【特集】万年筆を買いに

■手帳とカバンのホームペーヂ
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私のお気に入りのペンや購入記の紹介
●万年筆を買いに(パイロット・キャップレス購入記)

初の国産万年筆を入手。
パイロットのキャップレスを、梅田の阪急百貨店本店万年筆売場で購入した。
 
あれほど探しても見つからなかった限定のオレンヂキャップレス。
丸の内の丸善本店で聞いた時には、店頭に並ぶまもなく売り切れてしまったとのこと。
前回の、青限定に比べて、かなり本数が少なかったらしい。
 
そのオレンヂキャップレスが、関西文具ツアーで訪れた阪急百貨店の万年筆売場にポンと置いてあった。
それも、人目に付くように、わざわざ「限定」の表示付きで。
 
実は今回のツアー、梅田地区は回る予定ではなかった。
日帰りの慌ただしい旅行だったため、京都、心斎橋、難波と回ったあと、神戸に移動してナガサワ文具センタと吉宗万年筆店に行く予定だった。
しかし、難波の高島屋から、丸善に行くのに道に迷ってしまい、予定以上の時間を浪費。
帰りの新幹線の時間が不安だったので、神戸行きをあきらめた。
 
ただ、そのまままっすぐ帰るには時間が中途半端だったため、急きょ大阪駅近辺を徘徊することにした。
梅田周辺は、就職活動でイヤと言うほど遊び回った場所なので、地図無しでももちろんOK。
 
カスみたいな難波の丸善への怒りが収まらないまま、御堂筋線で梅田に移動。
しかし、何が幸いするかわからない。
こうして訪れた阪急で、探し求めていた一本に巡り会えたのだから。
 
   ◇
 
早速、カウンタの中のお姉さんにオレンヂキャップレスの試筆をお願いする。
国産は品質が安定していると聞くので、ペリカンみたいな神経質な試筆は必要ないかな?と思いながら、お姉さんのセッティングを待つ。
 
残っていたペン先はM。
試筆用のインキは、ちゃんとパイロットの青を用意してくれるのが嬉しい。
阪神百貨店でペリカンM250を試筆したときは、思い切りモンブランのブルーブラックに浸けられた直後だっただけに、こうした細かい配慮がよけいに輝いて見える。
 
キャップレスの試筆インキをペン先に浸けるのは難しそうだな、と思いながら眺めていると、お姉さんはチョコっとだけ、ペン先に器用にインキを付ける。
 
これまで、キャップレスは伊東屋と三越で試筆したことがあったが、あまり買う気モードではなかった。
気合の入った試筆の感触はけっこう記憶しているのだが、キャップレスの過去の試筆については、ほとんど記憶にない。
 
しかし、今回は違う。
買うための試筆なので、真剣そのものだ。
全神経をペン先に集中して、一筆目。
 
・・・・・。
 
なぜ、この一本が残っていたのか、一筆書いてすぐに理解できた。
思い切りハズレのペン先だったのだ。
 
書き味の均質化が言われる国産万年筆は、どちらかと言えばLamyのサファリみたいに試筆しなくて購入してもOKなのかと思っていた自分が恐ろしい。
試筆したら、これは誰も買わないな、と納得。
 
だから、ずっと売れ残っていたのだ。
 
しかし、目の前の獲物を私が逃すはずはない。
 
以前、三越で試筆をしたというのは、万年筆祭りでのこと。
この時は、買う目的より、単にパイロットの社員のお姉さんが可愛かったから、話をしたかっただけで試筆をお願いしたのだった。
しかし、そうした邪念を含んだ試筆でも、どこで役に立つかわからない。
 
キャップレスの試筆の感触は覚えていないが、お姉さんのかわいい笑顔と話した内容は今でもしっかりと覚えている。
 
お姉さんが言うには、キャップレスは中身を取り替えられますから、お好みの太さと軸をすぐにご用意できますよン♪
との事だった。
半年前に言われても、可愛い子から言われると記憶に残るのだ。
 
(※型番によっては互換性のないものもあるので注意)
 
こうなると、阪急のお姉さんと交渉するしかない。
 
「中身はチェンジできますよね」
わたしは、新幹線の時間が迫っていたので、単刀直入に尋ねた。
 
阪急のお姉さん、こんなこと聞かれたことがないという少し困った顔をしながら、別のチーフみたいな人の所へ相談に。
しばらく待っていると、中身の交換OKとの回答。
 
こうなると、あとは全神経を集中させて、最上のペン先選びだ。
 
手帳用を考えているので、ペン先は細めのものが良い。
 
最初に書いたが、私は今まで国産万年筆を買ったことがない。
なので、国産万年筆に対する知識は、本やサイト、ブログ等の他人様の経験やレビューから吸収させてもらうしかないのだが、大抵のところで輸入物は国産に比べて太いとある。
そうした文章を読んで、反対に輸入万年筆が、私の中の基準なので、国産は輸入物に比べて細いのだな!と思っていた。
 
このため、Mでも手帳用にOKかな?と思っていたのだが、実際に書いてみると想像していたよりも太い、太い。
私の愛用する、月間見開きブロックタイプのスケジュール帳にペン先Mで予定を書き込むには、かなり無理があると思った。
 
で、続いてFを試すと、手帳にはちょうど良い太さ。
Fで比較すると、ペリカンのEFより細い。
しかし、何となく引っかかりが感じられる。
 
お姉さんに、他のFはない?と尋ねると、別のFがセットされた軸を出してくれる。
雰囲気からして、阪急では同じ太さの万年筆を試筆して選ぶお客は少ないのか、少し面倒くさそう。
しかし、そんなことを気にしていては最上の一品をえらぶことはできない。
 
準備して貰った2本目のFを試すと、これがとっても当たりのペン先。
書いて滑らか、フローは潤沢。
先ほどの一本目のFと比較して、インキの色が全く違う。
フローがよい万年筆で書くと、インキがとても濃いい色になる。
同じFでも、最初のものと明らかに違うのがわかる。
 
ここで注意したいのが、付けペンで試筆する場合、含まれるインキ量で書き味が全く異なること。
お姉さんにペン先にインキを付けた後、ウエスの上を軽くなぞって、ペン芯に含まれるインキの量を、両者均等にして貰って再度の試筆。
 
でも、最後の一本が最高の書き味。
十分細いが、フローも潤沢で滑らかなのだ。
なので、これに決定。
 
国産は、品質が安定していると言われているが、初めて真剣に試筆した結果、輸入物と同じように、真剣勝負で試筆に望む必要があると感じた。
 
カウンタで対応してくれたお姉さんとは別のお姉さんが、すでに後ろの棚でオレンジ色の箱を出して待っている。
書き味最悪のペン先Mのおかけで残っていた、オレンヂ限定キャップレスを最上のペン先Fに中身ごとチェンジしてもらう。
偶然の産物とはいえ、探し回っていた限定万年筆を入手できた喜びは、本当に大きい。
 
インキは、純正のカートリッジ青を一箱あわせて購入した。
大満足の関西文具ツアー。
帰りの新幹線の中で、モールスキンにこの原稿をウキウキしながら綴っている。
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