2.4.4.2 CPM 目次(第2章)へ
農作業システムで所要時間を短縮して完了させる必要があるときは,作業全体の費用増をできるだけ少なく保ちながら期間を短縮すればよい.その一手法がCPMである.JIS Z8121によると,CPMとは「手順計画を矢線図で表し,各作業の直接費と所要時間の関係を直線で近似し,線形計画法を用いて費用最小の日程計画を求める手法」である.
表2.10 標準および特急所要日数と費用
作業名 |
結合点 |
標 準 所要日数 N(日) |
標 準 費 用 C n(万円) |
特急 所要日数 X(日) |
特 急 費 用 Cx(万円) |
費 用 勾 配 k(万円/日) |
種子予措 a 育 苗 b 耕うん c しろかき d 田 植 e |
1−2 2−4 1−3 3−4 4−5 |
2 7 11 5 14 |
1 3 12 9 15 |
2 7 7 1 13 |
1 3 16 17 18 |
− − 1 2 3 |
CPMでは,表2.10のように各作業の標準所要時間N(normal time)と特急所要時間X(crash time)およびそれぞれに必要な費用,標準費用Cn,特急費用Cxを用いる.また,作業時間を短縮するには相応の費用がかかるが,CPMでは短縮による費用増は所要期間との間に図2.19のように直線的な関係があると仮定する.
図2.19 所要期間と費用 図2.20 費用曲線
すなわち,費用勾配k =(Cx−Cn)/(n−x)は,一定で図のように直線とする.
作業期間を短縮するには,クリティカル・パス上の作業のいずれかを短縮すればよいので,短縮に伴う費用が最小である作業を短縮する,すなわち費用勾配が最小である作業を短縮するのが有利である.そこでその作業を特急期間まで短縮し,再びクリティカル・パスを求めて同様の手順で改善する.
〔例題〕前題について,表2.10を用いて作業期間を短縮する計画をたてよ.
〔解〕全作業の所要日数30を短縮するには,クリティカル・パス上の作業c,d,eのいずれかを短縮すればよいので,そのうちで最も費用勾配(cost slope)が小さい作業cを選び特急所要日数7まで短縮する.その費用はk・(N−X)= 4万円で全作業は30−4 = 26日に短縮される.
ここまで短縮してもなおクリティカル・パスは変わらないので,つぎに作業dを短縮する.作業dは,特急所要日数1まで短縮可能であるが,日数2以下に短縮しても作業a,bが短縮されないかぎり意味がないので,すなわち,クリティカル・パスが124へ移るので,作業dは所要日数2まで短縮して,その費用は2×(5−2)= 6万円で全作業は26−3 = 23日に短縮される.つぎに,作業eを一日短縮してその費用は3万円で,全作業は23−1 = 22日に短縮される.これらをまとめると費用曲線は図2.20のようになり,所要日数の短縮を大きくすると急速にその費用が増加することがわかる.