4.(4)砂嵐の魔法
9:27 PM Mar 29th mobile webから |
五日後、大きな砂嵐が始まりました。側近の息子は砂嵐の中、荷物だけを載せたラクダと峡谷の岸壁から少し離れた場所で佇んでいます。砂嵐で全てが見えなくなる直前、今まで見たことの無い数の敵国の軍隊が対岸に集結している様子が、かすみながらも見えました。 |
10:38 PM Mar 29th mobile webから |
それから半日、砂嵐の音に負けない大きな音を立てながら、敵軍は何かをしています。音がしなくなってしばらくすると、こちら側の岸壁に多数の敵国の軍隊が現れました。大きな音は敵国軍の工兵が峡谷に無数の橋を掛ける工事の音でした。 |
12:35 AM Mar 30th mobile webから |
砂嵐の中、側近の息子は、こちら側に現れた敵国の将軍に語りかけます。「なぜ、こんな大規模な軍隊を連れてきたのですか。」「あなたを信用しない訳ではありませんが、万が一あなたが裏切った場合、帝国軍と戦うには最低限の兵力です。今、捕虜と捕らわれた奴隷達が橋を渡っています。」 |
3:05 AM Mar 30th mobile webから |
「奴隷などと呼ぶな。」 |
3:13 AM Mar 30th mobile webから |
「.....そうですか。お知り合いがいらっしゃるということですね。失礼しました。捕らわれた人々は間もなくここに到着します。」「帝国の地図は仕掛けがしてあり、読む人を選ぶと聞きます。貴殿には、しばらくわが都で過ごしていただくことになります。」「承知しています。」 |
7:30 AM Mar 30th mobile webから |
「ところで地図はどこですか。」「このラクダに積んであります。ラクダとともに貴国へ参りましょう。」「その荷袋のバターと蜂蜜に浸してあるということですか。ご苦労されたのですね。」ラクダの荷袋の隅には、風に飛ばされないようしがみついている蟻と羽虫が見えます。 |
7:59 AM Mar 30th mobile webから |
この地方の常の通り、砂嵐は西側から止み始めました。峡谷側を向いている側近の息子は気が付きませんでしたが、峡谷を背にして西を向いている敵国の将軍はすぐに気が付きました。 |
9:13 AM Mar 30th mobile webから |
「やはり裏切りましたね。」 |
11:15 AM Mar 30th mobile webから |
側近の息子は、何のことか分からないまま、とっさに振り返りました。そこには、四個大隊規模の帝国軍が進軍してきている姿がうっすらと浮かび上がってきています。「私は何も知らない。」「その様子では、あなたの言葉は真実なのでしょう。荷袋だけいただいて行きます。」 |
12:46 PM Mar 30th mobile webから |
敵将軍は刀で荷袋をラクダから切り離し、持ち去っていきました。「想定の範囲です。四個大隊であれば、瞬時に蹴散らすことができましょう。」敵国軍は二個師団規模です。あまりにも戦力に差があります。帝国軍は敵軍に気が付き、一歩も動かず、敵軍の攻勢を受け止める用意を始めました。 |
1:41 PM Mar 30th mobile webから |
「楽勝だ。全軍進め!」将軍は勢いよく二個師団を帝国軍四個大隊に向かわせました。帝国軍は良く守りましたが戦力の差は歴然としています。壊滅寸前の帝国軍兵士達が峡谷の対岸を見つめたとき。東の砂嵐が止み始めました。 |
2:07 PM Mar 30th mobile webから |
砂のもやが徐々に晴れる中、帝国軍兵士がそこに見たものは、用心深い将軍が念のために残しておいた一個師団の敵国残留部隊ではなく、その残留部隊を打ち破ったばかりの帝国軍四個師団です。「対岸に帝国の軍旗がはためいている。」 |
2:49 PM Mar 30th mobile webから |
壊滅寸前だった帝国軍四個大隊は勢いづき、反転攻勢にでます。他方対岸の帝国軍は将軍が作った橋を渡り怒濤のようにこちら側の敵国軍二個師団めがけて攻め上がってきます。「岸壁から離れすぎた。」将軍は悔しそうにつぶやきます。 |
4:12 PM Mar 30th mobile webから |
将軍は、もやが晴れた峡谷を見回して全てを理解しました。帝国軍は5キロ下流に将軍が作ったものと同じ橋を無数に作り、将軍の軍隊を挟み撃ちにすべく峡谷を渡っていたのです。西に戦力を残しながら、東に倍の数の勇猛な帝国軍を迎え撃たなくてはなりません。 |
4:52 PM Mar 30th mobile webから |
ここに至り、将軍にとっての課題はどのように負けるかです。劣勢な兵力ながら、名誉ある戦いを繰り広げた後、将軍は、降伏する手はずを副官に授けました。 |
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アップロード日 2010.10.11