「もとい」は「やり直しや訂正をする時の號令」ですが、動作のやり直しは出來る場合と出來ない場合があります。動作を始めてしまつたら、最うその動作の取返しはつかないのであつて、「もとい」と言つて命令を取消す事は出來ません。訂正出來るのは、動作を開始する前の豫告的な號令だけです。
「前へ進め」「右へ曲がれ」等の號令を掛ける時、號令者は大概、一氣に言ひはしません。「前へ」「右へ」と豫告したあと、「進め」なり「曲がれ」なりの動作開始を指示します。
この豫告的な號令を「豫令(予令)」と言ひ、實際に動作に移る際の號令を「動令」と言ひます。「もとい」で訂正し、やり直せるのは「豫令」だけです。
「豫令」「動令」の事について教へて下さつたのは自衞隊の隊員の方で、「もとい」の使ひ方について、次のやうな例を示して下さつてゐます。
最初のは、まだ「左へ進む」動作を始めてゐないので、「左」を「右」へ訂正出來ます。次のは、既に「左へ進む」動作を始めてしまつてゐるので、號令者はあらためて元の態勢に戻る號令を掛けなければなりません。
自衞隊の「基本教練教範」には、補助的な號令として「もとい」が今も載つてゐるさうです。教へて下さつた自衞官の方は、「もとい、といふ言葉はなーい!」と教官に怒られたさうで、正しくは「元へ」であると認識されてゐるやうです。
余談ですが、幻のラジオ体操第3は、自衛隊体操そっくりだったりします。
との情報もいただいてをります。が、こちらの件は未調査。何か情報を御存じの方は御一報を。