ペリカンの万年筆の大きな魅力の一つに、ペン先を自分で取り外しできることがある。
このことを初めて知ったのは、書斎館でのこと。
初めて購入したペリカンの万年筆は、スーベレーンのM400なのだが、色々な太さのペン先で、あれこれ楽しく悩んでいた。
その時、応対してくれたお姉さんが、
「ペリカンはお店でペン先を交換できるので、ご希望のペン先が決まったら、こちらの軸のものとペン先交換しますね」と、わたしに、にこやかに話しかけてきた。
ペントレイの上には、わが家にやって来るべくピカピカに輝くM400のボルドが鎮座していた。
ありがとうございますと笑顔で答えたものの、
「ゲロロ?!この姉様が『ペン先引っこ抜いて交換』なんてワザを持っているのかよ」と内心引きつっていた。
そんな不安をかかえながらも、最上のペン先を選んだので、覚悟を決めてお姉さんに選んだペン先を伝えた。
『どうやってペン先を引っこ抜くのか?』
『大事なペン先、絶対に曲げるなよ!!』
引きつりながら、彼女の手元を睨みつけていたと思う。
すると、彼女は涼しそうな顔をして、ペン先を押さえ、軸をクルクルと回してペン先ユニットを取り外して、もう一つの軸にあっという間にペン先を取り変えてしまった。
オオ!コレがツールレス保守というヤツか。
情報処理試験の問題集でしかみたことのない言葉が、頭の片隅によみがえってきた。
感心半分、ネジの隙間からインキが漏れやしないかという不安が半分の中で、その交換作業は終了した。
ちなみに、スーベレーンは2本所有しているが、ずっと同じインキを使い続けているので、ペン先ユニットは、自分で一度も外した事がない。
しかし、その一方で、同じペリカンのトラディショナルは、色々とインキを取り変えているので、ペン先ユニットを自分でクルクルと取り外して洗浄することが多い。
初めて自分で外す時は、少々勇気がいったが、昨年の万年筆祭の時に三越の店員さんにユニットの外し方を教えていただいたので、その通りのやり方でやるようにしている。
最初にユニットを外したきっかけは、グレースケルトンのペン先ユニットと、本体のネジ部分にインキが入り込んでしまったため。
ティッシュをコヨリ状にしたりして、何とか吸い出そうとしたが、どうしても完全除去できない。
そんな状態が、神経質な性格で許容できるわけがなく、思いきって自分でもユニットを外してみることにした。
最初の一ヒネリは緊張したが、あとは慣れ。
昨年末に、M205スケを入手したが、このペンもインキをあれこれと入れ替えている。
そういう使い回しの中で、ペン先ユニット取り外し洗浄は、神経質な私にピッタリの洗浄法。
綺麗さっぱり、隅済みまで洗えるのが気持ちが良い。
ただ、このペン先ユニットの取り外し、人によってはやらない方が良いという人もいるので注意が必要。
書斎館の店員で、青スケを購入した時の店員さんは、自分ではやらない方がよいと言っていた。
ペン先ユニットのペン先とペン芯がずれてしまう恐れがあるというのが、その理由とのこと。
しかし、その一方でペン先をドンドン交換して販売することを売りにしている、御徒町の有名店もある。
そのお店、聞くところによると、ペン先ユニットだけでも、かなりの隠しダマを持っているらしい。
ペン先ユニットの取り外し、個人的には、『必要最低限の取り外しを自己責任で』ということだと考えている。
このユニット取り外しの魅力は、洗浄時だけではない。
御徒町のお店ではないが、同じ規格のペンを所有していれば、ペン先交換を自分でできるので、軸とペン先の組み合わせパタンが広がることだ。
なので、今回、初めてペン先の交換をやってみることにした。
購入当初の状態は、青スケがペン先BB、赤スケがペン先F。
昨年の3月に、万年筆祭で色スケがなくなるという情報を知り、慌てて市場在庫が少ない中で確保に動いたため、軸色とペン先の組み合わせを選ぶまではできず、好みの色の確保だけで精一杯だった。
しかし、本当の希望は、青は細字、赤は太字が欲しかったのだ。
なので、いつか自分でこの2本のペン先を交換しようと思っていたのを、ようやく実行した。
軸の色とペン先の太さの組み合わせも、万年筆のイメージを構成する重要な要素だと思う。
これでやっと、わたしの頭の中で思い描いていた状態になってくれた。
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