城山三郎                09,01,13

  昨夏、ある会合で、最近の政治家や官僚、財界の大御所に至るまで、やや詭弁や自己弁解が多すぎる
 という話題が出て、たまたま城山三郎の小説”落日燃ゆ”の広田弘毅の話に及んだ。広田弘毅は、文官と
 して只1人A級戦犯に問われたが、一切の弁解をせずに、揺るがぬ姿勢で死を受け入れた不世出の政治
 家と言われている。そんな事がきっかけで、昨年の夏頃から城山三郎をまとめて読み初め、ようやくあら
 かたの著書を読み終えた。城山三郎は私より10歳年上の名古屋生まれで、海軍特別幹部練習生の経歴
 を持つ。それゆえに、阿川弘之と同様、海軍軍人の目を通して経験した著書がいくつかあり、のちに経済
 小説の先駆者として頭角を現した。愛妻家として有名で、糟糠の妻が亡くなったときの隠れた逸話は、知
 る人ぞ知る気骨の文士としてつとに名高い。読み終えてみて私の好きな著作は、やはり広田弘毅を描い
 た”落日燃ゆ”と、浜口雄幸・井上準之助を描いた”男子の本懐”の2つの力作となろうか。
  それにつけても最近の首相と比べると、時代は違うが、宰相の器というか人間の器というか、違いが歴
 然と判るのがさみしい。


      蔵書その1        蔵書その2
   1、硫黄島に死す    9、、落日燃ゆ
   2、指揮官達の特攻    10、冬の派閥
   3、総会屋錦城    11、役員室午前3時
   4、官僚達の夏      12、毎日が日曜日
   5、雄気堂々(上)    13、打たれ強く生きる
   6、雄気堂々(下)    14、静かに、健やかに、遠くまで
   7、秀吉と武吉    15、わしの眼は10年先が見える
   8、男子の本懐