言ひ間違ひを訂正する時良く使ふ「もとい」。この語の解説が辭書に載つてゐない。「元へ」は載つてゐるし、「もとい」とも言ふ、とはあるが、肝腎の「もとい」が項目として立つてゐる辭書が手許にない。
それで、「もとい」の正しい歴史的假名遣の表記がどのやうなものなのか、について、確かな事が言へない。
「元へ」の意味で「もとゐ」とやるのは、明かに誤用であるのですがねえ。
(體操などで)やり直しをする時にかける言葉。もとい。
=もとい。
- 體操などでやりなほしを命じるときの語。
- 言ひ誤りに氣附き、訂正するときの語。
正かなでも「もとひ」より「もとい」の方がよろしいのか知らん。
……と云ふ譯で、わからなくなつたので、「闇黒日記」で公開調査依頼をしてみました
例によつて色々な方法で御囘答を頂戴出來れば、と。
その色々な方法
で、囘答を頂戴しました。
- もと-い1 (基)<もとゐ>
- 建物の土台。いしずえ。転じて、物事の根本、基礎。『国の基を築く』
- もと-い2 (元い)<もとい>
- [感動]「もとへ」の変化した語。
- もと-へ (元へ)<もとへ>
- [感動]言い直し、やり直しをするときに言う言葉。旧軍隊で号令として用いた。もとい。
イ音便につき發音通り、といふことでせうか。
さて、暇だったので本屋でいろいろと辭書を漁ってみました。調べた項目は三つ。
- 「もちいる」の正假名
- 「もとい」の正假名
- 「もとい」に關聯して「もとへ」の説明
で、十数册調べてみましたが…先づ、「もちいる」については、二册だけ「もちゐる」「もちひる」兩方を示してゐた。他は全て「もちゐる」のみ。「もとい」の項目が立ってゐる辭書は殆ど無い。「もとい」の項目がある場合、正假名は全て「もとい」しか示されてゐなかった。「もとい」の項がない場合、「もとへ」の項に
もとい、ともと云ふ記述があるのが普通。尤もその場合正假名までは示されてゐない。敢へて言へば岩波の辭書で「もとへ」の項に
實際には「もとい」(と聞こえる場合)が多いとあったのが、多少「もとひ」を不可とする根據とならなくもないやうに感じた。が、矢張り詳細は不明の侭である。因みに、「もとい」「もとへ」どちらの項も立ってゐない辞書も一册在ったことを附しておく。
「もちいる」は別項を立てます。
「音便」である、と考へれば、正かなでも「もとい」でよろしからう、と云ふ結論です。いろいろ調べて下さつたみたいで、ありがたうございます。
あと、「元」一字で「もとい」と讀ませる、といふ手もありますが。
まあ、漢字に逃げると云ふのは正かな使ひの常套手段だつたりしますが、それでは結論にならないので却下、と云ふ事で。
- もと-へ【元】
《感動》いい直し、やり直しをする時にいうことば。特に軍隊で慣用的に使われ、現代では体操などで、もとの状態にもどるときの号令として用いる。もとい。- もと-い【元】
《感動》「もとへ(元)」に同じ。- もと-へ【元へ】
《感》((旧軍隊用語))[1]体操などで、もとの姿勢にもどることを命令する語。もとい。[2]言いまちがえて訂正するときに発する語。もとい。- もと-い【元い】
《感》「元へ」に同じ。- もと-へ【元へ】
《感》(元の状態に戻る意)(1)体操などで、やり直しをする時にかける言葉。(2)言い直しをする時に発する言葉。- もと-い【元い】
《感》モトヘの訛。- もと-へ【元へ】
(感)=もとい。(1)体操などでやりなおしを命じるときの語。(2)言い誤りに気付き、訂正するときの語。- もと-へ[2]【元へ】
(感)〔旧軍隊用語から。「もとい」とも〕(1)体操などで、いったん取った姿勢などをもとの状態にもどす時にかける号令。直れ。(2)前言を取り消して言い直しをする時の語。もとい。- もと-い[2]【元い】
(感)「もとへ(感)」に同じ。此れらの内容から解る事は、大体次の事でせう。
- 元々は、軍隊の号令からこの語が生じた。
- 今でも体操などで、前の状態に戻る為の号令として使はれてゐる。
- 上記の意味から転じて、言誤りを訂正する為にも使はれてゐる。
- 「基(もとゐ)」とは意味も仮名遣も違ひ、正かなではもとへがイ音便に依りもといとなる事。
結局、どの辞書を引いてみても正かなはもといでいい事になりますね。因みに、「新編 大言海」冨山房には載つてゐませんでした。歴史の浅い言葉と云ふ事なのかな。
と云ふ譯で、「もとい」としか辭書に出てゐないのは、それで十分だから、と云ふ結論を出して良いみたいです。
大山鳴動鼠一匹。
「もとい」に關するメールを頂戴してをります。どうもありがたうございます。
と云ふ譯で、情報追加。