簡単なプリント基板の作り方

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全く新しい発想でプリント基板を作ってみた
 このところカッタナイフを使ってパターンをカットしてきたが、小さな表面実装部品を使った細かいパターンを作るのはかなり大変である。 0.2mm の両面基板ではよほど注意して作業しないと穴が開いてしまう。

 かなり前から何とか簡単にパターンを作れないか模索していた。市販の感光基板を使って作るのが一般的なようだが、感光基板は 1.6mm 厚が標準で、薄手のものは 50 ミクロンのフレキシブル基板のみ。感光基板を使う場合は他に結構道具が必要になる。また、感光スプレーなるものも市販されているようだが、製作工程は感光基板で作るのと同様の道具が必要になる。

 いろいろ試行錯誤の結果、市販されている安価な材料で簡単にプリント基板を作る方法を考案した。まずはその仕上がりを見てほしい。画像手前は赤外線受信機 IRXA301 の基板で 0.2mm の両面ガラスエポキシ基板を使った片面だけのパターン。 12mmx12mm のサイズでスリット幅は 0.25mm 。もう片方の基板は 18mmx10mm で裏側にもパターンがある。

 プリント基板を作る手順は至って簡単で、要約すると PC でパターン図を作り、 OHP シートに印刷してからプリント基板にアイロンで転写する。あとはエッチングするだけ。

 プリント基板を作る上で私が使用した機材は以下の通り。手持ちのものを利用したが、他にもっとよい材料、よい方法があるかもしれない。

パターン描画に使用したソフト Photoshop 6.0 原寸パターンが出力できればどのようなソフトでも可。多分もっと簡単にパターンを描くことができるソフトがあると思われる。
印刷に使用したプリンタ NEC PC-PR1000LW トナータイプのプリンタならどのようなものでも使えると思う。
使用した転写用シート OHP シート 100 ミクロン厚のものを使ったが、他のものでも問題ない。有隣堂で手書き用として 1 枚 60 円で販売していた。
使用した離型剤 ポバール系水溶性透明離型剤 (PVA) ブルーもあるが透明の方が使いやすい。東急ハンズで 200g 入りを調達。
使用したアイロン 松下電器製自動裁縫こて NI-207F(80W) ごくふつうのアイロンでも問題ないはず。
エッチング液(塩化第二鉄) 結晶タイプのものをお湯に溶かして使用 液状のものでもよい。
他の道具類 カッタナイフ、ヤスリ、油性ペン、定規、筆、マスキングテープ、スチールたわし スチールたわしは強固に貼り付いたトナーを落とすのに便利。

 転写パターンはあらかじめ実寸でプリントアウトできるようにスケールを考えて描く。私は Photoshop を使って 1cm を 200 ドットで描いた。転写することになるので反転したパターンなるように気を付ける。まずそのパターンを普通紙に実寸でプリントする。これは印刷される位置を確認するため。

 次に印刷されたパターンより少し大きめにカットした OHP シートを 2 枚用意する。 OHP シートは厚さが何種類かあるようだが、以前飛行機のヒンジに使うつもりで 100 ミクロンのものを買ってあったのでそれを使った。手持ちがなくなったので前回購入した有隣堂に行ったら、今も 1 枚 60 円でバラ売りしていた。プロッタシートでも良好な結果が得られる。

 ここで OHP シートに離型剤を塗って下処理をする。プリント用のトナーにはカーボン粒子の表面に樹脂がコーティングされている。印刷するときにこの樹脂を熱で溶かしてプリント用紙に固着させるので、 OHP シートに印刷されたトナーは簡単に剥がれない。今回は OHP シートに一度印刷されたパターンを再度プリント基板に転写するので、OHP シートに印刷されたパターンはできるだけ簡単に剥がれるようにしたい。

 そこで思いついたのが水溶性の離型剤。ポパール (PVA) 系の離型剤で青色と透明がある。以前カーボンプロペラを作ったときに東急ハンズで調達した透明のものが手元にあったので使ってみた。この離型剤を OHP シートの表面に筆で塗り、ドライヤで乾燥する。普通紙に印刷したパターンの上にこの離型剤を塗った OHP シートをテープで貼り付け、プリンタにセットして転写パターンを印刷する。同様の方法で 2 枚の転写パターンを作る。

 プリント基板の表面をきれいに磨いて脱脂する。アセトンを使ったり、クレンザーで磨いたり、消しゴムでこすったりと方法はいろいろある。きれいになった基板面に OHP シートをテープで固定する。よく見るとパターンにトナーの濃淡が見えるが 2 回転写するので問題ない。

 小型のアイロンを最高温度に設定して OHP シートの上から均等に押さえつけ、十分に熱を加える。あまり強く押しすぎるとトナーが溶けて隣のパターンとくっついてしまうのでほどほどに押さえる。このあたりの要領は何度か試してみる必要がある。アイロンを当てたすぐあとは銅箔がかなり熱いのでやけどしないように気を付ける。

 プリント基板が冷えたら流水の中でゆっくりと OHP シートを剥がす。剥がすというより水溶性の離型剤なので自然に剥がれてくれる。基板のパターンは一部にうまく転写されない部分があってももう一度重ねて転写するので心配いらない。

 水洗いした基板を十分に乾かし、 2 枚目の OHP シートを基板上の転写パターンとぴったり重なるように合わせ、もう一度アイロンでパターンを転写する。このときは 1 回目より押さえる力を弱くする。 2 層分のトナーが溶けすぎるとパターンがつぶれてしまうからだ。基板が冷えたら 1 回目と同様流水の中で離型剤を溶かして OHP シートを剥がす。下の画像はパターンをアイロンで 2 回転写したもの。

 光の具合でムラがあるように見えるがこの状態ならエッチングしても全く差し支えない。もし 2 回の転写でもうまく転写できない部分があれば油性ペンで補修することができる。パターンのスリットがくっつきそうで気になる部分は上から定規を当ててカッタナイフでトナーを削っておく。

 塩化第二鉄溶液を入れた容器を 40 度ぐらいのお湯で湯煎しながらエッチングする。今回は両面基板を使ったが、片面だけのパターンなので裏の銅箔はそのままエッチングした。結果はご覧の通りきれいにエッチングできた。

 0.2mm の基板はカッターナイフで簡単にカットできる。転写されたパターンは非常に強固に基板についていてクレンザーで磨いたくらいでは落ちない。アセトンを使を使ったら簡単に落とせたが、黒いトナーが基板の生地にしみこんで汚らしくなってしまった。いろいろとテストしてみたがスチールたわしを使う方法が一番よかった。周りの余分な部分をカッタナイフでカットしてヤスリで仕上げれば完成だ。

 一番はじめに紹介した完成基板も実用のために作ったものだが、上の画像は新型の赤外線受信機の基板で両面にパターンがある。一番細いパターンは 0.25mm で描いたもので 0.2mm のガラスエポキシ基板を使っている。基板サイズは 13mmx14mm 。ここまでのパターンになると、とてもカッタナイフでカットする気にはなれない。

 両面にパターンがある場合、一度に両面のパターンを転写するのは難しい。片面にパターンを転写したあとにもう片面にパターンを転写したら、作業台に裏側のパターンがくっついてしまい使い物にならなくなってしまった。かなりの高温でパターンを銅箔に転写するため、その熱が裏側のパターンを溶かしてしまうからだ。そこで片面だけパターンを転写してエッチングまで済ませ、あとからもう片面を同様の方法でエッチングして仕上げた。最初のエッチングの時に裏側の銅箔が溶けないようにテープを貼って保護し、次のエッチングでは仕上がったパターン面にテープを貼って保護した。パターンの表裏に位置あわせの目印を付けておき、片面のエッチングが完了したら目印のところに細いドリルで穴を開け、裏の目印をその穴に合わせてアイロンで転写した。


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2003/11/05