【特集】万年筆を買いに

■手帳とカバンのホームペーヂ
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筆記具関係のコラムのページ
私のお気に入りのペンや購入記の紹介
●万年筆を買いに(Pelikanの古い万年筆)

今回のGW行動計画の一つに、デッドストック物の探索があった。
狙っていたのは3つのインキ。
 
一つ目は、シェーファーの、ジャムビンタイプのインク。
九州・小倉の文房具店でモンブランの試し書きをさせてもらった時に、お店で使われていたもの。
それ以来、探索が続いている。
パレットのような小部屋がボトルの口の部分に付いているのが特徴。
それ依頼、万年筆の取り扱いがあるところで尋ねてみるが、今のおむすびタイプのやつしか置いていない。
 
二つ目は、モンブランの限定インキ「ラブレター」。
これも以前カートリッジは運良く入手できたが、ボトルインキはどこにも見当たらない。
 
三つ目はペリカンのボトルインキ。
通常のインキボトルの形ではなく、四角くて前方にペンが置けるような形状になっているもの。
幾つかの万年筆サイトで見かけることがあるのだが、中身はどうもロイヤルブルーか、ファウントインディアという極黒インキの2種類があるみたい。
しかし、一体いつ頃販売されていたものかが不明。
店頭で見かけることもなく、これも、探す手立てが全くない。
 
自分中で、入手難易度は、後に紹介したモノほど高いとランク付け。
 
いずれも、当てがあるわけでもないのだが、近所の文具店に眠っていないかなと淡い期待を抱いてGWに突入した。
 
 
 
今回のGW予定のメインは、自宅の整理とワックスがけ。
なので、その合間をぬって、近所の文房具店を回ってみようと企んでいた。
 
しかし、近所に数件ある文房具店、建物はビンテージなくせに、中に置いてあるものは結構新しいものばかり。
そういうお店は、まずお客がいないので、入店すると絶対話しかけてくる。
 
そこで、古いインキを探していると告げると、とある店主は「古い」という言葉が気にくわなかったのか、思いっきりムッとする始末。
置いてあるモノは、ホコリがかぶって思いっきり回転が悪そうなのだが、古い物を置いていると思われたのが気にさわったのだろう。
 
まあ、そんか感じで、近所の古びた文房具店は全滅。
そもそも、そういうお店は、万年筆といってもプラチナかパイロットメインでしか置いていないので、わたしの欲するもの自体がおいてあるわけがないという結論に達した。
 
残る当てといえば、近所にある輸入雑貨のお店。
今の街に越してきた10数年まえから、その雑貨店があるのは知っていたが、行ったことはなかった。
質の良い木の玩具を扱っているということで近所では評判が良かったが、文具が置いてあるかは不明だったのだ。
 
まったく期待をしていなかったが、家族と映画を見に行った帰りにお店の側を通ったので、ついでに寄ってみた。
 
お店のほとんどは、玩具で埋めつくされていた。
そんなに大きなお店ではないので、グルッと店内を回って見ると、棚一つだけ文具コーナーがあった。
 
ステッドラーの色鉛筆や、粘土など、やはり幼児向けの欧州系文具が中心なのだが、隅にポンと古そうなペリカンのインキが置いてあったのだ。
 
 
   ◇
 
 
その輸入雑貨店の中は、静かな音楽が流れている。
お店のカウンターの中には、ヨーロッパ系のオーナーと思われる女性。
お客はわたしと家族だけ。
 
棚の隅に眠っていたお宝を見つけたわたしは、思わず奇声を発しそうになった。
 
置いてあったインキは、小さめのボトルのブリリアントブラウン、ターコイズ、バイオレットの三色と、通常の大きさのボトルのブリリアントレッドがあった。
 
しっかりとMade in W-Germanyと書いてある。
ということは、最低でも16年以上前のモノ。
 
念のため、箱の中を確かめてみると、ブラウンはほぼ100%の量がボトルの中に確認できるが、ターコイズは半分、バイオレットにいたっては、五分の一の量になっている。
長い期間、店頭で保存されてきた中で少しずつ熟成していったのだろう。
 
万年筆のインキとしての実用はないが、このパッケージだけでも買いである。
中身がちょっとだけ残っていただけでもラッキー!
 
探し物リストに含まれているブツではないが、こんなものを目の前にしたら当然確保だろう。
でないと、あとで後悔するのは目に見えている。
 
こうなると、他にお宝が眠っていないか、店内をくまなく探したが、どうもこのインキ以外、ビンテージの香りがするものはない。
 
価格を見ると500円の値札が貼ってある。
仕入れた時から、価格改定をしていないのだろう。
 
3本で1,500円。
使えないものと思えば高い買い物かもしれないが、わたしにとってみれば、かなり嬉しい。
 
熟成バイオレットやターコイズは、いずれガラスペンでゆっくりとその色味を楽しむ予定だ。
 
   ◇
 
インキの清算時、カウンターのオーナに、話しかけてみたら、どうも日本語が話せる様子。
 
なので、他に文房具は置いていないかと尋ねると、どんなものが欲しいの?と流暢な日本語で聞いてくる。
 
ペンがあれば一番嬉しいと言うと、カウンターから出てきた女性は、さっきのインキが置いてあった棚の奥からなにやらゴゾゴゾと箱を出してくる。
 
わたしの緊張感は、インキを発見した時以上に高まった。
 
こんなのならあるけど、今、セールで5割引きで5千円ね!と言う。
彼女が手にした箱は色あせており、その退色した箱がまた年代を感じさせる。
 
見た事のないペリカンのロゴマークが印刷されている箱だったのだ。
 
 
   ◇
 
 
その箱を手にして、裏を見てみると「M150」と書いてある。
M150なら8,400円なので、半額で4,200円じゃないか?と思いつつも、箱の重さがチョッと気になる。
 
こちらはMade in Germanyとあるのでそんなに古いものではなさそう。
 
M150なら、わざわざ買う必要もないしと、先ほど、箱を取り出してきたときの緊張感はかなり薄れかけた。
 
M150か?
ケッと思いながら、念のため、箱を開けてみる。
 
しかし、箱を開けたとたん、私は凍りついてしまった。
 
またまた、奇声を発しそうになった。
万年筆はどうでもいいが、あのインキボトルが目の前に突然現れたのだ。
 
まさに、最も入手が難しいと考えていた、ペリカンの怪しい、四角いインキボトル。
 
 
それが、私が手にした退色した箱の中から現れてきたのだから、ビックリするのも当然。
しっかり、ペンを置く溝もある。
 
一緒に入っている万年筆は、黒いボディのM200っぽい雰囲気。
まあ、M150もM200も見た目は同じだし・・・。
 
万年筆の金属部分は長年、お店の中で放置されていたみたいで、プツプツとくすみが浮き上がっていた。
さわってみると、くすみの部分がザラザラする。
 
これで5千円はいくらなんでも高いだろうと思った。
 
ダメ元で、インキだけ欲しいんだけどというと、それはダメという。
3,000円なら買うけど告げると、本当に処分できずに困っていたのだろう。
あっさりと交渉成立!
 
万年筆とインキのセットで、3,000円でOKという。
 
この時、わたしの頭の中にはインキのことしかなかった。
ずっと探していた謎のインキが目の前にいきなりあらわれたのだから、まあしょうがない。
 
3,000円というのは、インキに出してもいい上限だったのだ。
 
 
   ◇
 
 
交渉成立後、判断能力が安定してきたのか、万年筆の方にも注意が向ってきた。
金属部分は経年の影響で、やはり、かなりくすんでいるが、キャップを外してみて、オヤっと思った。
 
何だか、現行のトラディショナルと雰囲気が違うのだ。
 
キャップのPelikanの刻印の部分は、ただのGERMANYなので統一ドイツ後の製品。
しかし、インク窓の部分の色が、今のものと違うのだ。
 
今の黒ボディのトラディショナルやスーベレーンのインキ窓はいずれもグリーンのスケルトン。
しかし、このデッドストックはグレーのスケルトン窓なのだ。
これは、かなり雰囲気が異なって見える。
 
キャップの金リングも現行品と違う。
トラディショナルは金リングが一本で、スーベレーンが金2本リングというのが現行品なのだが、このデッドストックは金2本リング。
 
そういえば、以前「何呉とものに」さんで、クリップ部分のくすみを取るのに、MUJIの貴金属ミガキが便利いう記事があったのを思い出した。
 
http://blog.kansai.com/nanikure/319
 
クリップなどの金属部分のくすみが、何とかなるとすれば、この万年筆けっこういいかもという気になってきた。
 
そうなると、インキだけで3,000円でいいモノ見つけたと思っていたのに、珍しい万年筆まで付いてくるとなると、かなりのお買い得。
 
オーナーの女性に、この沸きあがるウキウキ感を悟られないうちに、さっさと清算を済ませて店を後にした。
 
自宅に帰る前に、無印に寄り道して貴金属ミガキを購入。
 
早速磨いて見ると、ブルーグレーの貴金属ミガキが面白いように黒ずんでいく。
第一印象がめちゃくそ悪かったクリップのくすみは綺麗にとれて、ピカピカのあのペリカンのくちばしが目の前に現れた。
 
GW中、このピカピカのくちばしを眺めて何度ニヤニヤしたかわからない。
 
 
最初はインキ瓶に「ハアハア」言っていたのだが、今では万年筆の方が愛着が強い。
 
いったいいつの時代のモノなのか、正確なところは不明だが、オークションを色々と検索してみると1990年代前半のものみたい。
 
箱にはM150と書かれていたが、現行のトラディショナルM200と同じ長さなので、その当時は、現行のM150より大きめだったのか?
 
天ビスは、現行のようなプリントではなく、きちんと掘り込んである。
コストはかかるかもしれないが、この掘り込みの方が、かなり雰囲気がいい。
 
ペン先は、見た目、まったくトラディショナルM200のペン先と同じ。
23金ゴールドプレートというやつだろう。
キャップのクリップなど、むき出しの部分はくすんでいたが、ペン先は綺麗なゴールドが保たれており、使うには問題なさそう。
 
太さはFとなっているが、わたしが所有するトラディショナルのFと比べると、見ただけで、今回入手した方がかなり太い。
書き比べて見ないと、正確なことは言えないが、たぶんMと同じくらいの太さではなかろうか?
 
最初は、いつものウエルカムの儀式でロイヤルブルーを吸入させるが、試用期間が終わったら、モンブランのレーシンググリーンを吸入する予定。
 
なんともお買い得感いっぱいの一本。
 
このGWは、大量のレトロインキと、これまた珍しい古い万年筆。
最高の収穫の一週間であった。
 
 
 
 
●万年筆を買いに(Pelikanの古い万年筆:おわり)
これは、2006年に手帳とカバンのホームペーヂの特集ページ、「万年筆を買いに」にUPした「GWの掘出し物(Pelikanの万年筆)」を、加筆修正したものです。
 
初稿 2006/05/07更新
更新日時:
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