2.4.4 スケジューリング 目次(第2章)へ
農作業システムの計画を作成したり改善したりする場合に,作業日程のスケジューリング(scheduling)を効果的に行うことが重要である.そのための手法として,PERT(Program Evaluation and Review Technique,パート)やCPM(Critical Path Method)などがある.
2.4.4.1 PERT
PERTは,農作業の手順や計画などの日程情報を図2.17のようなアローダイヤグラムに表示し,時間的要素を中心として計画の評価,調整および進度管理を行う手法で全システムを解析する.アローダイヤグラムでは,作業(activity)の進行を矢印(arrow)で示し,作業の結合点(node)は丸印で示され,作業の開始または終了を意味する.
つぎに,(a)作業の順序と各作業の所要時間(duration)から,各結合点で最も早く作業開始できる期日,最早期日(earliest node time)Eiを求める.
(b)アローダイヤグラムの終了点から逆算して,おそくとも作業を終了していなければならない期日,最遅期日(latest node time)Liを求める.
(c)各総合点における余裕時間(slack)Si = Li−Ei を求める.Siが0である経路が全作業の所要日程を規制しているので,これをクリティカル・パス(critical path)とよび,作業日程改善の対象となる.
図2.17 PERTアローダイヤグラム(Ei,Li)
〔例題〕図2.17で,クリティカル・パスを示せ.
〔解〕結合点1で作業を開始するので,E1 = 0,L1 = 0である.E2 = E1 + a = 2,E3 = E1 + c = 11,E4 = max(E2 + b,E3 + d)= max(2+7,11+5)= 16,E5 = E4 + e = 30が得られ,E5はこの作業システムの所要最小時間になる.終了点5では,最遅期日L5は最早期日E5に等しく,L5 = 30,つぎに,L4 = L5−e = 16,L3 = L4−d = 11,L2 = L4−b = 9,L1 = min(L2−a,L3−c)= min(7,0)= 0,したがって,クリティカル・パスは,1345の経路で,所要作業時間は30日である.
なお,これらを時間軸に表示したものが図2.18で,ガントチャート(Gantt chart)とよばれる.
図2.18 作業日程図(ガントチャート)