赤外線送受信機 NO.29 (PIC12C509A + FET受信機)

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マグネットアクチュエータのドライブに FET を使う
 100Ω 以下のアクチュエータコイルを使うために OP アンプを使った受信機を以前作った。入手しやすい MAX4020 を使ったが、このオペアンプは±120mA と出力電流は十分ではあるものの、思いのほか内部抵抗が高く、 100Ω のコイルをつないだときに電源電圧の 3.8V に対して、ポート出力電圧は 2.51V と 1.29V も電圧がドロップする。内部抵抗を計算してみると 50Ω以上もあることがわかった。この OP アンプを搭載した受信機は Push-E で 60Ω のコイルを駆動しているが、半分近い電力をロスしていることになる。

 MAX4020 は思いの外効率が悪い。そこで何とか±250mA の出力電流を持つアナログデバイセズの AD8534 をテストしてみたいと思い、日本の代理店にサンプルを注文した。しかしなしのつぶてである。そこで ANALOG DEVICES 本社にサンプルを注文した。用途を IR RECEIVER としらた、アメリカ合衆国の法律でプロダクトの内容が不明確なため輸出できないと連絡がきた。そこで MAX4020 を使った赤外線受信機の画像と回路図を添えて、 MAX4020 を AD8534 に替えてテストしたいと伝えた。ようやく輸出 OK となり、三日目に IC が届いた。

 調達したのは AD8534 と AD8532 。前者には 4 個の OP アンプ、後者には 2 個の OP アンプが入っている。早速後者の OP アンプでテストしてみた。 MAX4020 を搭載した受信機と同じ IRXA301 の出力に AD8432 を配線し、前回の MicroMag の 100Ω アクチュエータをつないでみたところ、 MAX4020 の時とは大きな違いがあった。出力電圧の低下がとても少ない。 MAX4020 では内部抵抗が 50Ωほどであったが、 AD8532 では 10.5Ω という結果が出た。 MAX4020 を AD8534 に変更するだけで効率が格段によくなり倍近い出力が得られることがわかった。

 しかしながら AD8534 は現在のところ少量を入手するのが難しい。ということでサンプルは入手したものの受信機への実装は見合わせることにした。その気になれば MAX4020 とピンコンパチブルなのでいつでも交換できる。

 しばらく時が経過し、超小型パッケージの N/P DUAL MOSFET があることを発見した。特にオン抵抗の小さなものは 3000 個単位でないと入手できないが、実用になりそうな FAIRCHILD のものが 1 個から Digi-Key で調達できることがわかった。 H ブリッジ回路でドライブすることになるが、はるかに内部抵抗が低くなるはず。しかもパッケージが小さいのでオペアンプを使うより軽くなりそうだ。受信機の PIC プログラムは「赤外線送受信機 NO.16」にあるすべての hex file が使える。


IRXA301-3 PCB pattern (720pixel x 340pixel 200pixel/cm)

 H ブリッジ回路でドライブするので一つのコイルに 2 個の DUAL FET チップが必要となる。 2 組のドライバを組むには少々配線パターンが複雑になるが、幸い複雑なパターンのプリント基板も簡単に作れるようになったので苦にならない。

 早速 FARICHILD の NDC7001C という N/P DUAL MOSFET を調達した。パッケージは SOT-6 ととても小さい。何度かレイアウトを変更してほぼ満足できるパターンとなった。今回は 0.2mm の両面基板でエッチングした。


できあがったプリント基板の表。パターンのスリットは 0.25mm で描いた。


裏側には DC-DC コンバータとモータ出力用の FET を取り付ける。

 基板のサイズは 13mmx14mm 。部品のはんだ付けをする前に各パターンのスリットにブリッジがないかテスタで確認しておく。作業順序としては DC-DC コンバータを先に組んできちんと 5V が出力されていることを確認してから他の部品をはんだ付けすると失敗が少ない。

 コネクターケーブルを取り付け、 2 個のセンサをつけて受信機の完成。アクチュエータドライバの出力端子に JST コネクタに使われているジャックを加工してはんだ付けした。これは仲間の鈴木さんが改造したのをまねてみた。

 電源コネクタケーブルとモータ出力ケーブルとセンサ 2 個を含めた完成重量は 1.1g 。100Ω と 60Ω のコイルをつないで出力を確認してみた。電源電圧 3.94V で出力電圧は 100Ω 負荷時 3.81V 、60Ω負荷時 3.73V と素晴らしい値であった。これでアクチュエータコイルへの供給電力はオペアンプ MAX4020 を使ったときの倍以上であることが確認できた。赤外線受光素子は軽量化と受光範囲を広角化するためレンズ部分を削り落としてある。

 早速 Push-E に今回の受信機を搭載してみたみた。飛行機側のアクチュエータコイルのリード線を差し込み式にするため JST コネクタプラグのピンを取り外してリード線に取り付けた。これで受信機は他の飛行機にも簡単に載せ替えできるようになる。

 実際に飛ばしてみた結果、とても小さな半径で旋回しながら上昇することができ、マグネットアクチュエータのトルクがかなりパワーアップしていることを実感した。

 今回の IRXA301-3 受信機は今までになく効率の良いアクチュエータドライバとなったので、幅広い抵抗値に対応できる。 30Ω ぐらいの低抵抗コイルでも十分にドライブ可能である。電流容量も十分にあるので、今話題の Muscle wire actuator もドライブできる。
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2003/11/15
2004/03/06 PCB パターンを追加