2006年3月14日(火)〜19日(日)の6日間、三越日本橋本店、本館7階催物会場にて開催された、第8回世界の万年筆祭の参加レポートです。
1
万年筆ファンにとっての、大イベントの一つ、「世界の万年筆祭」が今年も日本橋三越本店で開催された。
このイベントに合わせてか、万年筆に関する他のイベントも同時期に開催されているもよう。
今年で第8回とのことだが、世の万年筆ブームに乗ってか、会場は、ものすごい熱気に包まれていた。
と、こんな風に書くと、毎年行っているようだが、わたしは今回初めてこのイベントに参加。
万年筆に興味を持ち初めて約一年。
毎年、この時期に開催されているようだが、第7回のイベントについての記憶は全くない。
本当に、興味がないと琴線に触れてこないということがよくわかる。
日本橋の三越自体に行くのも初めてなのだが、周りには日銀本店や三井本館があり荘厳な雰囲気。
三越といえば、銀座、広島、福岡、高松、松山に行ったことがあるが、なんだか別もの。
せっかくなので、グルッと建物の周りを徘徊してみた。
車寄せにはたくさんのハイヤーがあり、車の種類もなんだか凄い。
お店の中も、せっかくなので各階うろついてみた。
上得意様の紙袋を大量に持ち、お客様について回る店員さんの姿も目立つ。
TVでは見たことある、三越の上得意様の購買単価を増やすという戦略だと思うが、あらためて目の当たりにすると、すごい。
そんな感じで、興味津々、店内をウロウロしながら、自分の知らない色々なものに感動し、ゆっくりと7階の万年筆祭の会場へと向った。
万年筆のイベントということで、どちらかといえば暗めのライティングの会場を想像(丸善の本店のような)していたのだが、実際は、明るいどころか眩しいくらい。
非常にオープンな雰囲気の会場にまずビックリした。
◇
今回のわたしの目的は、次の2点。
@試し書き
日頃なかなかお店でお願いできないようなものに挑戦してみたい。
計画としては、
・ペリカンスーベレーン800の3B、BB、F、EF
・ペリカントラディショナルM250のBB、B、F、EF
(これが今回の本命)
・モンブラン149と146
・ファーバーカステル ペルナンブコ
Aセーラーのペンクリニックとインク工房
期待に胸を膨らませ、わたしは会場へと足を踏み入れた。
2
まずは、ペリカンブースの状況。
ここでは、ペリカンの万年筆診断士、山本英昭氏による万年筆相談が常設で開催されていた。
常にお客さんが座っていて、これがまたとても珍しそうな万年筆を持ってくる。
しばらくは、ガラスケースを覗くふりして、相談コーナーの傍に立って、お客さんが持ってくる万年筆と山本氏の相談に全神経を集中。
お客も、月光などの珍しい限定万年筆を持ってくる人が多かったが、山本氏の薀蓄のある応対も凄い。
来年も氏がいらっしゃるのなら、ぜひスーベレーンの600を持っていってみたい。
相談コーナーには人が常にいたが、ショーケースの方には人がいない。
これは、試し書きにちょうどいいと思い、お姉さんに頼もうとすると、あらかじめ試し書き用に物凄い数のスーベレーンがショーケースのカウンターの上に置いてある。
置いてあったのは、1000、800、600、400の4種類のスーベレーン(すべて緑縞)全てにペン先がBB、B、M、F、EFの5種類。
4×5で全部で20本のスーベレーンが自由に試し書きできるようになっていた。
ちょうど他のお客もいなかったので、お姉さんに断って持参したモールスキンに試し書きさせてもらった。
前から一度やってみたかった、全ペン先の書き比べ。
これだけでも、ここに足を運んだかいがあった。
3
続いて、カウンターには準備されていない、800の3Bを出して貰う。
いつになるかわからないが、800の太字は入手したい一本なので、ぜひこの機会に試しておきたかった。
(3Bを置いていないところも多いし・・・)
お姉さんは805のシルバートリム青縞を出してくれた。
年末に600のBを購入して、太字の魅力に取りつかれてしまったが、実際に書いてみて3Bは、わたしには使いこなせないと思った。
正直、3Bのペン先で日本語を記述するのには無理があると思うし、実用として使うのならばBB以下で夢を持とうと思う。
次に、この春に入手しようと考えていた、買い本命のトラディショナルM250のBB、B、F、EFの試し書きをお願いする。
これだけ、オープンな雰囲気で他のお客がいなかったからできるワザ。
どうも、わたしが訪れた時にブースにいたお姉さん、本来の担当者の食事休憩のピンチヒッターらしく、わたしがお願いしたペンを中々探し出せないでいる。
そのたびに、相談中の山本氏が、そのロッカーの何番目の棚の奥とか指示を出していた。
このブース、三越の店員が中にいるが、どうも仕切っているのは山本氏一人で、モノがどこにあるのかも、氏しか正確に把握していない様子。
まあ、あまりにも大量のペリカンが所狭しと収納されているので、しょうがないのかな。
4
お姉さん、わたしがお願いしたトラディショナルをさがしているのだが、BBがないないと言いながら、棚の中をひっくり返している。
そして、おもむろにカタログを取り上げ、妙に納得した様子で、トラディショナルにBBはありませんと言う。
お姉さんが開いているのは普通のペリカンのカタログの後ろの方のページ。
確かに、トラディショナルはBまでしか用意されていない。
あらかじめ、手帳に下調べして、この万年筆祭りでやりたいことをリストアップしていたのに、どこかで見間違えたのだろうか?
まあ、しょうがないということでB、M、Fを試し書き。
サイズは同じでも、ペン先の形状が違うのか、スーベレーンの400とは違った書き心地。
あれこれ書いていると、休憩から担当の店員さんが戻ってきた。
わたしは、トラディショナルの黒を狙っているのだが、スーベレーン400の黒の軸と何が違うのか前から気になるので聞いてみた。
ペン先や金のリングが一本少ないのは見てわかるが、軸はどう見ても同じにしか見えない。
想像どおり、店員さんの回答は、軸は400も250も黒は同じとのこと。
やはり、トラディショナルは黒狙いがお得かと自分を納得させ、初日のペリカンブースは何もすることなく試し書きで完了。
自宅に戻り、ペリカンの2005のカタログを見るとトラディショナルのBBはちゃんとある。
加えてOM、OB、OBBまであったが、2006のカタログでは、EFからBまでになってしまっている。
◇
続いてセーラーのブース情報。
実は、年末に買ったスーベレーンのM600。
書き出しでたまにかすれることがあるので、ペンクリで見て貰おうかギリギリまでなやんだが、今回はパスする事に。
いろいろなサイトで調整して書き味がよみがえったという感想を目にするが、やはりどういう工程で作業を行うのか、先に確認しておきたかったので、今回は他の方が調整してもらうところを眺めさせて貰うことに。
あと、調整をして貰う前に、ルーペを買って調整前の状態を自分の目で確認して、調整後に何が違うのかも比較して見たいということも、今回はパスした理由。
いつか、ルーペを入手して、自分のペン先の状態を確認できたら、調整をお願いしてみたいと思っている。
ところで、今回のペンドクター、セーラーのサイトによると、神様の息子さんらしい。
http://www.sailor.co.jp/NEWS/060213/index.html
しかし、ペンクリの席にはヒゲを生やした中国のマジシャンみたいなオジサンが一人座っているだけ。
急きょピンチヒッターの先生がこられたのかと思いながらよく見ると、ご本人らしい。
セーラーのHPの写真は、いったいいつ撮影したのだろうか?
わたしが訪れたときには、思ったより人は多くなかった。
先生の前に椅子が2つ。
そして、後に待ち合い用に2つ椅子が用意されていたが、ちょうど常にその椅子が一杯になる程度で回転していた。
先生の目の前には、なんだがグラインダーみたいな機械がグリグリ回っていて、指先の感覚でペン先を削り出しているよう。
先生の指先は金属粉が染み付いているのか、鉛色をしていた。
洗ったら取れるのだろうかと、妙な心配をしてしまう。
一方、インク工房の石丸氏はHPの写真どおりの方。
ところで、会場を訪れた時、新館の方から行ったので、最初に目に入ってくるのはこのインク工房。
ちょうど会場に入ると、可愛い女性がインクをオーダしていた。
こういう若い女性にまで、万年筆ファンが広がっているとは、本当に世の中で万年筆がブームになっているのだとあたらめて関心。
どんなインクをオーダされたのかなと思って眺めると、とても綺麗なグリーンのインクを作ってもらっていた。
女性の後は、もう一人お客が待っているだけだったので、わたしも、オーダーしてみようかと思いながら眺めていたのだが、なんだか、次の男性がレアな注文をしだし、時間がかかりそうなので、あきらめる。
来年も開催されるのならば、わたしもぜひお願いするべく、市販されていないお気に入りの色を考えておこう。
5
今回の万年筆祭で嬉しかったことの一つに、試し書きのコーナーがあった。
アウロラ、ファーバーカステル、モンテグラッパ、ペリカンをわたしは試してみたが、試し書きできるペンは、国産、輸入を合わせて40本近くは置いてあったのではなかろうか。
わたしが訪れた時は、運良くガラガラだったので、ここでも心ゆくまで試し書きをすることができた。
買う気までは、まだおきないが、書いてみたいイタリアペンなど、今回はこのコーナーで思いきり堪能することができた。
あと、会場内(20周はしたと思う)をうろついていると、各ブースの店員さんが、お出ししますよと声をかけてくれる。
ここぞとばかりに頼んだのが、まずはファーバーカステル。
以前、コラムか何かで、モンブランの試し書きは頼みにくいと書いたが、それ以上にファーバーカステルの伯爵シリーズも頼みにくい。
なので、今回も言い出しにくかったのだが、店員さんが声をかけてくれたので、ペルナンブコのM、F、EFの3本をお願いする。
ペン先はかなり柔らかく、EFの針のようなペン先だと、筆圧の強いわたしはグニャっとやってしまいそう。
このペン、初めて書斎館でペンを購入した時、顧客カードに記入するために借りたペン。
初めての高級ラインの万年筆で書いたのが、このファーバーカステルで、その書き味に大きな感動を憶えた。
いわゆる、初めての味の感動というヤツだ。
なので、このブランド、わたしの頭の中の片隅に常にあり、いつかは入手したいあこがれのブランドなのだ。
あと、試し書きをしたのはモンブラン。
先月、九州の小倉で初体験して以来、その書き味が忘れられなくて困っているのだが、今回はその経験を踏まえた上で、あえて、もう一度、146のBとMの試し書きをお願いした。
146のM。
システム手帳の欲しいモノリストに書き込んだ。
ペリカンの800とモンブランの146の対決、一体どちらが勝利するのだろうか。
6
こんな感じで、会場の中をウロウロしていたのだが、他に目についた事を幾つか。
まず、ハートラインプロジェクトの生原稿の展示。
とくに会場に訪れるまで、展示されていることが知らなかった。
元TBSの雨宮アナや猪瀬直樹の直筆が掲示されていた。
インクのコーナーが貧弱だったのがさびしい。
いわゆる、近所の文具屋で売っているようなインキしか置いていない。
お祭りなのだから、お祭りでしか入手できないものを置いて欲しいものだ。
本のコーナー、時期的にいい時に発行された古山画伯の万達が山積みになっていた。
その同じコーナーに久米宏が表紙のLapitaが積んで合ったのが解せない。
時間がもったいないので、会場でLapitaを手にすることはしなかったが、気になったので自宅近所の本屋で確認すると、また万年筆付録の企画を計画しているみたい。
「赤と黒」というタイトルのよう。
7
今回のイベント、試し書きとセーラの工房を覗いて帰るだけで、基本的に手ぶらで帰る予定だったのだが、緊急事態が発生したため、手ぶらでかえれなくなってしまった。
入り浸っていたペリカンブースの端っこには、トラディショナルのM200スケルトンの一部色がが生産中止になって、それらの色は在庫限りの販売になるという案内が・・・。
こう書くと、のこる色も幾つかありそうと誤解をうけそうだが、残るのは青一色とのこと。
確かに2006のカタログを確認すると、トラディショナルの200は青一色になっている。
結構ショック!
三越の店員さん情報によると、すでに本国では昨年の11月で青以外の色の生産を中止したらしい。
この春のお買物で赤を入手しようとしていたわたしは、寝耳に水の話でチョッとあせった。
特に、赤は品薄で、ペリカンジャパンにはもう在庫はなく、全国の店頭でも3、40本くらいしか残っていないのではとのこと。
予定外だが、緊急事態なので、赤を確保する事に計画変更。
Bが欲しかったのだが、在庫であったのはMとF。
ペン先は交換可能で、アンバーにBがついたものがあるのでペン先の交換はしますと言われたが、デフォルトで装着しているものの中から選ぶ事に。
すでにダークグレーでMをもっているので、今回はFをセレクト。
店員さんにお願いして、Fの在庫を全部(といっても3本だが)出してもらい、すべてで試し書きをさせてもらった。
同じモノを、比較のために書き比べるのは初めてだったが、あまりにも個体差があるのにビックリ。
一本はEFかと思うくらいの極細だし、もう一本はペン先にざらつきがあった。
ということで、自分なりに最上の一本を選択したつもりだ。
これを、と店員さんに伝えると、インキを一本サービスしますとの事。
インキとペンが一緒にセットできる、例の大きい箱を準備しだしたので、インキは箱のまま付けて欲しい旨伝え、ペンの収納も小さい箱にチェンジしてもらう。
色は、もちろんブラウンを選んだ。
近いうちに買おうと思っていたので、この一本のサービスは嬉しい。
あと、店員さんの個人所有のデモンストレーター(いわゆる本当のスケルトンのヤツ)でペン先交換のワザも教えてもらえた。
初めて参加した万年筆祭。
わたしにとって、とても得るものが大きい、至福の時間をすごすことができた。
来年もぜひ参加したいと思う。
(第8回 世界の万年筆祭:おわり)
これは、2006年に手帳とカバンのホームペーヂの特集ページ、「万年筆を買いに」にUPした「第8回 世界の万年筆祭」を、加筆修正したものです。
1〜7 いずれも2006/03/19更新
|