----------------------------------
日本経済新聞社:872円(税込)
ISBN: 9784532111250 (2006/12)
おすすめランク★★★★☆
----------------------------------
昨年末に広島に出張したとき、帰りの新幹線の中で読もうと、駅前のジュンク堂で購入した一冊。
これまでも時間活用のためのノウハウ本は、何冊か読んできた。
そうした本の多くは、著者の経験則よるものがほとんどだった。
こうした経験則について、著者の具体的事例を紹介してあれば、自分用にカスタマイズしやすいのだが、最悪なのが、個人の経験則を一般化しようとしている書籍が多いこと。
手帳本の紹介の時にも、よく言っていることだが、やり方や理論ばかりが書いてあり、著者の具体的実践例が見えない本は役に立たない。
そうした手帳本の著者は、他人の経験やアイデアを、書籍やWebなどで仕入れてカスタマイズしてあるだけなので、まあ、見てみるとすぐにわかるのだが・・・。
じつは最初、本書を手にしたときに、本書も一見その最悪のパタンかと思った。
しかし、新幹線の時間と睨めっこしながらも、ページをぱらぱらとめくってみると「ニセ理論書」とは一線を画していることはすぐにわかった。
タイトルは時間管理術となっているが、本書はプロジェクトマネジメントの教則本である。
著者もはっきりと、『時間管理で重要なのは「プロジェクト・マネジメント」の視点』と、本書の中で書いており、その視点を考慮した構成となっている。
プロジェクトマネジメントの理論は、工場管理や兵器製造などを通じて、一つの学問として確立されている。
本書は、そうした堅苦しい学問の一分野をかみ砕き、パーソナルベースにまで落として時間管理術に応用しようとしている点が面白い。
ガントチャート、クリティカルパス、マイルストーンやアーンドバリュー等々、システム開発プロジェクトを管理した経験のある方にはおなじみの項目がたくさん出てくる。
わたしも、日常の業務を進める上で、こうした手法を活用しながら、事務に必要な所要日数の見積をはじき出したり、フローからクリティカルパスを洗い出して、人員の配置プランを練ったりしている。
このように、システム開発のプロジェクト管理手法を、日常業務に経験的に取り入れてきたが、それらを周りに広めたりするために整理したことは無かった。
いわゆる、経験則でマニュアルは自分の頭の中というやつだ。
いつか自分で整理したいなと思っていたのだが、そうした理論を上手に整理してくれたのがこの一冊だった。
こうした分野になじみのない方は、読んでいて難しく感じるかもしれないが、一つの学問書と思えば、とてもわかりやすいプロジェクトマネジメントの本である。
プロジェクトマネジメントのさわりを知りたい方にもおすすめだが、特に、入社3年目くらいまでの、これから本格的に仕事が面白くなってくるであろう世代の方々には、ぜひ読んで頂きたい一冊である。
|