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第19回 はつこい
はじめに
いよいよ、クリスマスが間近になりました。街はイルミネーションで彩られてますし、ショーウィンドウなんかも、クリスマスカラーで華やかになっています。で、耳にはいろいろなクリスマスソングが流れこんできて…。一年のうちでも、一種独特の雰囲気を持った時期が今ですね。
そういう時にぴったりな曲を、雅弓さんのほうでもいろいろと歌っていますが、今回は、その中のひとつ、「はつこい」について、いくつか書いてみようかな、と思います。
クリスマスソングのタイプ
「クリスマスソング」って言ったら、「この聖なる夜に、あなたと一緒に過ごしたい」ってのが、一番多いパターンでしょう。まーちゃんだって、そういうのも歌ってますし(例:「X'mas time Hold me tight」)、他のところに目を向けても、探すまでもなくいくらでも出てきます。
で、次に多そうなのが、「あの頃は君がいたのに…寂しいよ」ってやつ。こっちもそんなに探すのには苦労しませんね(例:「メリークリスマスが言えない」稲垣潤一)。
あるいは、「君には会えないけど、この特別な時に、君を想うよ」ってのも結構ありますかね(例:「雪に願いを」槙原敬之)。
いずれにせよ、曲中の「今のクリスマス」で、「現実に起こっている事や感情」を歌っているってことは共通してます。だから、「クリスマスソング」を聞いて、一番強烈に残るのは、「ああ、クリスマスなんだな」ということろになるわけで。
一種独特なクリスマスソング
でも、この「はつこい」っていう曲の場合、多分聞き終わったときに浮かぶのは、「クリスマスなんだ」ってことではないと思います。じゃあなんだっていうと、「そういう頃があったよな」って気持ちじゃないでしょうか。
この曲は、「今のクリスマス」をきっかけに、「遠いあの頃のクリスマス」に「起きたこと、気持ち」をうたっている歌ですよね。だから、「クリスマス」なんてのはきっかけ、あるいは背景にすぎませんし、感情のほうでも、もう自分の中で整理がついていることだから、痛みや寂しさを感じないで、暖かさや懐かしさを感じるものになっているんだと思います。
そういうふうに考えると、この曲、「クリスマスソング」にしては相当独特なものがあります。作詞の枯堂夏子先生の、面目躍如というところでしょう。
「恋」とは何ぞや−枯堂流恋愛論−
さて、この曲に出てくる二人なんですが、なんかすごく淡い気持ちのままで終わってますね。しかし、作詞の枯堂先生に言わせると、この曲の状態こそが「恋」なんだ、ということになります。相手のことを意識してぎこちなさがあったり、何かのきっかけで傍に行くことさえもできなくなってしまったり……。こういうとき、つまり自分の気持ちがよく分からないのに、相手のことを意識して緊張してしまうような時こそが本当の「恋」なんだ、といろいろなところで枯堂先生は言っています。
だから、この曲の二人が仮に進展して、自他共に認める「恋人と呼ばれたとき もうそれは恋じゃない」ってことになるそうです。ところが、大半の人は、そうしたあいまいな緊張状態に耐えられず、「恋愛関係」に移行してしまう。そうすると、「恋」にだけあるあいまいな緊張状態が消えてしまい、「関係」が残る。つまり、世の大方の人間は本当は「恋」なんてしていない…。っていうのが、枯堂夏子先生の恋愛論なんですね。
そういう論理に基づいて書いているから、この曲における二人は、一般的に見ればごくごく淡い状態のまま終わっているように見えるわけです。この論理の正否はともかく、この視点で書かれたこの曲が、淡くて甘いいい雰囲気を持っていることは、否定できる人はそういないんじゃないでしょうか。
最後に
えー、実は今回、クリスマスソングの紹介よりも枯堂流恋愛論の紹介がメインの目的でした(笑)。ま、いいでしょ。この曲のタイトルは「はつこい」なんですから。
もし、枯堂流恋愛論に興味をもって、いろいろ聞いてみたい方は、以下のアルバムをどうぞ。
・「万謡集〜枯堂夏子作品集〜 白・黒・抹茶」
・横山智佐「恋愛の才能」
・折笠愛「淑女超特級」
・折笠愛「ROOM SERVICE」
ただし、昔のアルバムなんで、入手可能性についてはちょっと分かりません。
こっちだけじゃなんなので、僕が好きなクリスマスソングをいくつか…。
・「CHRISTMAS TIME FOREVER」(サザンオールスターズ アルバム「世に万葉の花が咲くなり」)
・「Oh! ダーリン」(渡辺美里 アルバム「tokyo」)
・「SNOW CRYSTAL」(藤井フミヤ アルバム「シングルス」)
その他諸々…。
さらに、初恋の歌もいくつか…。
・「First Love」(藤井フミヤ アルバム「TEARS」)
・「初恋」(渡辺美里 アルバム「BABY FAITH」)
こんなところですかね。なんか偏ってるのはお許しを(笑)。
たまにはこういう曲の聞き比べなんかも面白いと思いますよ。
さて、次なんですが。年始恒例(っていっても去年からだけど)の飯塚雅弓バースデーライブが1月3、5、6日に行われます。その内容は例によってイベントレポートでのアップです。こっちでは、こういう時なんで、やっぱりこの曲にいきましょう。「あなたが生まれた日」です。1月6日に更新します。
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