【特集】万年筆を買いに

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私のお気に入りのペンや購入記の紹介
●万年筆を買いに(金ペン堂・ペリカンM400購入記)

ペリカンの万年筆、スーヴェレンのペン先が変わってしまった。
何だか、もう少し話題になっても良さそうな気がするのだが、ショップでもほとんど話題にはなっていない。
 
ペン先形状の変化を、販売時にきちんと説明していたのは、神田の専門店くらいだろうか。
 
最初にこの兆候に気がついたのは、三越本店の「世界の万年筆祭」。
そう、今思えば一年前、最後の万年筆祭での出来事だ。
 
その日は、いつものように、ペリカンのブースで師と楽しくお話ししていた。
 
椅子に座る前に前に、ショーケースの中をのぞいていたのだが、特に目玉商品らしきものは出ていない。
万年筆祭の場合、目玉品は尋ねると、奥から出てくることが多い。
 
なので
「今回の目玉は何ですか?」
と尋ねてみる。
 
「あまりないのですよね・・・」
と仰りながらも、何かゴソゴソとやっている。
私は、いったい何が出てくるのだろう?と固唾を呑んで見守る。
この、微妙な待ち時間がいいのだ。
 
師は一本のスケルトン万年筆を出してきた。
そう、M800のスケルトンモデルである。
 
別に、何にも目玉じゃねーじゃねーかよwww。
 
と思いながら眺めていると、私の腹の内が伝わったのか、
「まあ、手に取ってみてください」との師。
 
毎回、この手で気がついたら紙袋を持って帰っているので、注意しなくてはならない。
 
今回は、いったい何が潜んでいるのか?とゆっくりと確認。
 
師の意図は、すぐにわかった。
クリップのところについている、ペン先の太さを示す小さなタグ、そこが手書きで修正されている。
 
見ると「3B」と書き換えられているのだ。
 
M800透けに3Bなんてあったっけ?
と思いながらペン先を眺めていると、確かにペン先にもちゃんと3Bの刻印。
 
師曰く、ペン先ユニットのねじ切りのピッチの関係で所定の位置(M800透けは、ペン先を上に向けた状態では、軸に掘られた文字は下に来るのがデフォルト)に収まるのは、1/4の確率とのこと。
ちょうど、所定の位置に納まる、最高の3Bのペン先を探してきたのですよ、と仰っていた。
 
ちなみに、私のM800透けは、デフォルトと文字の位置を逆転させたものにしてもらっている。
せっかくの文字デザインなので、、書いているときに見える状態にしたいからだ。
(まあ、この文字が邪魔だというかたもおられるのが難しいところなのだが・・・。)
 
で、師に試筆を薦められたM800、ペン先をよく見て欲しいと言う。
最初、何を言わんとしているのか、よくわからなかったのだが、ペン先をじーっと眺めていて気がついた。
何だが、形が変なのである。
3Bなのに丸い・・・。
 
私が気がついた様子に
「大井町みたいでしょう」
と一言。
 
そう、まさに大井町で研いでもらったような形状をしているのだ。
しかし、冷静に考えると、ここは三越。
師に、
「これはどういう経緯のペン先なのでしょうか?」
と尋ねてみると、何のことはない、ペリカンからの出荷デフォルトの形状とのこと。
 
この時のお話しでは、3Bがなぜか丸研ぎ状態に仕様変更になったらしいとのことだったが、それ以上の話はなかった。
 
ただ、気合をいれてセレクトされたペン先である。
その書き味は素晴らしく、お願いすれば、スケルトン以外の軸に装着しなおしてもらうこともできたのだが、別に買うものがあったので、この時は、これで終わってしまった。
 
そして、ペン先の変化にも気に留めることなく・・・。
 
   ◇
 
再び、このペン先の形状変化に直面したのは、M400の茶縞を神田の万年筆専門店に購入しに行ったとき。
ここで、細字を含むすべてのペン先の形状が変わったと教えていただいた。
 
今までに比べて、イリヂウムの量が多くなっており、同じ太さ表記では一段太い線が書けると考えてくださいと言われた。
店主おすすめの、ワラマンのブルーブラックで筆記したサンプルを拝見させてもらうと、明らかにその雰囲気が違う。
 
訪問前は、太さをBとMで悩んでいたのだが、どう見ても丸研ぎのBは太すぎと思いMを注文。
検品が終わった万年筆を受け取りに行って改めてびっくり。
玉のようなイリヂウムが付いており、想像以上に太い。
 
自宅に戻り、以前、大井町の専門店で研いでいただいたM400のBと比較しても、同じくらいの玉の大きさ。
そして、同程度の線幅が引ける。
 
それ以来、丸善などの店頭に置いてあるペリカンの太字を注意して眺めていると、ショーケースの中に収まった状態でも、玉のような丸研ぎ状態になっているのがわかる。
 
店員さんに話を振ってみても、詳細はよくわからないが、最近書きやすいペン先にかわったみたいですねと言われることが多い。
 
確かに、丸研ぎの万年筆は書きやすい。
トラディショナルの太字も丸研ぎだが、これはこれで好きだ。
しかし、スーヴェレンのペン先について言えば、角研ぎのまま残して欲しかったなと思う。
 
ということで、なくなる前に、角研ぎの太字を確保することとした。
M800、M600は角研ぎの太字をすでに所有している。
なので、M400の太字にターゲットを絞る。
 
続いて、軸は何にしようかと迷うのだが、ここは今までに所有していない黒軸とホワイトのなかでの選択を考えるが、黒軸はM250を所有しているので、ホワイトを選択。
 
このホワイトの茶縞も非常に美しいと思う。
 
もちろん、入手先は検品力に絶大な信頼を寄せている神田の金ペン堂だ。
 
ちなみに、この文章に書いている出来事は、もう半年以上も前のこと。
 
なので、わたしが入手に動いた時には、角研ぎはまだ店頭にある程度の数が残っており、ペン先の微妙な太さも相談させてもらうことができた。
 
金ペン堂は、こういうフォローもきちんと対応してくれるのが嬉しい。
 
たぶん、今現在では、まともな角研ぎ太字は、ほとんど市場に残っていないかもしれない。
 
今回は、御徒町の女性店主の助言に従い、
「なくなると欲しくなる」
よりほんの少し、早めのスタートを切ることができた。
結果、選択肢の中から、最上の逸品を入手できたと思っている。
 
ただ、物欲に従う行動パタンは何も変わっていないなと思う。
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