【特集】万年筆を買いに

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第10回 世界の万年筆祭レポート

平成20年3月18日(火)〜3月23日(日)
日本橋三越本店 7階催物会場
 
今年も三越日本橋本店で開催された、世界の万年筆祭に参加してきた。
今回は10周年記念ということもあり、いやおうなしに参加前のワクワク感が高まってきて、指折りで初日を迎えた。
しかし、会場の見た目は昨年と全く変わらず。
少し拍子抜けの感を抱きながらの入場。
 
初日は、会場に入ったのが夕方だったこともあり、賑わいは一段落した様子。
新館側から会場に入ると、最初に目に入るのがセーラー万年筆のブース。
相変わらす、ペンクリは繁盛しているが、今回はパス。
昨年の心の傷がまだ完全に治っていないので、チラ見で前を通り過ぎる。
確か、昨年は初日から神様がいたような気がするが、今年は見当たらず。
 
今回は、どのような出会いがあるか、期待と不安を持ちながら、会場を回っていく。
 
■インキ工房
タイミングが良かったのか、インキ工房は、お客が一人待っているだけ。
なので、今回の万年筆祭は、このインキ工房からスタート。
 
早速、以前からプランを練っていたインクをブレンドしていただく。
(謹製インキの写真は、ブログにて公開中)
 
昨年のラブレターは30分近くかかった難題だったが、今回のテーマ「ロディア」は、沢山の先例があるのであろう、1分で完成。
「すごいですね」と社交辞令を投げてみると、
「偶然です」と返された。
 
「ロディアは頼む人が多くレシピはもうあるので、簡単です」などとは決して言わない。
石丸氏、理系ながら、商売上手である。
これは、スケルトンの軸に吸わせて楽しむ予定。
 
インキを作っていただく間、色々とお話をさせていただく。
その中で、以前から聞いてみようと思っていたことを尋ねてみる。
ワイングラスが並んだインク工房のディスプレイの上に、濃い茶色のインキで石丸氏の名前が書かれたカリグラフィのプレートが飾られている。
あの、インキの色が以前からカッコイイと思っていたので、どのようなインキなのか伺うと、お客さんが注文した色とのこと。
そのお客さんが、次の日に、そのインキを使ってカリグラフィで書き、プレゼントしてくれたものを、飾っているそうだ。
頼めば同じ色を作ってもらえそうな気もしたが、他のお客のオリヂナル色ということで、今回は変なことを言うのをやめておいた。
 
雰囲気のある色なので、インキ工房を訪れたときは注意してみていただければと思う。
 
■セーラー万年筆
インキ工房のついでに、限定万年筆に付属する「三越ボルド」なる色を確認すべく、万年筆ブースの方に移動。
色見本が展示されており、オーソドックスなボルドで、けっこう好みの色味。
丸善のエターナルブルーのように販売されていたら、買っていたと思う。
 
インキを眺めていたら、営業の人が書いてみませんか?と限定万年筆を目の前に出してくれた。
「ボルドインキにしか興味がないので・・・」と断るのも失礼なので、試してみる。
 
すると、これが中々ツルンツルのなんとも言えない書き心地。
以前経験した、普通の長刀とは別物の書き味で、一気に印象が良くなる。
ペン先の仕上げもあると思うが、軸のバランスが絶妙なのだろう。
これで、吸入式ならば面白いと思うのだが、価格を見ると68,250円。
 
セーラーに7万弱をつぎ込むのならば、金ペン堂かフルハルタでペリカンのM1000を買うでしょう、と冷静に考えはじめると、急に購買意欲がかき消されてきた。
色々なメーカーの万年筆を所有してみるのも楽しそうだが、やはり、しばらくはペリカン一本道が続きそう。
 
■ペリカンの万年筆相談
本命のペリカンブース。
山本師は、今回もジェントリーな雰囲気を醸し出して、ブースの中にいらっしゃる。
こちらの相談コーナーは、中々の盛況で、わたしが訪れたときは2人待ち。
1時間近く待って、2本ほど調整をお願いした。
 
話がそれるが、趣味文10に、松江の中屋万年筆店の紹介があり、こちらの店主は手で調整すると紹介されていた。
我らがペリカンの山本師も、同様に道具を使わずに手で調整をされる。
調整時間は最低でも30分は費やしていただけるので、書き手に合った最上の状態に持っていっていただける。
毎回、氏の技術にはただ、感動させられるだけである。
 
こちら、ペリカンのブースでは、祭り用に保管されていたM250(MとFのみ)が放出されたのと、マジェスティの黒キャップが展示されていた。
 
今回は調整だけでスルーしようと思っていたが、ためしに聞いてみた一本が「あります」とのことで目の前に出されてしまった。
山本師は、もうペン先の状況をルーペで確認し始めている。
しまった!と思いながらも、気が付いたら箱を抱えてブースを後にしていた。
 
■限定品展示コーナー
今回、一番わたしの目を引いたのが、こちらに置いてあったデュオフォールドの限定オレンジ軸。
数年前に出た、ビッグレッドの一世代前のやつで、価格は7万弱。
これは、相当欲しい。
かなり、迷ったが、この万年筆のことを趣味文のバックナンバなどで調べてみたいと思い、一晩考えることに。
 
翌日、もう一度姿を見て考えようと会場を訪れたら、お決まりの台詞で「先ほど売れました」とのこと。
今回は、その姿を眺めるだけの縁だったのだろう。
 
■万年筆試し書きコーナー
初日の夜は、だれもいなかったので、一人でゆっくりと、思うがままに試してみることができた。
日頃、これだけの種類の万年筆の書き心地を比較検証することは不可能に近い。
貴重な機会なので、このコーナーはずっと続けていただきたいものである。
 
ところで、今年はペリカンのM1000とM800が置いてあった。
確か、2年前はM200青スケルトン、昨年はM400緑縞が置いてあったはず。
だんだんとバージョンアップされているところがすごい。
どうせなら、ペリカンブースに置いてある、M1000〜M400のBB〜EF全てのペン先分を、この試筆コーナーにポンと置いておいて欲しいのだが・・・。
 
あと、セーラーの三越先行発売の「現代の名工」も置いてあった。
この一本を除くと、残り499本が販売されるのか?
今思えば、シリアルNoを確認しておけばよかったと思う。
 
ちなみに、20日の祝日の状況は悲惨そのもの。
イベントがあるので、試筆コーナーは柱の隅に追いやられ、オマケに椅子は3つ。
その中で、順番待ちのお客がテーブルの周りに群がっていた。
あの状態で試しても、意味がないような気がするのだが・・・。
 
■パイロット
こちらでは、目的は2つ。
@新色インキでの試筆
Aカスタム74スケルトンのチェック
 
新色インキは、カスタム823ブランジャーのスケルトンに入れたものが試筆できるようにカウンタの上に置いてあった。
(月夜は欠品中)
これまで、色見本は色々なところで見せてもらったが、やはり自分で書いて確認しないと細かいところは分からない。
こうした配慮は、やはり祭ならではである。
とりあえず、自筆のサンプルを確保。
 
あと、新色インキと一緒にカスタム74スケルトンも置いてあったので、見せてもらう。
こちらは、スケルトンなので試筆はお願いせず、手にとって眺めるだけ。
 
スケルトンの万年筆は、ペリカンとLamyのサファリを持っているが、カスタムの透明度が圧倒的にクリア。
とても、美しい透明軸なのだが、軸を外してペン先ユニットだけを眺めると、なんとも情けない。
金ペン先ということであるが、これで1万円ならば、やはりペリカンのスケルトンの方がわたしは好きだ。
カスタム74スケルトンは、先週、伊東屋で眺めて、買う気満々だったのだが、やはり吸入機構がない万年筆は、どうも安っぽくみえるので私の判断基準の枠外になってしまう。
 
透明カスタムは、今回の祭での貴重な調達候補だったのだが、購買意欲が喪失してしまい、どうしようかと思っていると、ふとある万年筆が目に留まった。
面白い企みを思いついたので、スケルトンから急きょ別の万年筆に目的変更。
と言うことで、こちらのパイロットのブースでも一本確保。
 
その企みの報告は、また後日に。
 
■行定勲監督トークショー
これまでの祭は、特にイベントに参加することはしなかったのだが、訪れた日に、ちょうど「クローズドノート」の行定監督のトークショーがあるということで、聞いて帰ることとした。
 
トークショーは20日の祝日にあったのだが、さすがに休日の会場は、かなりのお客さんで賑わい、ものすごい熱気。
この日は、開店と同時に入場して、まずパイロットのペンクリをお願いしてから、その後はトークショーまでの時間を、ゆっくりと各社ブースを見てまわる。
 
途中で、一度トイレに行こうとセーラーのブースの前を通りかかると、ちょうどベレー帽をかぶった神様が降臨中だった。
思わず着陸中のUFOを発見したような気分になり、気が付いたら写真を撮っていた。
 
あとは、中屋のブースで太字系のペン先を色々と試したり、日頃お目にかかることができない、コンウエイスチュワートを眺めたりしているうちにトークショー開始5分前。
特設会場に向かうと、まだ、少し椅子が空いていたので座って聞くことに。
係の人に30分程度の予定と聞いていたのだが、結局1時間近い内容となった。
 
トークショーの相手は、書斎館オーナーの赤堀氏。
ほとんどの話を監督がしていたのだが、よく万年筆ネタだけであれだけのことが話せるなと思ってしまう。
話の内容も面白く、あっという間の1時間。
周りで立ったまま聞いているお客さんも沢山いて、とてもよい雰囲気のショーであったと思う。
 
 
   ◇
 
 
今回も、昨年同様、3日間通い詰め、全ブースをいろいろと眺めて過ごした。
各社ブースだけでなく、今回は調印に使われたデュオフォールドや、書斎館から借りてきたというビューバーや古いインキなども展示されており、そちらも楽しむことができた。
 
パッと見は同じでも、10周年ということがあり、3日間通ううちに、細かいところでの工夫が色々と感じられた、今回の万年筆祭。
 
良いものを見て、良い話を聞き、良い人に触れる。
自分の感性を高めるためにも、こうしたイベントに参加することは、とても大切なことだと考えさせられた3日間であった。
 
来年は、スパッと思い切ってデッドストックの限定品を手に入れたいものである。
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