4.5.3 農作業計画の最適化        目次(第4章)へ

  さきに述べたように,農作業の目的は営農上の利益(BPC)を最大にすることである.そして営農システムは非常に大きく複雑であり,現時点ではその全体のモデル化に至っておらず,その一部である農作業計画のシステムモデルがCAFARMの例のようにプログラムで作成されているにすぎない.

そこで,ここでは農作業計画に焦点をしぼり,問題を単純化して,評価関数を機械利用経費にとり,それを最小にすることを農作業計画の最適化と考えることにする.

  ●ソフトウェア ecg_800.exe

 

    LC   10   11   12   20   21   22   23   24  
No 作業名 作業>
時期
作業機 ND MN ND MN ND MN ND MN ND MN ND MN ND MN ND MN
1 種子予措 5.1-5.30 人力 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2
2 育苗 5.5-5.30 人力 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 *2
3 耕うん 5.16-5.31 ロータリ 1 1 1 1 *1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
4 元肥 6.1-6.20 人力 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2
5 代かき 水田ハロー 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
6 苗運搬 運搬車 1 4 1 4 1 4 1 4 1 4 1 4 1 4 1 4
7 田植 田植機 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
8 除草剤散布 6.6-6.25 散粒機 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
9 稗抜き 6.6-7.20 人力 0 1 0 1 0 1 0 1 0 *1 0 2 0 2 0 2
10 防除ニカメイチュウ 7.6-7.11 動力散粉機 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
11 除草剤散布 7.21-7.25 散粒機 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
12 防除イモチ 動力散粉機 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
13 防除モンガレ 8.1-8.7 動力散粉機 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
14 追肥 8.6-8.10 人力 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2
15 防除ツマグロ 8.16-8.20 動力散粉機 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
16 防除イモチ 動力散粉機 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
17 防除ニカメイチュウ 9.6-9.10 動力散粉機 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
18 防除ニカメイチュウ 動力散粉機 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
19 収穫 10.15-11.10 コンバイン 1 1 *1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
20 稲束運搬 運搬車 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 *1 2 2 4
21 堆肥散布 10.16-11.15 堆肥散布機 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
22 籾乾燥 乾燥機 *3 1 4 1 4 1 *4 1 5 1 *5 1 6 1 6 1
23 籾摺り 10.16-11.15 籾摺機 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
24 わら処理 11.16-12.30 人力 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2
                                       
  トラクタ(36PS)     1   1   1   2   2   2   2   2  
  最大作業人数     4   4   4   8   8   8   12   12  
  負担面積     4.6   5.1   5.6   6.1   6.1   6.6   7.0   7.6  
  機械利用経費     720   698   708   692   686   672   664   656  

図 4.4 負担面積と機械利用コスト

 

図 4.5 機械作業のエネルギー消費量

 

 つぎに,農作業計画システムモデルにおける要素は,作物・品種,気象,土壌,機械,労力,圃場面積など多く,それらの組合せはぼう大なものとなり,あらゆる場合を網羅することは不可能である.

 したがってここでは,大中小の三つの機械セットと,その機械の台数を変えて農作業計画をたてる場合を例にとって説明する.

 表4.6は,36馬力トラクタとコンバインを基幹とする体系(LC)で,各機械の台数(ND)と作業人数(MN)を変えて,負担面積や機械利用経費を求め一覧表にしたものである.台数と作業人数については,はじめの組合せ(LC 10)における負担面積を規制した作業(*印)について,台数と人数を増加させた組合せ(LC 11)のもとで計算し,同様に遂次*印の作業の機械台数と作業人数を増加させて計算したもので,全般に負担面積は増大し,機械利用経費は減少していく傾向を示している.

 同様に,18馬力トラクタとバインダを基幹とする体系(MB)と,耕うん機とバインダを基幹とする体系(SB)について,負担面積や機械利用経費を算出して,これらの機械利用経費を作業面積との関係で整理したものが図4.4である.

 ある組合せ台数の機械セットのもとで,作業面積を変えると,その機械利用経費は作業面積の増加とともに双曲線状に減少し,その体系の負担面積に等しくなったとき最小値を示すので,図4.4では鋸状の曲線が得られている.

また,作業面積が1.7ha以下のときは,耕うん機+バインダ体系のSB 10またはSB 11の組合せが最適であり,作業面積が1.7haから3.8haの間では中型トラクタ体系のMB 10,MB11の組合せが,そして作業面積が3.8ha以上では,大型トラクタ体系のLCの組合せが最小の機械利用経費をもたらすということが示される.

なお,作業面積とエネルギー消費量との関係を示したのが,図4.5である.

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