【特集】万年筆を買いに

■手帳とカバンのホームペーヂ
 http://www7b.biglobe.ne.jp/~techou_bag/
筆記具関係のコラムのページ
私のお気に入りのペンや購入記の紹介
万年筆の選び方

昭和49年発行の万年筆本、梅田晴夫著「The万年筆」を読む機会があった。
35年前の本ではあるが、万年筆に関するエッセイ、万年筆の選び方、購入後のメンテナンスの方法などが詳しく書かれている。
今読んでも、楽しめる一冊。
 
Theが付かないほうの「万年筆」という本は、5年後の昭和54年に発行されたもの。
基本的内容は、両者同じ。
大きな差は、前半の加筆部分と、巻末にあのプラチナ万年筆#3776の話が掲載されているところか。
 
全部の内容を紹介したいところではあるが、今回は、「万年筆の選び方」を記述している章を取り上げてみよう。
 
以下、【The万年筆】P133万年筆との結婚「選ぶ」の項より。
 
●他人に頼まず、必ず自分自身で選ぶこと
この本が出版された当時、万年筆は入学等のお祝いなどに使われることが多いことから出た内容。
筆者は、万年筆はプレゼントに向かないと言う。
 
現在では、万年筆をプレゼントなどとは失われた風習の一つ。
万が一、普通の人が入学祝いにもらったプレゼントを開封して万年筆が入っていたら、
「嫌がらせか?」
と相手の意図を疑い、人間関係は崩壊してしまうかもしれない。
 
加えて、少し前にあった万年筆ブームも、今はすっかり終焉してしまったので、万年筆をプレゼントという特殊な行為を目撃する確率は、非常に低い。
 
ただ、私は、なぜか金ペン堂ではプレゼント品を相談している客を見かけることが多い。
金ペン堂の場合は、品質が安定していることを知っての購入なのだろうか?
 
あと、不思議なことに、今まで見た、プレゼントを買うお客はすべて女性だった。
これは、ある意味面白い傾向かも。
 
ここで、検品力があるお店はいいのだが、問題はそれ以外のところで買うときだ。
珍しくも、万年筆をプレゼントしてもらうことになり、本人も万年筆が欲しいと思っている状況ならば、やはり、自分も一緒にお店に行って選ばせてもらうべきだろう。
 
そして、本書にあるとおり、しっかりと自分で書き味を試して購入するのがいい。
 
ふと思ったのだが、これって靴を買う時と同じことのような気がした。
履き心地と書き味。
信じられるのは、自分の感覚だけである。
 
ただ、やっぱり靴をプレゼントすることは、あまりしないな。
ということは、万年筆のプレゼントもやめた方がいいのかも・・・。
 
 
●自分が持ったときの感じを大切にすること
《細めの軸を好むか、太目を好むかは、自分の手と相談するしかない》ということ。
 
やはり、常に手にするものである。
いくら他人が書きやすいと評価しても、最終的に、自分の手と合わなければ、それは知的生産のツールとしては失格である。
 
何でもそうであるが、感触や質感は手にしてみないとわからない。
なので、私はそれができない通販を、基本的に受け付けないのである。
 
ちなみに、《多くの原稿をかなりのスピードで書く場合は、太めの軸の方が向いている》とある。
これは、今も言われていることであり、正論であろう。
 
話はそれるが、少し前に出たスタイルフィットというゲルペン。
細身がカッコよく、ためしに2本、買ってみたのだが、スタイリッシュなボディと反比例するように、長文の筆記に使うには、とても使いにくい。
細すぎて、大量の文字を書くことには向いていないのだ。
 
一方で、こうした細いペンは、手帳などと一緒に持ち歩くには便利。
要は、自分の手の感覚と用途をよく考えて選ぶのがよいということだろう。
 
 
●ペン先の太さは、主な使用目的をはっきりさせて選ぶこと
これも、今でも良く言われていること。
ブログのレビュー等を見ると、太字が面白いなどと書いてあることが多い。
ただ、それにつられて太字を買ったら、使い道がなかったなどとなっては悲惨である。
 
この当時も、《FかMが一般に好まれている》とある。
 
ちなみに、私の場合、プライベートでは圧倒的に太字率が高いが、仕事用のメインの万年筆は、M又は太めのFである。
 
最近は1週間単位で、外に持ち歩く万年筆を取り替えており、太字を持ち出すことも多いが、その太字も、細めの太字が多い。
 
 
●試し書きは、もっともよく使う字をできるだけたくさん書いてみること
自分が日常もっともよく使う用紙、例えば梅田晴夫氏の場合は、《常用している原稿用紙を持参して試し書きをするのが秘訣》とある。
文章としては、《手紙やハガキの書き出しの部分などを書いてみる》こと。
 
わたしも、大森の万年筆専門店で住所を書いて確認することをすすめられたり、パイロットのペンクリニックでは、名前を試筆紙の四隅に書いてみてくださいと言われたことがある。
 
両方とも、私のもち癖を確認するために言われたことであり、それを確認するには、やはり書きなれた住所や名前が一番ということなのであろう。
ただ、この場合の注意事項は、住所や名前を書いたら、書いたものを回収するか、きちんと処分してもらうことである。
 
 
●選び出した万年筆に、躊躇なくインクを入れてもらうこと
これは、なかなか過激な意見。
 
だが、梅田晴夫氏の言うところには、《ぜひ実行したいもの》とある。
また、万一店員がインクを入れることを渋るようなら、躊躇なくその店で買うことはやめるべきであるとも言う。
こんなお店は、万年筆を売る資格のない店であるし、仏頂面をして、渋々インクを入れるようなお店は、必ずアフターケアがわるいに決まっているとまで言い切っている。
 
現在では、問屋などへの返品について、インキを吸入していないというのを絶対条件にしているところが多い。
なので、この万年筆へのインキの吸入は表立ってやるお店はほとんどないと思う。
この本が出た当時は、インキの吸入はやってくれるところが多かったのだろうか?
 
ただ、このインキ吸入不可ルールの不思議なところは、特に吸入式の万年筆に言えることなのだが、つけペンで試筆したものを洗浄するときに、水を吸ったり吐いたりしながら洗浄している。
これってインキを吸入するのとほとんどかわらない気がするのだが・・・。
(これまでのお店で、唯一、ダイヤストアは、きちんと洗浄専用のデモに付け替えて洗っていた)
 
ただ、気の利いたお店では、ペン芯までインキを含ませていますと、インキの流れを確認できるようにしてくれるところもある。
氏の言うとおり、こういうお店は、やはり信頼もアフターケアも最高のお店である。
 
●しばらく使って不満があれば、とりかえてもらうこと。
これも、なかなかスゴイ意見。
 
使った上で返品された万年筆は、どうみても中古品だとおもうのだが、交換してくれたお店というのは、そういうものを新品として売るのであろうか?
 
よく、返品、交換は一週間以内にレシートと一緒にというお店があるが、返品された品が普通に店頭に並ぶのかは非常に気になる。
 
最近では、楽天の野村監督が、誕生日にもらった1,000万円の時計を、ゲンが悪いとかいう理由で返品すると言っていると、何かで読んだ記憶がある。
不良品以外で返品というのは、なんだかものすごく抵抗があることなのだが、世の中、返品商品が大量に流通しているのが普通なのだろうか?
 
気になるところである。
 
ちなみに、イルビゾンテは絶対返品を認めないので、買う場でお客に厳しい検品を求める。
神経質なわたしは、やはりこういう手法が安心なところである。
 
   ◇
 
と、まあ、過激な意見も含めて色々とアドバイスがあるが、要は、お店できちんと自分が確認して買おうね!ということか。
35年たっても、基本は同じようだ。
 
成功の秘訣は、何事も基本を忠実に守ることである。
納得いくまで試筆をして、自分にとって最高の一本を選ぶ。
手間がかかるが、これが良い万年筆を手にいれる基本であり、最短の道なのだろう。
更新日時:
前のページ 目次 次のページ



tetyou_bag@hotmail.comtetyou_bag@hotmail.com