バドミントン選手における上肢の等速性筋力特性について

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研究の概略

●被検者:全日本チームに属する選手を含む大学男子バドミントンプレーヤー10名
●等速性筋力測定:Biodex Isokinetic Dynamometer(バイオデックス)を用い,椅座位の状態で等速性運動での上肢の最大筋力を求めた.動作様式:肩関節の外旋/内旋,肘関節の屈曲/伸展,前腕の回外/回内,負荷:角速度は60,180,240 deg/sec,測定項目:ピークトルク,体重あたりのピークトルク,利き側/非利き側比,主動筋/拮抗筋比

要約
 本研究は全日本チームに属する選手を含む大学男子バドミントンプレーヤー10名を対象に,上肢の等速性筋力特性について検討した.
 肩関節の内旋運動は利き側が非利き側に比べて有意に高いピークトルクを示した.内旋運動でのピークトルクは,外旋運動でのそれに比べて高い値を示した<★フォアハンドがバックハンドよりも強かった★>.外旋/内旋運動比は各負荷(60,180,240 deg/sec)とも利き側が非利き側に比べて有意に低い値を示した.
 前腕の回外運動では利き側と非利き側に有意な差はなかったが,回内運動においては60 deg/secと180 deg/secで利き側が非利き側に比べて有意に高いピークトルクを示した<★フォアハンドがバックハンドよりも強かった★>.
 肘関節の伸展運動では利き側が非利き側に比べて各負荷とも有意に高いピークトルクを示したが,屈曲運動では差はなかった.屈曲/伸展運動比は各負荷とも利き側が非利き側に比べて有意に低い値を示した.
 以上のことから,バドミントン選手は利き側における上腕の内旋筋力および肘関節の伸展運動がその拮抗筋となる外旋運動および屈曲運動よりも強いことが示唆されたが,前腕の回外筋力と回内筋力には大きな差はなかった.

専門用語の説明
●等速性運動:筋運動のひとつで,関節の可動域全般にわたって同じ速度で筋肉が収縮する
●上肢:いわゆる腕といわれる,肩から手の先までの部位
●上腕:肩関節から肘までの部位
●前腕:肘関節から手首までの部位
●内旋:上腕の内ひねり,外旋はその逆
●回内:前腕の内ひねり(手の平から手の甲への運動),回外はその逆
●屈曲:肘を伸ばした状態から曲げる運動(力こぶができるような運動),伸展はその逆
●回内と内旋:バドミントンでフォアハンドストロークの中心となる関節運動
●回外と外旋:バドミントンでバックハンドストロークの中心となる関節運動