リニアマグネットアクチュエータ

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8 pin の PIC を使ったリニアマグネットアクチュエータの製作
 通常のマグネットアクチュエータはコイルとマグネットだけというとても簡単なもので、動翼に直接マグネットをセットして使ってきた。構造が簡単なので飛行機に組み込みやすい反面コイルとマグネットが重心位置から遠いテールにセットされるため、テールヘビーになりやすい。またスケール機への搭載を考えるとスケール感を損なってしまう。

 リニアマグネットアクチュエータ(以下リニアアクチュエータと略)の最大の特徴は通常のマグネットアクチュエータと比較してどのポジションでも同じ出力になる。通常のマグネットアクチュエータはニュートラル時に電流が流れない。 PWM 制御によりコイルに印加する平均電圧が舵角に応じて増えていく方式なので舵角が少ないほど出力も少ない。ところがリニアアクチュエータの場合はニュートラルから最大舵角まで PWM 制御をしているものの、コイルに印可する平均電圧は常に最大電圧となるためその出力はは比較にならないほど大きい。その分小さなマグネットが使える。このような特徴を生かして小型軽量なリニアアクチュエータを作ることができればピーナッツスケールはもとよりいろいろな飛行機への搭載も可能になる。

 小型で軽量なリニアアクチュエータを作るなら 8 ピンの PIC を使いたい。となると限られたポジション数しか実現できそうもない。ビットチャージーのラジコンカーを改造したインドアエアプレーンではラダーの舵角は右か左のみ。これでもコントロールできるようなので、少ないポジジョン数でも実用になるはずと判断し、 8 ピンの PIC12C509A を使ってリニアアクチュエータを作ってみることにした。

 8 ピンの PIC では入力に 1 ポートを使うと、 5 ポートが出力に使える。この 5 ポートを最大限利用して 5 個のコイルをドライブすれば、複雑な PWM 制御をしなくてもポジション数は少ないものの何とかコントロールできそうである。しかし単純にコイルを切り替えるだけではセンターから左右各 2 ポジションにしかならない。もちろんこれでも実用になるとは思うが、できればもう少しステップ数がほしい。

 ステップ数を多くするにはどうしたらいいか。隣り合ったコイルに同時に電流を流せば両者のコイルの中間にマグネットが保持されるのでステップ数がもう少し増えるはず。これで左右各 4 ポジションとなる。

 早速 PIC12C509A を使ったプログラムを組んでみた。 ついでに信号が途絶えてもニュートラルを保持できるプログラムとした。プログラムは組みあがったものの、効率よくコイルを巻くための装置がまだできていない。いつもこんなことを繰り返している。そこで早速簡単にコイル巻を巻くことのできる巻き取りモータユニットを作ることにした。

 試行錯誤しながらようやく三度目で使い勝手のよい巻き線ユニットができた。とりあえずリニアアクチュエータに使うテスト用のコイルを巻くことになるが、実験用なのでやや大きめのコイルでテストすることにした。内径 6mm ほどのストローに 5 個のコイルを並べて 5x3mm のマグネットでテストする。そこで、幅 3mm のコイルを 0.04mm の線を使って巻いてみた。 200 オームのコイルを巻くのに 700 回巻いた。カウンターをつけたので作業効率が飛躍的に向上し、モータのスピードコントロールの効果もあって、あっという間に 5 個のコイルを巻くことができた。

 早速ストローに 5 個のコイルをセットして PIC に配線した。マグネットだけでは外から位置が確認しにくいのでプッシュロッドに見立てたバルサの細棒をマグネットに接着してみた。受信機と接続してスティックを動かしてみるとおもしろいようにストローの中を動いた。直感的にこれなら使えると判断した。

 実装するためのプリントパターンを描き、プリント基板を作って PIC とパスコンをはんだ付けした。

 コイルのリード線をはんだ付けしてから基板にコイルを接着し、 9 ポジションのリニアアクチュエータができた。マグネットは外径 3mm 、長さ 3mm のものを使用。このリニアアクチュエータで飛行テストを行うつもりでいたが、できればもっと分解能を多くしたいと欲が出た。高分解能を実現するには PWM 制御をするしかない。

 しばらく試行錯誤の結果、取得したパルス幅に応じて 5 個のコイルをシームレスに切り替えながら PWM 制御をするプログラムを組むことができた。これで一挙に 33 ポジションのコントロールができるようになった。これだけの分解能があれば現行の赤外線受信機のアクチュエータドライブのポジション数より多いので実用上全く問題ないはず。

 このリニアアクチュエータはサーボと同じように 3 線式で赤外線受信機にも RF 受信機にも接続して使うことができる。できれば送信機のメーカによるニュートラルパルス幅の違いを吸収できた方がいい。そこで自動的にニュートラルを設定する機能も組み込んでみた。

 常にパルス幅に応じた位置にマグネットを保持するので、飛行中の風圧などによる影響を受けにくいのも特徴だ。またニュートラルの保持も強力なので、通常のマグネットアクチュエータのようにヒンジによるニュートラル保持、補助マグネットによるニュートラル保持、マスバランスによるニュートラル保持等で苦労することもない。

早速 33 ポジションのリニアアクチュエータ(画像手前)を作ってみた。軽く作るために 0.025mm のワイヤを使用し、アンペアターンを稼ぐためにできるだけ内径を細くしてみた。 650 ターン 220Ω コイルを 5 個並べてある。マグネットには外径 3mm 、長さ 2mm のものを使ってみた。内部は空芯でマグネットの滑りをよくするためにクリアテープをコイル内面に貼ってみたが、適切なサイズのストローを使えばもっと良い結果が出そうだ。このあたりはまだまだ研究の余地がある。

 ストローク = コイルの幅 x (コイル個数 - 1) となる。今回は 2mm 幅で巻いたコイルを使ったのでリニアアクチュエータのストロークは 8mm 。 1 ステップ 0.25mm の分解能だ。コイルの巻き幅を変えれば好みのストロークが得られる。


33 positions lenear actuator driver linact032.hex for PIC12C509A

 5 個のコイルは巻き始めと巻き終わりをそろえて連結する。巻きはじめか巻き終わりのリード線のどちらか一方をまとめて GND に接続し、もう片方のリード線をそれぞれ PIC の出力ポートに接続する。どちらの配線方法でもコイルには常に一定方向の電流が流れることになり、コイルが作りだす磁界の方向も決まってしまう。従ってコイルにセットするマグネットの極性も自ずと決まってしまう。あらかじめマグネットがはじかれない方向を確認してから必要な方向にプッシュロッドをつけることになるが、面倒ならマグネットの両側にプッシュロッドを取り付けておいて実装時に不必要な方をカットしてもいい。マグネットの移動方向についてはあとから送信機のリバーススイッチで切り替えられるので問題ない。

今回プッシュロッドにはバルサ棒を使いマグネットとの接着にボンドサイレックス使ってみた。瞬間接着剤も使ってみたが何かの拍子に剥がれてしまった。バルサ棒の中心に穴を開け、細いカーボンロッドを差し込んで動翼と連結する。


[X]印は電流の流れ込みで[・]印は電流の流れ出しを示す。コイルが作り出す磁界は左側が N 極、右側が S 極となる

 リニアアクチュエータの実用性を確かめるため A-1 1 号機のラダーに搭載して飛行テストしてみた。良好な結果が得られたので、その後エレベータを追加してフライトしてみた。ラダーには外径 3mm 、長さ 3mm 、エレベータには外径 3mm 、長さ 2mm のマグネットを使ってみたが、後者のマグネットでも全くコントロールには問題がなかった。今後コイル巻きを最適化してピーナッツスケールへの搭載を目指す。
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2003/12/13