4.(5)戦場の再会
7:14
PM Mar 30th mobile webから |
「戦術において私の上をゆく将軍が帝国にいるとは思わなかった。どんな将軍か見てみたい。」将軍は、そう言うと、数名の兵士を連れて帝国軍四個師団の中心めがけて走り始めました。 |
8:28
PM Mar 30th mobile webから |
帝国軍兵士は束になって、迫り来る将軍達の突進を止めようとしますが、まるで無人の野を行くように、将軍達は速度を落とさず、目の前の敵を切り捨てながら、帝国軍を指揮している若者の前にたどり着きました。若者は皇帝から許された三兄弟の二番目の兄です。 |
9:53
PM Mar 30th mobile webから |
将軍にとって、そこにあるのは旧知の若者の姿です。「セレンディップ王の第二王子。まさか、貴殿がここにいるとは。貴殿であれば、納得がいきます。教え子が立派に成長したことは嬉しく思います。」 |
10:46
PM Mar 30th mobile webから |
若者は、かつて教えを受けた教師に対し応えます。「あなたに教えて頂いた通りのことをしただけです。あなたの戦術は全て先読みすることができました。先生に対し恩をあだで返すことになり申し訳なく思っています。」 |
11:38
PM Mar 30th mobile webから |
「今回の敗戦は、私の油断が招いたものです。帝国には、貴殿のような、優れた指導者がいるはずがない、と思いこんでいました。こんな年になっても、まだまだ成長の余地が残っていることを気付かせてもらえたと思えば、敗け戦さも糧になります。それでは。」 |
12:37
AM Mar 31st mobile webから |
将軍の一隊は、王子の元を去り、峡谷に向かって走り続けました。その勢いのまま、断崖絶壁に思える峡谷の崖を駆け下りていきます。帝国軍の追っ手は崖にひるみ誰一人として下りようとしませんでした。 |
1:49
AM Mar 31st mobile webから |
三兄弟の父、セレンディップ(現在のスリランカ)の国王は、息子達の教育に力を入れ、世界中の高名な学者や指導者を家庭教師として雇い入れました。エフタル国の高名な将軍も短期間ではありましたがその家庭教師の一人です。 |
2:39
AM Mar 31st mobile webから |
エフタルの将軍は、第二王子に軍事的な才能を認め、特に熱心に指導しました。将軍が去り、他の家庭教師もその役目を終えつつある時、セレンディップ王は、一計を案じます。 |
7:10
AM Mar 31st mobile webから |
王の身を気遣い、祖国を離れようとしない息子達に、身分を隠して他国での見聞を広げらるよう、言いがかりをつけ、国外へ追いやりました。 |
11:00
AM Mar 31st mobile webから |
王の身を気遣う気持ちは変わりません。ただ、今まで学んできたことを、実際の体験として、身につける機会が与えられたのです。そのことは素直に喜びながら、三兄弟は旅立ちました。 |
12:17
PM Mar 31st mobile webから |
さて、崖を下る直前、将軍は、視界に入った老いたラクダを見ると、少し考えた後、そのラクダを連れて行くよう部下に指示を与えました。将軍の一隊は、二手に分かれ、あらかじめ調べ尽くしていたルートに沿って岸壁を下りました。 |
1:26
PM Mar 31st mobile webから |
将軍のいる方は人が下るルートを、もう一方は、ラクダを連れていたため、騎馬で下る為のルートを辿ります。いずれもあらかじめ調べていなければ進めない道であり、追っ手を拒む道です。ところが、崖を下りる途中、おびえたラクダが暴れ出し、足を滑らせ川面に落ちてしまいました。 |
2:50
PM Mar 31st mobile webから |
側近の息子は、帝国軍に捕らえられ、帝都での裁判にかけられることになります。戦闘の混乱の中、彼は、捕らわれた人々に近づくことができませんでした。けれども、自らが捕らえられ、連行される際に、今は解放された人々の近くを通り過ぎます。 |
4:16
PM Mar 31st mobile webから |
人々に背を向け、騎乗で連行される彼に聞こえる、聞き慣れた女性の声が、叫び声になり、遠ざかっていきます。 |
6:21
PM Mar 31st mobile webから |
一方、セレンディップの第二王子は、敵国エフタルの高官と戦後処理を進めます。今回の出来事が両国民の新たな憎しみの種とならないよう、大きな勝利という名誉をとり、実質としては大きな譲歩を行いました。 |
8:25
PM Mar 31st mobile webから |
捕らわれていた帝国の民の解放は、今回の戦闘で捕虜となった大量の敵国兵士との捕虜交換協定に基づき行われたことにしました。これにより両国の名誉は守られ、この事件が新たな紛争の種となることはありませんでした。 |
9:38
PM Mar 31st mobile webから |
少し時間を戻します。エフタル領内、国境近くの野営地で、荷袋を何度も確かめた後、将軍が部下につぶやきます。「やはり、ラクダか。ここに地図はない。手遅れかと思うが、下流でラクダを探しなさい。」 |
10:08
PM Mar 31st mobile webから |
峡谷からはるかに下流に下った第三国領の川岸にラクダの亡骸が打ち上げられています。頭部には一匹のカラスがとまっていて、ラクダの右目をつついています。それは、妊婦を乗せていた年老いたラクダの変わり果てた姿でした。 |
10:35
PM Mar 31st mobile webから |
からすが飛び去った後を見ると、今までずっと閉じられていた右のまぶたが今は大きく開かれています。そこには、埋め込まれていた義眼が、朝日に照らされ、鏡のように光り輝いていました。 |
10:45
PM Mar 31st mobile webから |
つづく |
11:20
PM Mar 31st mobile webから |
つづきません。 |
11:42
PM Mar 31st mobile webから |
一応、とても忙しいはずのビジネスマンをやっているので、これにのめり込みすぎると、明日から始まる来期の成績が危ぶまれます。 |
11:52
PM Mar 31st mobile webから |
ほどほどにします。 |
私の妄想力のせいで、すっかり別のお話になっていますが、一応出典を記載しておきます。 偕成社文庫・竹内慶夫編訳・『セレンディップの三人の王子たち〜ペルシアのおとぎ話〜』・2006年10月 このお話と『セレンディピティ』についての解説は次の章にアップします。 |
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アップロード日 2010.10.11