4.4 機械利用コスト 目次(第4章)へ
4.4.1 固定費
機械利用コスト(経費)は,機械の利用時間数に比例して変動する変動費Cvと利用時間には関係なく必要となる固定費 Cf に大別され,ある機械の年間利用経費をCy(円/年)とするとつぎの式で表される.
Cy=Cf +Cv eq. 4.48
年間固定費Cf(円/年)には,償却費D,修理費R,資本利子I,税金X,保険料H,格納費Kなどが含まれ,つぎの式で表される.
Cf=D+R+I+X+H+K eq. 4.49
年間固定費の概略値の算出法として,機械の購入価格P(円)に対する年固定費率f(%)を用いて,つぎの式を用いることがある.
Cf = P * f / 100 eq. 4.50
機械は,利用に伴う消耗や旧式化によって価値が下がる.年間償却費(減価償却費)D(円/年)は,機械の価値の減耗に見合って積み立てていくべき費用で,年間利用時間 Ty が耐用時間 t0を耐用年数Yで割った値(年平均利用可能時間)より小さいときは,機械の旧式化による価値低下をとって,定額方式による次式を用いて算出することが多い.
D = ( P - S ) / Y eq. 4.51
ここで,S:Y年後の機械の残存価格(円) Y:耐用年数
〔例〕200万円で購入した乗用トラクタの耐用年数(省令による)は8年である.残存価格は購入価格の10%であるとき,年間償却費を求めると,
D = ( 200 - 20 ) / 8 = 22.5 (万円/年)
年間利用時間が年平均利用可能時間より大きいときは,機械利用による消耗をとって,年間償却費をつぎの式で算出するのがよい.
D = ( P - S ) * Ty / t0 eq. 4.52
年間修理費R(円/年)は,機械の種類,利用状態等によって異なり算出が困難であるが,つぎの式で推定することが多い.
R = P * r / ( Y * 100 ) eq. 4.53
ここで,r は総修理費係数(%)で,機械種類によって異なるが,およそ20〜60%である.
年間資本利子I(円/年)は,年利子を i %とすると,つぎの式で得られる.
I = ( P + S ) / 2 * i / 100 eq. 4.54
年間の税金,保険料は,個々の租税公課,保険制度によって定まるが,それぞれ購入価格の2.5〜3.5%程度を見込んでおけばよい.年間格納費K(円/年)は,機械を格納する建物等の費用であり,機械の種類によって異なるが,購入価格の0.5〜3%程度といわれている.年固定費率の事例を表4.4に示す.
表4.4 農業機械の耐用期間と年固定費率の例4
耐 用 期 間 | 年 固 定 費 率 | |||||||
機 械 | 年数1) | 省令に | 時間数2) | 償却費 | 資本利 | 格納費 | 固定的潤 | 計 |
(Y) | よ る | (t0) | 子・税金 | 滑費およ | ||||
年 | 年 数 | 時 | % | および | % | び修理整 | % | |
保険料% | 備費% | |||||||
トラクタ 歩行 | 6 | 5 | 1,200 | 16.7 | 3.6 | 0.6 | 8.3 | 29.2 |
乗用 | 10 | 8 | 5,000 | 10.0 | 3.6 | 0.5 | 7.0 | 21.1 |
はつ土板プラウ | 10 | 5 | 1,500 | 10.0 | 3.5 | 1.0 | 4.0 | 18.5 |
ロータリ耕うん装置 | 8 | 5 | 2,000 | 12.5 | 3.5 | 0.6 | 6.3 | 22.9 |
心土破砕機 | 10 | 5 | 1,000 | 10.0 | 3.5 | 1.2 | 2.0 | 16.7 |
カルチパッカ | 15 | 5 | 1,500 | 6.7 | 3.5 | 3.2 | 0.7 | 14.1 |
水田ハロー | 6 | 5 | 1,200 | 3.5 | 3.5 | 3.3 | 1.7 | 25.2 |
堆肥散布機 | 10 | 5 | 1,500 | 10.0 | 3.5 | 1.2 | 3.0 | 17.7 |
田植機 | 6 | 5 | 1,200 | 16.7 | 3.5 | 1.2 | 8.3 | 29.7 |
動力噴霧機 | 8 | 5 | 800 | 12.5 | 3.5 | 0.5 | 4.0 | 20.5 |
動力散粉機 | 8 | 5 | 800 | 12.5 | 3.5 | 0.5 | 4.0 | 20.5 |
バインダ | 8 | 5 | 1,600 | 12.5 | 3.5 | 0.5 | 5.0 | 21.5 |
コンバイン | 10 | 5 | 2,000 | 10.0 | 3.5 | 0.4 | 5.0 | 18.9 |
トレーラ(歩行 | ||||||||
トラクタ用) | 8 | 4 | 1,600 | 12.5 | 3.5 | 2.5 | 2.5 | 21.0 |
トレーラ(乗用 | ||||||||
トラクタ用) | 12 | 4 | 2,400 | 8.3 | 3.5 | 2.3 | 2.0 | 16.1 |
1)利用度の多少よりも,機械の改良や新技術の開発などによる現在の機械の旧式化を主として考えて求めた値.
2)機械の材料・設計および工作などの面からみて,利用に耐えられると考えられる一般的な時間.
註4: 川村 登,田中 孝,山下律也:農業機械学概論,文永堂出版,1982