男子バドミントン競技の運動強度

[中谷のホームページへ] [バドミントンの生理学的研究へ]
研究の概略

●被検者:全日本選抜チームに選出された選手を含む男子一流選手7名
●最大運動測定:最大酸素摂取量,最高心拍数,最大血中乳酸値
●試合時測定:肩掛け式ダグラスバッグ法による酸素摂取量,テレメトリー法による心拍数,各ゲーム終了直後の血中乳酸値,タイムスタディー(作業/休息時間),ストローク数

要約
 本研究は,バドミントン競技において全日本選抜チームに選出された選手を含む男子一流選手7名を被検者とし,試合時(シングルスゲーム)の運動強度を酸素摂取量,心拍数,血中乳酸値を指標として検討を行った.
 最大酸素摂取量の平均値は61.2 ml/kg/min,最高心拍数の平均値は196 beats/min,疲労困憊直後の血中乳酸値の平均値は124.4 mg/dl (11.27 mmol/l)であった.
 試合時における作業期と休息期について,全試合の平均時間はそれぞれ6.5 secと8.8 secとなり,休息期は作業期のおよそ1.4倍(女子では5.9:10.7 secとなり,休息期は作業期のおよそ1.8倍)であった.
 試合時において,全試合の心拍数の平均は175 beats/min(女子では174 beats/min)で最高心拍数のおよそ83%(女子ではおよそ87%)を示した.酸素摂取量は43.5 ml/kg/min(女子では33.13 ml/kg/min)で最大酸素摂取量のおよそ71%(女子ではおよそ56%)に相当した.また,血中乳酸値の平均は29.5 mg/dl(女子では23.3 mg/dl)で最大運動直後の値のおよそ27%(女子では23%)を示した.
 以上のことから,心拍数と酸素摂取量を指標として運動強度を検討するならば,呼吸循環器系に大きな負荷を与える種目であると考えられる.しかし,血中乳酸地の値はは低く,これは間欠的運動という特性が反映されているものと思われる.<追記>男女間で比較すると,試合中の心拍数はほぼ同じ,酸素摂取量は男子の方が15%高値,血中乳酸値は男子の方が5%高値であった.酸素摂取量からみた男女間の運動強度の違いは,主に運動時間が男子の方が長かったことと,作業期と休息期の比が小さかったことによると思われる(比が小さいほうがきつい)

専門用語の説明
●運動強度:その運動の生理的なしんどさ
●最大酸素摂取量:1分間にどれだけたくさんの酸素をからだの中に取り込めるか,全身持久力の指標
●血中乳酸:疲労の指標とされる