バドミントン競技における素振り運動の運動強度

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研究の概略

●被検者:全日本ナショナルチームに属する選手を含む大学一流競技選手5名
●運動測定:最大酸素摂取量(自転車エルゴメータ運動)極大酸素摂取量(腕クランキング運動),脚運動の換気性作業域値,最高心拍数,最大血中乳酸値
●素振り運動:素振り運動は被検者が椅座位をとり,オーバー・ヘッド・ストロークを行った.素振り運動はフル・スイングとした.素振り運動の頻度は1秒1回で行い,10秒間の作業期のあと,10秒間の休息期を設定し,15分間行わせた.測定項目:酸素摂取量,心拍数,血中乳酸値

要約
 本研究は,バドミントン競技において全日本ナショナルチームに属する選手を含む大学一流競技者を被検者とし,オーバー・ヘッド・ストロークによる素振り運動について,心拍数,酸素摂取量,血中乳酸値を指標として運動強度の検討を行った.
 脚運動による最大酸素摂取量は4.0 l/min,体重あたりの値は58.5 ml/kg/minであった.最高心拍数は199 beats/min,疲労困憊直後の血中乳酸値は7.6 mmol/lであった.腕クランキング運動による極大酸素摂取量は2.7 l/min,体重あたりの値は39.7 ml/kg/minであった.極大心拍数は190 beats/min,疲労困憊直後の血中乳酸値は10.7 mmol/lであった.
 素振り運動中における酸素摂取量の平均値は1.9 l/min,体重あたりの値は28.0 ml/kg/minで最大酸素摂取量の49.0%,極大酸素摂取量の71.5%を示した.心拍数の平均値は136 beats/minで,最高心拍数の68.3%であった.素振り運動中の極大心拍数は165 beats/minで最高心拍数の83.3%を示した.素振り運動直後の血中乳酸値は3.3 mmol/lであり,脚運動での疲労困憊時の43.7%,腕クランキング運動での疲労困憊時の31.0%であった.
 以上のことから,バドミントン競技のオーバー・ヘッド・ストロークによる素振り運動は,片腕の作業であり,活動筋量が少ないと考えられるが,酸素摂取量と心拍数の面からみると両腕で行うクランキング運動の71.5%,71.8%,脚運動による最大運動の49.0%,68.3%に相当することから,素振り運動強度は高い傾向を示すものと思われる.心拍数は,10秒間の休息期では,ほとんど低下せず,運動の継続とともに心拍数が増加していくものと考えられる.血中乳酸の面からみると運動強度は低い傾向を示したが,このことは,間欠的運動の特徴を示すものであろう.

専門用語の説明
●運動強度:その運動の生理的なしんどさ
●最大酸素摂取量:1分間にどれだけたくさんの酸素をからだの中に取り込めるか,全身持久力の指標
●極大酸素摂取量:最大酸素摂取量とほぼ同じであるが,全身運動ではない運動で最大能力を測定したときに用いる
●腕クランキング運動:自転車のペダルを腕で漕ぐ運動
●血中乳酸:疲労の指標とされる