アクチュエータドライバを組み込んだ受信機に思わぬ落とし穴

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チャージポンプ DC-DC コンバータを組み込む
 SKY HOOKS and RIGGING の SHR-RX72 受信機にマグネットアクチュエータドライバを組み込んだ PIC を載せて、スピードコントローラも組み込んだ。勿論テストでは飛行機に搭載する予定のモータもコントロールし、ラダーに搭載したマグネットアクチュエータも正常に動くことを確認した。

 ところがテストに使用したのは 400mAh の容量を持つ Li-Ion 電池。実際に飛行機に搭載する電池は 140mAh のリチウムポリマ電池だ。後者でテストしたが始めのうちは何の問題もなく動作していた。 5 分を経過したあたりからモータの息つきが出るようになった。モータの回転を落とすと治まる。時間が経過するとともに息つきが多くなった。

 受信機の動作電圧範囲が 3.5V-5.5V であることを思い出した。レギュレーションの悪い小容量の電池ではモータを回すことによって電圧が下がり、受信機が正常に動作しなくなってしまうことがわかった。せっかく軽く仕上がった改造受信機もこれでは用をなさない。

 この受信機、もとは Dynamics Unlimited から調達したシステムに組みこれていた。電源電圧はニッカド電池 2-4 セルで動作する。内部に昇圧回路が組み込まれていて、受信機へは 5V 近い電圧が供給されていた。何らかの方法で受信機への供給電圧を上げなければならない。

 赤外線送受信機の実験をしているときに、赤外線受光素子の動作推奨電圧が 5V になっていて、リチウム電池 1 セルでも動作するが通達距離に不安を覚えた。何とか軽量で 5V の電圧を供給する方法がないか悩んだことがあった。そのときにチャージポンプ式の DC-DC コンバータがあることを知った。外付け部品は 1μF のセラミックコンデンサ 3 個のみで実現できる。早速サンプルを取り寄せた。 6 ピンのパッケージで恐ろしく小さい。のちに千石電商に出かけたとき 1μF のチップ積層セラミックコンデンサを見つけたので買っておいた。ということでその気になれば組める。

 チャージ・ポンプ DC-DC コンバータは 2.7V-4.5V の入力電圧に対して出力は 5V と願ってもない仕様だ。 3.1V 以上の入力電圧があれば出力電流は 100mA 以上取り出せるとある。モーターをドライブするのは無理だが、受信機、マグネットアクチュエータ、スピードコントローラのドライブ回路は十分まかなえそうだ。もともとはこの IC 、携帯電話の液晶のバックライトに使われている白色 LED ドライブ用に開発されたようである。白色 LED の駆動電圧が高いことからリチウム電池の電圧を昇圧している。 LED も 4 個ないし 5 個使われているため 80mA 程度の供給能力は要求されているようだ。これがその DC-DC コンバータ IC だ。 JST コネクタと比べてその大きさがいかに小さいかわかる。

 あまりの小ささに手付かずにいた DC-DC コンバータを組んでみることにした。今回も空中配線。あまりにも小さな部品に半田付けは一苦労。どうにか 3 個のチップコンデンサを取り付けてリード線を半田付けした。肝心の IC はチップコンデンサの陰に隠れてしまった。この状態で入力側にリチウムイオン電池を繋いで出力電圧をチェックしてみた。ちゃんと 5V 出ている。

 早速受信機に組み込んでみた。受信機への供給電圧をチェックしたら電圧が出ていない。なんと IC のピン付け根から折れてチップコンデンサが外れてしまっていた。たった一つしかない IC なので万事休すである。

 似たような IC がどこかで入手できないかネットで探してみた。用途が携帯電話用とあればいろいろなメーカから出ているはず。サンプルを提供してもらったリニアテクノロジーでオンライン購入ができることがわかった。早速注文することにした。 1 個 $1.9 なので 10 個頼むことにした。ところが最後の注文確認画面のところになって送料が $35 と出ていた。 $19 の買い物で $35 の送料はいかにも高すぎる。結局注文するのを止めた。

 折れた IC のピンを何とか復活させるしかない。ピンの周囲をカッタナイフで少し削り、細いリード線を何とか半田付けすることができた。出力電圧のチェックをしたところ 5V 出ている。恐る恐る出力を受信機の電源に繋いで受信機側で電圧を確認してみた。きちんと電圧が出ている。マグネットアクチュエータも動いた。 3.6V の設定で巻いた 120Ωのコイルだが 5V でのドライブでトルクが大幅に増加した。 PIC の 2 ポートをパラレルに使っているので電流も許容値に収まっているはず。このままだとスピードコントローラーにも 5V が供給されるが、とてもモータまでは回せない。モータへは電池からダイレクトに供給できるように配線を変更した。

 今度は慎重に受信機に組み込んだ。 DC-DC コンバータ周囲の配線は無理がかからないようにボンドサイレックスで固定した。実際の飛行を想定して 140mAh の容量を持つ Li-Polymer 電池でテストを行った。モータを回しつづけて 20 分を経過してもなお受信機への供給電圧は 5V が維持されていた。これなら問題なく飛行機に搭載できそうだ。受信機の重さは 2.3g と以前と変わらなかった。秤にかからないほど DC-DC コンバータは超軽量である。

 赤外線受信機の受光素子をいかにドライブするかで悩んでいたが、今回の受信機に超軽量なチャージポンプ DC-DC コンバータが使えたことで自信を深めることができた。

 今回 PIC を 5V でドライブすることで、マグネットアクチュエータは PIC 1 ポートでも十分ドライブが可能であると判断した。ならば 2 チャンネル分のマグネットアクチュエータドライバ出力が確保できる。もう少し勉強が進めば 1 個の PIC でデコーダ、スピードコントローラへのスロットル出力、 2 つのマグネットアクチュエータドライバを搭載できそうだ。あとは DC-DC コンバータの調達が課題である。


  • 使用したのはLTC3200-5 低ノイズ、安定化チャージポンプ DC-DC コンバータ(サンプル)
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    2002/10/22