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 19   【文房具】万年筆の達人 古山 浩一
UPDATE:
2006/04/09 (Sun) 
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竢o版社 3,360円 (税込)
ISBN: 477790508X (2006/03)
おすすめランク★★★★★
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3月中旬に、丸善本店で購入した一冊。
定価3,360円と決して安い本ではないが、値段以上に、中身は濃いい。
毎日、寝る前に少しずつ読んでいたのだが、昨日、ようやく読了した。
 
本書を一言でいえば、万年筆に関わってきた人たちの人生の紹介だと思う。
ショップの人、製造側の人、そしてユーザー。
大きく3部構成で、それぞれの立場の人がどのように万年筆に関わってきているかを紹介している。
 
一話完結形式なので、気になるところから読んでもOKだと思う。
実際、わたしもショップ→ユーザー→製造の順で読んでいった。
 
わたしが万年筆に興味を持ち始めた時、本書のルーツにあたる、「4本のヘミングウェイ」はすでに絶版で入手不可能だった。
とある図書館の蔵書にあるのを探し当て、何とか中を見ることはできたが、手元に置いておきたいという欲望をみたすことはできない。
そんな悶々とした気持ちを持ちながら、気分が向けば、大型書店の検索システムで「4本の・・・」と入力してみたり、古本屋に立ち寄って探してみたりしていたが、入手には至らず。
 
そんな中、「4本の・・・」の改訂版が出るという噂を、色々なサイトで目にするようになった。
噂が先行して、発売時期が2転3転したようだが、正直、これだけ一冊の本が出るのをワクワクしながらまったことはない。
ちょうど仕事のピークと発売の時期が重なったので、発売日から少し遅れた入手だったが、無事入手できてどれだけほっとしたことか。
 
本書を読んで、最初に思ったことは、やはり日本の技術というか、職人ワザは素晴らしいということ。
車屋に勤めていた関係で、モノ作りにはとても興味があるのだが、車も万年筆も職人の世界は同じだな思う。
ワザは盗めではないが、人から教えて貰うのではなく、自分のやる気と情熱と努力。
結局これしかない。
一本のペンにそれぞれのドラマがあることが、本書からはジンジンと伝わってくる。
 
久々に、ものづくりの素晴らしさを堪能させてもらえた一冊だった。
 
ただ本書を読んで、一点気がかりなのは、こうした素晴らしいワザの伝承が、万年筆業界で行われているのかということ。
自分の勤めていた自動車業界のことしかわからないが、現在の自動車業界の動向として、かなりの投資を行って、技術の伝承が行われている。
果たして、万年筆業界はどうなのだろうか?
(きっと、パイロットなどの大手製造業は、車屋と同じような状況とは思うが・・・)
 
現在の万年筆ブームは近年にない異常な状態というのは、この業界に携わる人ならば、みんな知っていることだと思う。
技術の伝承がおこなわれなければ、いずれこのブームも一過性のものとなってしまうのではと余計な心配をしてしまう。
 
本書のような、素晴らしい万年筆本が、いずれは絶版になるのではなく、いつでも入手できる息の長いブームになるよう、関係者の努力に一万年筆ファンとして期待したい。



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