1.(5)共感の表現方法としての論理(Bさんの回答:ゲーム理論)
Bさんの回答は、少し表現が違います。 感じていることは恐らくCさん、Dさんと同じだと思います。 同じ気持ちをどのように表現するかが異なります。 人の多様性というのは面白いなと思います。 |
送信者: Bさん 日付: 2010/01/19 06:53 PM
宛先: 山田
cc:
bcc:
件名: Re: 当事者意識:補題1
山田さん
お疲れ様です。
遅くなりましたが補題1への回答をお送りいたします。
拙い文章で恐縮ですが、ご確認お願いいたします。
補題1への回答
◇結論
1.病院に対して、母への適切な措置を条件に本件投薬の過剰投与に関し口外しない旨伝える。
併せて、母を救えなかった場合には、病院に対して責任追及を行う考えがあることを伝える。
2.病院に対して母の入院費用相当額を請求。
3.病院側の過剰投与を口外しないように家族(母を含む)への説明・説得は、私が責任を持って行う旨病院側に説明。
◇理由
まずは、登場人物の各々の立場に応じて考えてみる。
・母親:過剰投与の原因追及は後回し。とりあえずは危篤からの復活を望む。
・病院:適切な措置を行うべきであるという考えはどこかしらにあると思うが、過剰投薬に関しての責任追及されるかどうかに焦点あり。
・叔母:母の意識回復を望む。危篤状態にした病院への原因・責任追及。
・自分:母の意識回復を望む。危篤状態にした病院への原因・責任追及。
私の考える最優先事項は母の回復であるが、急変という状況を考えると他の病院に移すよりも、地域ナンバーワンの当該病院で行う治療の方が危篤状態から救う可能性は高いと考える。
病院側の立場で考えると、過剰投薬による責任追及を懸念しているため、適切な措置を行うことで、患者の急変を認めることに対して抵抗あり。
そのため、抵抗感のある病院に対して適切な処理をしてもらうような働きかけが必要になる。
◇病院への働きかけ
病院側の立場で考えると、過剰投薬に関しての責任追及が懸念材料であり、下記条件提示を行う。
条件1:母への適切な措置を条件に本件投薬の過剰投与に関し口外しない旨伝える。
条件2:併せて、母を救えなかった場合には、病院に対して責任追及を行う考えがあることを伝える。
条件3:しかしながら、病院側の立場からすると、本当に口外しないかが心配である。そこで、病院側を信用させるために金銭(本件の場合は入院費用相当額が妥当と考える)を支払うように要求する。
◇家族(母・叔母)への働きかけ
母・叔母の立場で考えると、例え危篤状態から回復したとしても当然に病院側の責任を追及したいという思いがあるため、本件条件提示含む対応が、母を救うために必要な条件であった旨説明し、家族を説得する。
以上
こういう議論は、無限の選択肢があるように思えてしまうので、どのように評価するか、とても難しいと思う方も多いことでしょう。 Bさんは、問題設定を病院との交渉ということに絞っています。 交渉ごと、争いごとには、形(かた)があります。囲碁や将棋、チェスで言えば定石(定跡、セオリー)です。 まずは、定石を覚え、定石で説明がつくこと、定石から逸脱していることを整理します。 次の私の解説は、定石といえば言いことを、ちょっとハイカラな感じで語っています。 |
送信者: 山田 日付: 2010/01/20 02:40 AM
宛先: Aさん Bさん Cさん
cc:
bcc: Dさん E先輩 F先輩 G先輩
件名: Re: 当事者意識:補題1
Bさんの回答です。
[省略 上記メールの通り]
【解説】
大変想像力を発揮してくれた回答だと思います。
結論を先にするというアイデアも面白いと思います。
昔H社とI社(どちらも飛び込み営業)の契約をしたとき、H社の総務部長あての最初のプレゼンでその戦略をとり、好感を得ました(企画書の最後のページから説明を始めました)。
上記「◇理由」にある各登場人物の立場をそれぞれ分析するやり方も問題解決(ソリューション)発見ノウハウとして優れたものです。
ぜひ前回の勉強会で教えたマインドマップを作ってみて下さい。(中心に「母の回復」と書いて回りに各人の立場を配置します。物事を重層的にみることができ、それだけで問題点や解決策が見えてきます。文章は単線ですからね。)
Bさんの回答はゲーム理論を無意識に適用しています。
まず「理由の各人の立場」においてゲーム理論でいう「利得」を検証しています。各人にとって何が利得になるかを確定し、利得の極大化の前提条件を確認しています。
上記「◇結論1」は、ゲーム理論でいう「脅し」戦術です。脅しという日本語の語感と異なり、むしろだだっ子がおもちゃを買ってもらう弱者の戦術です(強者は実力で勝てるのでこの戦術は不要です)。補題1では病院は強者の立場ですので、弱者である「あなた」がとる戦術として間違っていません。
脅し戦術を使うためには「先読み」が必要です。将棋の棋士が何手先も読むやつです。先読みを検討するツールに「ゲームの木」があります。更に脅しを行うために「バックワードインダクション」という手法を使います。ここで説明するのはつらいのでAさんに買ってあげたゲーム理論の入門書をみんなで読んでみて下さい。
「◇結論1」はゲームの木を使ったバックワードインダクションにより導き出せるものです。
「◇結論1」によりゲーム理論における「ナッシュ均衡」が達成されます。(映画『ビューティフルマインド』のモデルのナッシュさんの理論ですね。)
「◇結論2」は、1とは別の利得を導入し別のナッシュ均衡を作り出すものです。これにより、結論1の均衡を確実にするというものです。但し、「あなたの」金銭の受け入れを利得0、喪失をマイナス、病院の金銭給付を利得0、回収をマイナスとする非常に難しい高等戦術になっています。
「◇結論3」は、家族に上記ナッシュ均衡による利得の極大化を説明するという作業を行うということを言っています。ナッシュ均衡であることが分かっていれば適切な説明ができるはずです。
みなさーん!付いてきてますか?
要するに、Bさんが、ゲーム理論で得られる正しい推論過程を無意識に使っているということは、補題1をものすごく良く考えたということです。
残念ながら仕事上、一つの問題にこのようにじっくり考える時間はないため、無意識では間違った結論になりがちです。
ぜひゲーム理論の考え方を身につけて下さい(ゲームの木、バックワードインダクション等のツールを使えるようになってください。)。
今回の補題1へのBさんの回答を、上記のようにゲーム理論で再構成することが、ゲーム理論への入門として面白いと思います。
ここには出てきませんでしたが私の大好きな「チキンゲーム」も覚えて下さい。
(今回からbccに入られた方、突然すみません。 こんなことをやっています。ぜひ感想を送ってください。)
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アップロード日 2010.09.26