2.3.3 モンテカルロシミュレーション    目次(第2章)へ

2.3の斜線部,曲線 y = e - x3 と直線 x = 0 , y = 0 にかこまれる部分の面積を求める問題について考えてみよう.

2.3 y = e - x3

これは定積分01 e - x3dx を求めることであるが,不定積分e - x3dx が存在しないので不定積分を用いた解析的な手法では求めることができない.

したがって,分割法などの計算によりの近似値0.8075....を得ることができるが,ここでは発想を変えて乱数を用いた算出を行ってみよう.

でたらめに図2.3に向かって発射する矢のように,正方形 ( 0x < 1, 0 y < 1) 内の1点(xy)をランダムに選ぶことは,区間(01)の一様乱数xyを独立に求めることによって実行できる.そこでそのようにして求めた点(xy)について y e - x3 ならばその点は斜線部内の点であることを用いて,正方形内の点(xy)を数多く選んでその点の位置が斜線部の内か外かという実験を繰り返すことによって,面積をつぎのように求めることができる.

   A = A0 NA / N0                      eq. 2.31

ここで,A0:既知の面積,この例では1

    N0 : 点の総数   NA : 求める部分の点の数

2.4は乱数表から求めたxyを用いて行った20回の実験の結果であり,N0 = 20NA = 17からA = 17/20 = 0.85を得た.

2.4 01 e - x3dx の値を求めるモンテカルロ実験

一様乱数

y e - x3

一様乱数

y e - x3

x

y

e - x3

 

x

y

e - x3

 
59 18 0.814

*

76 67 0.645  
04 07 0.999 * 75 51 0.656 *
98 37 0.390 * 77 40 0.633 *
84 51 0.553 * 55 59 0.847 *
90 00 0.482 * 51 33 0.876 *
78 51 0.622 * 35 69 0.958 *
99 80 0.379   27 28 0.981 *
79 58 0.611 * 72 34 0.688 *
70 73 0.710   21 95 0.991 *
82 13 0.576 * 31 25 0.971 *

*印は斜線部の点であることを示す.

 この実験の回数を何千何万と増すことによってさらによい近似値を得ることができよう.

 このように元来決定論的な問題を確率論的な手法を用いて説くことができるのは興味深いことである.このように乱数を用いて算出する手法をモンテカルロ法(Monte Carlo method)とよんでいる.

また,モンテカルロ法を用いた確率的モデルを用いて多数回の実験を行い,統計的システム解析を行うことをモンテカルロシミュレーションとよぶ.

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