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毎日新聞 2013年06月12日
再発した卵巣がんの治療のため、ジフテリア菌由来のたんぱく質を使った薬剤を投与する治験が近く東京大医科学研究所など全国5大学で始まる。11日、同研究所などのチームが発表した。現在、再発卵巣がんに有効な治療法はなく、効果が確認できれば、治療の選択肢が増えると期待される。
国内では、毎年8000人以上が卵巣がんを発症している。手術や既存の抗がん剤では、治療でがんが消えても半数以上が再発している。いったん再発すると治療は難しく、症状の緩和などが中心となっている。
今回、投与される薬剤は「BK−UM」。主成分は、突然変異したジフテリア菌が作るたんぱく質「クリム197」で、毒性は極めて低いという。患者の血液中などには、卵巣がん細胞を増殖させる「HB−EGF」という物質が多く存在する。クリム197は、HB−EGFと結合し、その働きを弱めることが分かっている。
今回の治験は製薬企業が関与しない医師主導で行われ、東京大医科学研究所、大阪大、福岡大、北海道大、東北大が参加する。今月から患者64人を募り、BK−UMと抗がん剤を使った治療をする患者と、抗がん剤治療だけを行う患者とを半数に分け、薬剤の効果を比較する。
BK−UMの安全性を確かめる治験は2007年12月〜11年2月に福岡大で患者11人に行われた。2人で腹痛などが一時的に表れた。6人で症状の悪化が抑えられたがそれ以外の人では効果がなかった。【藤野基文】
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