【特集】万年筆を買いに

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私のお気に入りのペンや購入記の紹介
●万年筆を買いに(ペリカンM800購入記)

経済産業省の情報処理試験「システムアナリスト」の合格記念に、ペリカンの万年筆、スーベレーンの800番を日本橋の三越本店で購入した。
 
軸は緑縞。
ペン先はB。
 
持っていない青軸にしようか最後の最後まで迷ったが、やっぱり太字のペンは緑軸が似合うとの結論で、今回は緑縞にした。
青軸は、シャープなイメージがあるので、いつか細字を買う時の楽しみに取っておく。
 
 
わたしがモノを買う場合、できるだけ記念すべき出来事と結びつけるようにしている。
ちなみに、最近の記念モノといえば、今、現役で使っているBREEのカバン。
これは2年前に、同じ情報処理試験「上級シスアド」の合格記念に入手したものだ。
 
万年筆に興味を持つと、だんだん太いペン先、太い軸に興味が移っていくと言われる。
わたしの場合も、全くその法則に当てはまり、400番のペン先Mからスタートし、600番のペン先Bと順当に入手。
いつかお祝いごとがあるときは、ぜひとも800番の太字が欲しいと思うようになっていた。
 
そのための下調べは、すでに1年半前から行ってきた。
本などでの研究はもちろん、フィールドワークとして、日本全国の色々なお店で万年筆売場を見つける度に、800番の試筆をお願いしてきた。
この一年半で試筆させてもらった800番は、余裕で100本を超える。
 
アホか?
と思われそうだが、私の場合、衝動買いをすることはまずどない。
欲しいと思い、購買行動に至るまでに2〜3年というのはザラ。
その間に、暇をみつけてはダラダラと情報収集しているのだ。
 
当然、その情報収集期間で、熱が冷めてしまうものもたくさんある。
しかし、ペリカンの800番に対する熱は、一年半の間、冷めることはなかった。
今回の物欲は本物だと思う。
 
良品の800番を求めて、購入直前の最終段階では、お店を最高ランク店に絞り、重点的にリサーチを重ねた。
最後に残ったお店は、次の5店。
いずれも、国内有数の店舗で、それぞれすばらしい特徴を持つショップだ。
 
・南青山 書斎館
・丸の内オアゾ 丸善本店
・銀座 伊東屋本店
・日本橋 三越本店(万年筆祭)
・神田神保町 金ペン堂
 
本来はここに、大井町の名店フルハルタを入れたい所。
だが、今回は「削っていないニブ」を入手したいということで、大井町は割愛することにした。
 
   ◇
 
ここで少し、万年筆の調整に対する私の考えを示したい。
 
自動車メーカーに勤務していた経験から述べると、人間の精度というのは恐ろしく低い。
このため、修理やメンテが必要であれば、人間が手を加える必要があるが、それ以外であれば、不必要に触らない方がよいというのが、私の基本的考え。
 
あと、不具合があろうとも、それを人間が修理することにより、新たにキズが付いたり別の部分が傷むという2次的災害が発生する可能性が十分ある。
なので、不具合があっても、それが許容できる範囲であれば、修理などで人間が手を加えない方が絶対によい。
車の場合、故障の大部分は人間が手を触れたところだった。
 
たとえば、雪が降る前にタイヤをスタッドレスに履き替える場合を考える。
このためにタイヤを取り外すということは、安全に走行するためには必要なメンテだ。
タイヤ交換をしない方がリスクが大きいので、ネジを緩めたりと、本来はやらない作業をしてでも、タイヤを交換すべきだろう。
 
しかし、ホイルの後側も掃除をしたいから、タイヤを外すという行為を考えてみる。
これは、不必要な手の加え方なので、やらない方がよい。
人間がタイヤを外せば、工場出荷時の最適なボルトの締め具合は2度と再現できない。
また、ネジの締め忘れ等の2次的災害が発生するリスクもある。
 
これは、同じ工業製品の万年筆でも当てはまることである。
万年筆も、手を加えずして良品が入手できるのであれば、調整しない方が絶対に良い。
調整の名のもとに、ペン先を引っこ抜いたりして人間が手を加えれば、ペン先や軸に不必要な力が加わり、キズやゆがみ等が発生する可能性が十分ある。
(もちろん、ペン先がひん曲がってしまった等の修理は、ペン先を引っこ抜いてでもやるべきであろう。
でないと、万年筆としての機能が果たせないのだがから)
 
ただ、こうした考えは、自動車メーカーに勤めていたときの私の経験測。
なので、調整した万年筆の実態はどのようなものかも確認しておく必要がある。
未調整のものと調整済みのものに、あまりにも差があるものならば、この考えを補正し、調整済みの一本を探すことに方針転換する必要があるからだ。
 
このことを確認するために、神田の金ペン堂に足を運んだ。
そして、金ペン堂チューンなるM800を、たっぷりと試筆してきた。
確かに、巷で評判のすばらしい書き味。
オヤジさんの言うように、潤沢なフローでスルッスルと書ける。
一瞬、ここで買ってしまおうかとも思った。
 
金ペン堂チューンは、万年筆ファンならば、実際に試してみる価値はある万年筆だ。
ただ、その試筆を踏まえた上で、市場に流通している未調整品で、この金ペン堂チューンより書き味が良いモノが、数は少ないがあることもわかった。
 
結果、今回の調達は未調整の「当たりの一本」を探し求めることにした。
 
ちなみに、金ペン堂より素晴らしいと思った万年筆と出会ったのは、伊東屋と丸善。
それぞれのお店で、一本ずつあった。
確率にしたら2%未満という、ある意味、恐ろしい数字でもある。
裏返すと、残りの98%は金ペン堂より書き味が劣るということか?
あのオヤジさんの調整能力は、やはりすばらしい技術なのだろう。
 
もし次に800番と言わず、定価で万年筆を購入する機会があるのならば、今回のように手間隙かけて万年筆を捜し求めることは難しい。
次はきっと、金ペン堂で購入することになるだろう。
 
   ◇
 
金ペン堂での調整済み万年筆を確認した私は、最終ターゲットは未調整品とした。
そして、「発見即確保」をスローガンに各ショップを回り始めた。
 
当初、最高ランクのお店には問屋が特級品を回しているとの想定で、試筆が頼みやすい伊東屋と丸善には、特に頻繁に通った。
そして、両店で多くの800番を見せてもらったのだが、試筆を重ねるほど、わたしが睨んだ法則は当てはまるのか、よく分からなくなってきた。
 
こうしたお店にならんでいるものでも、程度の良いモノものあればちょっとした小キズが付いているモノもある。
各店とも、一定のスパンを置いて回って見ると、神経質な私の検品では、品質がバラバラなのだ。
 
冷静に考えれば、当たり前のことかもしれない。
出荷の段階で、代理店や問屋が、商品のランク付け出荷をするには、その判断ができる人を配置しなくてならない。
しかし、商品の性質上、最高ランク店からでも毎日大量のオーダーが入ってくるわけではない。
そうした状況で、問屋やメーカーが、特別サービスにコストをかけるとは思えない。
 
車の場合、本社ショールームや駅などに展示するものには特別な磨きをかけていた。
なので、市中に流れ出る車に比べて、ピカピカ感が全く別モノ。
だがそれは、特別展示のために、仕上げを特別にするということ。
通常のオーダーが入ってきた場合、在庫や生産計画上の車を引き当てるのは、機械的に行うだけだった。
工場からのラインアウトで検品OKならば、出荷部門で販売店の格に分けて、さらにそれをチェックするということはなかった。
それよりも、オーダー後に、いかにお客様に早く製品を届けるかに力を注いでいた。
 
万年筆もたぶん同じで、出荷時での配慮と言えば、「先入先出」に留意するくらいか?
 
ただし、この結論は、最高ランク店どうしでの話。
Bランクのお店とは比べていないので、Bランク店舗にどういう程度のものを出荷しているかは不明。
最高ランク店から返品されたものを、Bランク店に卸していると考えるのが素直な考えであろう。
 
この方法ならば、選別のコストは、出荷先ではなく最高ランク店が負担することになる。
出荷先と最高ランクのお店、両方にとってメリットがある方法だ。
 
私の中では、最高ランクのお店の中で、在庫量の多いところから選ぶのが、リスクの少ない一番良い購入方法であるとの結論に達した。
 
   ◇
 
通常、在庫量が豊富と言われる、伊東屋や丸善でも、800番のペン先Bの在庫は2本程度。
お店の人に聞いても、売れ筋はMやFなので、Bについてそれ以上の本数を在庫で抱えることはないとのこと。
BBに至っては、1本あるかないかだ。
 
ちなみに、書斎館にはペン先Bが4本あった。
ただ、残念ながら、どれも私の筆記角度と一致するモノがなかったので、今回はパス。
 
残るは三越。
万年筆祭の日程が発表になったあと、事前に電話で確認した。
先に調査してきたお店の倍の本数は、ペリカンジャパンから持ち込むとのことだった。
わたしは、各店舗で探索をしつつ、三越の万年筆祭が開催されるのを、じっと待っていたのだった。
 
   ◇
 
いよいよ、3月中旬やってきた。
第9回世界の万年筆祭のスタートである。
 
ペンクリやインキ工房などを含め、今回はやるべきことがたくさんある。
さっさと、小間物の要件を済ませて、800番探索に乗りだそうとしていた。
 
800番探索の前に、とある方からペリカンのペンアドバイザの山本先生を紹介していただき、あるペンの相談を行った。
その相談の後、800番を探しているので山本先生に伺ってみようと思っていた。
しかし、山本先生の方から先に、せっかくなので、1000番を試してみませんか?といきなり、用意をしはじめた。
 
相談を受ける中で、私のペンの持ち方を見ると1000番向きとのこと。
色々な太さのペン先を用意されて、昔ののカタログなどを見せていただきながら、モンブランの149との違いなども色々と教えていただく。
ちなみに、昔に比べて、800番も1000番も価格が下がっているそうだ。
 
試筆をする中、一瞬1000番で行ってみようか?とも思ったが、書斎で実用の一本として800番を考えていたので、その旨を山本先生に伝えた。
そして、800番の持ち込み分を全部出していただき、それらを一本ずつ試筆させてもらう。
 
しかし、どうもピンと来るペン先がない。
正直にその旨を伝え、縦横のメリハリがあるペリカン太字独特の書き味を求めていると言うと、それならこのペン先ですねと、一本のペン先を選んでくれた。
どういう形状だと、縦横のメリハリが出やすいかなどを、卓上ルーペで見ながら丁寧に教えていただく。
 
もう一度書いてみてくださいと言われ、書いてみるが、やはり書き出しが掠れる。
 
その後、ペンを山本先生に渡すと、道具は一切使わずに、普通の試筆で使っている紙でペン先を研いで、もう一度私にペンを渡してくれる。
 
万年筆祭でペリカンブースをご覧いただいた方はおわかりだと思うが、山本先生が相談に使われていた机の上には、試筆の紙と、洗浄のための水が入ったグラスとウエス、それと卓上ルーペがあるだけである。
先生は、調整や修理には道具は一切使わないとのこと。
工場の人は道具をたくさん使うけど、わたしは全部手でやるのですとおっしゃっていた。
 
何をどうやったのか、じっと見ていたのだが分からない。
しかし、もう一度私に手渡された万年筆は、先ほどに比べて格段に書き味が変わっている。
 
まだ、ペン先をチョンと紙に付けると、ウムラウトのように点が2つ付きますねと私が言うと、それはどういう状態だからとそうなるとのだと説明してくださる。
そしてまた、紙の上でペン先を研いで、私に書くようにすすめる。
 
そういうやり取りを何度か繰り返すうちに、そのペン先は私を満足させる、完璧な書き味になった。
 
この作業を「調整」と呼ぶのかは、私には分からない。
しかし、ペリカンのアドバイザの方に自分の好みと書きクセを見ていただきながら、良い個体のペン先を、自分の書きグセに合った、最高のペン先の状態にしていただくことができた。
 
万年筆祭は、時間を間違えると、伊東屋と同じように大量のお客であふれ返り、ゆっくりと万年筆を選ぼうという環境ではない。
空いている時間帯だったので、ペリカンのブースに用意されたイスに座り試筆をしながらの購入ができたのは、奇跡的に運が良かったのだろう。
二度と、こういう贅沢な万年筆の選び方はできないのではと思う。
 
ペンを選びながら、色々とペリカンの万年筆についてのお話を伺うことができ、とても勉強になった。
お話を伺う中で、ペン先の調整についても、共感できる考えをお持ちなのが伝わってくる。
(もちろん、私がペン先調整が嫌いなのは、一切伝えていない)
私の考えが一人よがりなのではなく、代理店にはきちんとした方がいらっしゃるということで、ますますペリカンのファンになった。
 
あまり、表に出てこられる方ではないが、この山本先生の実力はすごいと思う。
某国産メーカーが無料で行っているペン先調整などには、恐ろしくてペリカンを預けることはできない。
(ペン先の抜き取り方一つでも、全くやり方が違うので)
 
わたしが、真剣に800番を選ぶ間も、個人で所有する40年前の茶縞とか、珍しい限定モノのを次から次に私の目の前に差し出してくる。
もちろん、全てインキが入っていて、試してみなさいと仰る。
集中して選びたいのに、これまためったにお目にかかれない逸品が次から次に並べられるという何とも困った環境の中で、800番を選ばなければならなかった。
 
今回の経験で、ペン先を外したり道具を使ったりしない調整というものがあることも初めて知った。
山本先生とお話をさせていただき、お店の方に、モノ選びに大きな信頼を寄せてまかせることができた。
(最近の店員は、みんなバイトちゃん化して商品知識がないので、こうした満足感をえられることがまずない)
 
今回の800番の購入は、商品も購入方法も、最高の満足が得られた。
来年の万年筆祭のペリカンブースに山本氏がいらっしゃったら、ぜひ購入の相談をされてみられたらと思う。
きっと、満足のいくアドバイスをいただけるのではと思う。
 
今回、山本先生に見立てていただいたペン先は、一年半かけて100本以上の800番を試筆してきた中で、もちろん最高の一本だと思っている。
もちろん、金ペン堂の店頭に置いてあるテスターをも上回るものだ。
 
ペン先を選んだあとは、お気に入りの縞模様の軸を選んで、ペン先の交換をしていただいた。
ペン先を交換するのは、ペリカン製品なのでもちろんユニットを外すだけ。
しかし、山本先生は、交換したあとのペン先をも、ルーペできちんと確認されていた。
 
さわれば、ペン芯とペン先がずれる可能性がありますのでとのこと。
ここまで、確認をするお店には巡り会ったことがない。
最後の最後まで、プロの仕事をされる方だと、ますますファンになってしまった。
 
最後にお礼を行って席を立つ時、もう一度、お客さんは必ず1000番を買いますよと言われてしまった。
気になる一言に笑いながら、最高の気分で次なる目的地の、丸善日本橋店に向かう私であった。
 
 
   ◇
 
 
今回、ペリカンの800番購入あたり、多くの有名店といわれるとこで書きまくってきた。
せっかくの経験なので、お店のインプレッションを、以下記録として残しておきたい。
 
 
【南青山 書斎館】
雰囲気が最高のお店。
初めて行った時は、だれもがその異空間に圧倒されるはず。
私の初めてのペリカン(400番)は、こちらで購入した。
 
このお店の最大魅力は、座ってゆっくりと試筆できるところ。
どのペンを買うか、決めていなくて、幾つかの候補から選びたい時は、ぜひこの書斎館で選ばれることをお勧めする。
 
ただ、土日は観光地化してかなりの混雑。
ゆっくりと試筆できない場合もある。
平日の昼間に行くことをおすすめする。
 
なお、購入にあたっての値引きは一切なし。
3万円以上の商品を買うと、革製のペンケース等をおまけで付けてくれる。
ペンケースは3,000円で売られているものと同じと思われる。
 
オマケは、その他革製のポケットティッシュケースと小さいメモカバーを加えた3点の中から選ぶことができる。
見た目は、ペンケースが一番まともそう。
 
ちなみに3万円の判断は2万9千円の万年筆+2千円のインキなど、購入総額で判断している模様。
私は10,500円のペンと21,000円のペンを同時に購入して、ペンケースをもらったこともある。
店員の気分によっては、それに加えてプライベートリザーブのインキをサービスで付けてくれたこともあった。
 
 《注意点》
・ただでなくても暗い照明。
夜に行くと、色味が本当に分かりにくい。
あの、ライティングが雰囲気を醸し出しているのだが、本当に欲しいペンは、伊東屋などの蛍光灯の明かりの下で、現実の色をよく見ておくことをお勧めする。
 
 
【銀座伊東屋本店】
文房具販売店の総本山。
建物自体が文房具百貨店の様相を示しているが、中2階の万年筆売場の在庫量も圧巻。
万年筆の店頭在庫をみると、たぶんココが国内一ではなかろうか?
 
ショーウインドにも大量のペンがディスプレイされているが、カウンターの壁側にある棚の引出しは20〜30本収納できるペントレイになっている。
そこにもビッシリとペンの在庫があるから驚きだ。
 
ちなみに、スーベレーンは、アタッシュタイプのケースに入れられて、これまた何本あるのか判らないくらいに大量の在庫が入っている。
 
わたしが、伊東屋が素晴らしいと思うのは、そのホスピタリティ精神。
通常の販売店ではできないような、お客を満足させようとする対応には、感心することが多い。
 
万年筆ではないが、同じ中2階で、Lamyのボールペンを買った時の話。
店頭在庫は通常「黒」のリフィルが入っている事が多いが、青を使っていることを伝えると、それが1,000円台のペンでも新品の青リフィルをセットして販売してくれる。
 
これを最初に経験したのは、替えのリフィルで青を一緒に求めたら、中に入っているのは黒だが交換しましょう?と言われたこと。
これまで、色々なお店でペンを購入してきたが、こんなことを聞かれたのは伊東屋以外にない。
 
私がここで万年筆を購入する時には、若いMさんという方に相談することにしている。
ちょうど最近発売になったmonoマガジンのP70で、白黒の写真で伊東屋が紹介されているページがあるが、そこに写っている店員さんである。
 
この方に応対していただいた経験がある方も、多いのではと思う。
ペンに対する知識だけでなく、本当に万年筆を愛されているのが伝わってくる。
安心して、色々と相談することができる方である。
 
ちなみに、私の所有するLamyの万年筆のほとんどは、この伊東屋で購入している。
値引きはないが、5%分のメルシー券がもらえる。
ちなみに、800番を購入すると、メルシー券の他に、ペリカンのインキを一本サービスしてくれる。
 
 《注意点》
・お客の数が尋常ではない。
ゆっくり選びたいならば、開店直後から11時過ぎくらいまでが良い。
夕方に行くと、ゆっくりペンを選ぼうという雰囲気ではない。
 
・店員の質の差が激しい。
とくに女性の店員には、何度かひどい目に合わされているので、経験則上、話しかけないようにしている。
 
 
【丸の内オアゾ 丸善本店】
試筆では、何度もお世話になっているお店だが、正直に言うと、こちらではサファリの万年筆を一本+コンバータしか買った事がない。
しかし、私が回った店舗の中では、店員さんの万年筆に対する取り扱いは一番丁寧。
 
800番を探している当初は、すでに600番でBを持っているので、次はBBをと考えていた。
試筆をする中で、こちらのお姉さんにBBは宛名書きくらいしか用途がありませんよと冷静なアドバイスをいただいて、ペン先をBに方向転換した経緯がある。
 
 《注意点》
・ライティングが綺麗すぎる。
もし自分が持っているペンが、丸善でディスプレイされているのならば、一発でわかると思うが、同じ万年筆と思えないくらいに美しく見える。
このライティング、美しく見えるのと同時に、キズがわかりにくいので、購入時の検品がやりにくい。
 
もし、小キズの入った携帯電話をお持ちなら、丸善の万年筆売り場で取り出して見て欲しい。
蛍光灯の下でははっきりと見えていた傷が、かなりわかりずらいのが確認していただけると思う。
 
 
【神田神保町 金ペン堂】
好き嫌いが分かれる、職人の経営するお店。
もし次に、定価販売の万年筆を買うことがあれば、たぶんここで買うと思う。
 
最初にも書いたが、私は調整(特に研ぎ出し)が嫌いなので、今回の万年筆をめぐる旅では、未調整品を求めて、各地の万年筆売場を渡り歩いた。
好きで回っていたので、それはそれで楽しい時間だったが、毎回同じような万年筆をめぐる冒険をするわけにはいかない。
 
そうした、良品の万年筆を探し当てる時間コストを考えると、この金ペン堂で購入するのが、時間も無駄なく、外れを引くリスクも少ないと感じた。
 
こちらは、試筆をさせないお店としても有名。
しかし、これは何本かを試筆してお客にペンを選ばせることをしないということ。
ペリカンの800番であれば、幾つかの種類のペン先をテスターとして用意している。
 
買う意思がオヤジさんに伝われば、いくらでもM800のテスターは、試させてくれるはず。
(オヤジの機嫌による部分も大きいが・・・)
 
店頭のM800テスターを試しての感想は、確かに書きやすいが、ビックリするほどのものでもないこと。
未調整品にも同様の書き味のものはあるし、自分が半年程度使い込んだ万年筆などの方がはるかに書き味がよい。
 
 
筆跡を見る限り、普通のペリカンの太字と変わりないので、通常の面は特殊な研ぎ方はしていないと思われる。
むしろ、厳しい検品で程度の良い個体を仕入れて、切り割りの広げ具合などの調整をしてフローを増大させているように思える。
なので、こちらの万年筆は、わたしの中では調整済みというより検品済みという認識でいる。
 
あと、M800のペン先Bの在庫量は都内随一のはず。
わたしが行った時に、少し特殊な質問をしてみたら、在庫を全部出して、一本一本ペン先をルーペで見てくれた。
その時、出してきた在庫は、余裕で10本以上はあった。
 
購入については、もちろん値引き無し。
通常のお店で入れてくれる、ギフトボックスには入れてくない。
フィルム状の袋に万年筆を入れた上で、ペリカンのロゴの入ったペンケースに入れてくれる。
 
ペンケースに収納した万年筆は、山吹色の封筒に入れて差し出される。
手提げ袋が欲しいといえば、ペリカンの手提げ袋はくれるので、その旨申し出るとよい。
 
 《注意点》
・テスターを借りて試筆させてもらうと、オヤジさんが耳元で、「ヌルヌラでしょう」、「あなたが持っている他のお店で買ったものとは全然違うでしょう」と言い続ける。
この、オヤジさんの「ささやき」には惑わされない方が良い。
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