
- (1)意見書を提出する
意見書で、審査官の示した拒絶理由に対して反論します。
- (2)手続補正と意見書を提出する
この場合の「手続補正書」は、Step3で提出した願書を修正するための書類です。
ただ、特許と異なり、補正の制限は大変厳しいです。特に、商標については事実上修正できませんから、出願の前に十分ご検討下さい。
この場合、意見書では、補正の結果拒絶理由が解消したことを審査官に対して説明します。 - (3)放置する(この時点で権利化をあきらめる)
「(1)、(2)では、見込みがない」「出願をした時点から事情が変化し、権利化する必要がなくなった」といった場合に選択します。
- (1)意見書を提出する
- 意見書、手続補正書を提出します。
Step7で決定した方針に従って意見書と手続き補正書を弊所で作成し、特許庁に提出します。
- 特許庁の審査官が再度審査します。
特許庁の審査官は、意見書と手続き補正書を参照して再度審査します。
審査の結果により次の3パターンがあります。- (1)登録査定
審査官が、当方の主張に納得してくれた場合は、登録査定をします。
- (2)拒絶査定
Step6で通知した拒絶理由が解消していないと審査官が判断した場合は、拒絶査定をします。
- (3)拒絶理由通知
Step6で通知した拒絶理由は解消したが、別の拒絶理由が生じた場合、審査官は、再度拒絶理由通知をします。
つまり、Step6からStep9が繰り返されます。
- (1)登録査定
- 登録査定がされます。
Step5またはStep9で登録査定がされると弊所宛に「査定謄本」の送達があります。弊所では、これをお客様に転送します。
- 登録料を納付します。
査定謄本の送達があってから30日以内に、登録料を納付します。
この際、
- (1)10年分の登録料を一括で支払う
- (2)前半5年分を支払う(割高になります)
の二つの選択肢があります。
なお、ここでも「納付しない」という選択肢がありますので謄本の転送の際に「納付するかしないか」納付する場合には、「10年分か5年分か」の連絡をお早めにお願いいたします。
納付しない場合は、出願が取り下げられたとみなされ、商標権は発生しません。 - 商標権の設定の登録がされます。
登録料を期限内に納付しますと、特許庁の原簿に設定の登録がされます。
これにより、商標権が発生します。
補足
「拒絶査定」に対する対応
拒絶査定がきても、まだ権利取得のチャンスはあります。
「拒絶査定不服審判」を請求することができます。「審判請求書」を特許庁に提出して審査に違法(誤り)があることを主張します。このとき、拒絶理由通知の際と同様に手続補正書を提出することもできます。審判を請求すれば、査定をした審査官とは別の審判官が審理をし、当方の主張が認められれば登録査定を受けることができます。
さらに、審判の結果(審決)に不服がある場合には、知財高裁に訴えを提起することもできます。
「出願公開」について
商標登録出願をしますと通常、出願日から約1月後に、願書の内容が「商標公報」に掲載されて公開されます。公開公報は、DVD-ROMで市販されるほか、「特許電子図書館」で誰でも参照することができます。
登録後の手続き
登録更新の申請
商標登録の存続期間は登録から10年間です。この期間を超えて登録を維持するためには、登録更新の申請をするとともに、次の10年分の登録料(最初と同様に5年分の分割払いも選択できます)を納付する必要があります。更新の申請は、存続期間満了の6月前から行うことができます。満了後6月まで更新の手続きをすることができますが、更新料が2倍となりますのでご注意下さい。
名義変更等の手続き
社名の変更、商標権権の譲渡等があった場合には、所定の手続きが必要になります。
放棄の手続き
何らかの事情で商標登録が不要になった場合には、上記の「更新申請」をしないことにより権利を消滅させることができます。また、積極的に「放棄」の手続きをすることもできます。