少年「ジョークは良いね。ジョークは心を潤してくれる。リリンの生み出した文化の極みだよ。さう感じないか、碇シンジくん」
シンジ「僕の名を?」
少年「知らない者はゐないさ。失禮だが、君は自分の立場を少しは知つた方が良いと思ふよ」
シンジ「さう、かな? ……あの、君は?」
少年「僕はカヲル。渚カヲル。君と同じ、仕組まれた子供だよ。フィフス・チルドレン」
シンジ「フィフス・チルドレン? 君が? あの……渚、くん?」
少年「カヲルでいいよ。碇くん」
シンジ「僕も、あの、シ、シンジでいいよ」
笑顏を返す少年。
湖畔でただ見詰め合ふだけの二人。
湖面に波が立ちはじめる
降下してくる數機のVTOL。少年を圍むやうに圓陣を組んでゐる。
少年「洒落のわからない、不粹な御迎へだね」
少年「ぢやシンジくん、死んじまへ──ッて、こいつはいきなり寒すぎるダジャレだつたかな?」
周邊を一瞬、沈默が支配した。
少年「さう云ふ譯だ、ぢや、また!」
水邊を歩きながら、妙に元氣さうな樣子で明るく去つて行く少年。
ただ唖然としてゐるシンジ。
シンジ「君のギャグセンスはわかんないよッ! カヲルくん」
モニタされてゐるシンジとカヲルの二人。
冬月「あと、0.3下げてみろ(何を?)」
伊吹「はい」
カヲルが斷トツの(何が?)モニターグラフ。
冬月「このデータに間違ひはないな?」
日向「全ての計測システムは正常に作動してゐます」
伊吹「マギによるデータ誤差、認められません」
冬月「よもや、コア過ぎるネタに走つてシンジとシンクロするとはな。この少年が」
シンジとリンクしてゐる少年(あああ)のモニタ圖。
に、驚愕の伊吹の臺詞。堰を切つたやうに──
伊吹(off)「しかし、シンジくんがこんな事を……信じられません!」
冬月「えーと、それは良いとして(何が?)、まあこの手の話は良くある事ぢやないか」
伊吹「いえ、システム上(何の?)、あり得ない筈です」
ミサト「でも、事實なのよ」
眞顏のミサト。
ミサト「事實をまづ受けとめてから、原因を探つて」
モニタ内。屈託のない少年の微笑み。
伊吹「不潔……」(おい)
長大なエスカレータ。
の、上のレイ。(昇り)
エスカレータの出口に立つ少年越しにレイが姿を現す。
輕い驚きのレイ。
少年「君がファースト・チルドレンだね」
答へないレイ。
少年「綾波レイ」
答へないレイ。
少年「君は僕と同じだね」
レイ「あなた、誰?」
少年「君がゐて、僕がゐる」
レイ「だから、何?」
エスカレータだけあつて、階段落ち(大違)。